見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇三

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「アンタが稽古をつけてくれるのか?」

 俺は眉をひそめた。
何だか嫌な予感がする。

「そうだ」

「わざわざそんな事をしなくても……」

「ダメだね」

 オオムカデンダルは即答した。
もしかして暇なだけなんじゃないのか。

「正面から敵を力でねじ伏せるやり方。戦わずに圧倒するやり方。両方教えてやる。使い分けろ」

 結局どちらも力技に思えるが。

「ついてこい」

 オオムカデンダルが立ち上がった。
今からすぐ始める気か。
俺はため息をついた。

 だが、こうなった以上諦めるしかない。
彼は言い出したら聞かないタイプだ。
俺は仕方なくオオムカデンダルの後ろをついて行った。

「どこでやるんだ?」

「ここなら外でいいだろ。どうせ岩とモンスターしか居ないんだし」

 オオムカデンダルが適当に答えた。
そんな言われ方、モンスターと言えども何だか不憫だ。

 外に出て、適当な広さの場所を見つける。
確かに岩しかないな。

「ここらで良いだろう」

 オオムカデンダルが辺りを見渡して言った。

「よし、変身してみろ」

 オオムカデンダルが言う。
そう言えばさっき、ヴァンパイアとやった時には上手くいかなかった。
まずはそこからと言う事か。
俺は少し緊張気味に真っ直ぐ立った。

 バッ!

 俺は気持ち込めてその場で素早くターンしてみせた。

「ふむ」

 オオムカデンダルが頷く。
一瞬にして俺の姿は例の化け物へと変化した。
我ながら凄いなと思う。

「お前、さっきはなぜ変身出来なかったと思う?」

 オオムカデンダルが俺を問い詰める。

「自分でもよく判らんが、集中出来てなかったんだと思う」

 オオムカデンダルが頷いた。

「そうだ。慣れればなんて事はないが、変身するにはある程度集中力が要る。気が散って変身出来ないなんてのは絶対にやめろ」

 なるほど、それが死に繋がるケースもあると言うことか。

「いや、格好悪い」

 オオムカデンダルが真面目に言った。
どこまで本気なんだ。
いやいや、彼はたぶん本気だ。
口を挟むのは止めておこう。

「……判った。気を付けよう」

 俺は大人しく従った。

「蜻蛉洲も言っていたが、変身と口に出して言うのも悪くないアイデアだ。より強く変身を意識させられるからな。だが、隠密行動が求められる場合もあるだろう。なるべくなら黙って変身出来るように心掛けろ」

 俺は頷いた。
たまにはそれらしいことも言うんだな。

「では、簡単な戦闘訓練から行こうか。基本は一対一だ。お前のスペックでは多人数戦闘よりも個人戦闘が向いてもいるしな。一撃で素早く倒していければ、各個撃破する事により大人数を相手にする事も出来る」
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