見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一八五

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 ヴァンパイアが俺を見下ろす。
以前、見たときとはフォルムが違う。
大きさはそのままか、少し大きくなっている気もする。
しかし、痩躯になっている。
シャープだ。

 例えて言えば昆虫のようか。
より機能的になっている。そんな印象だ。

「ヴァンパイアは不死だ。力で上回った以上、もう君には勝ち目はない。グググググ」

 ヴァンパイアが不敵に笑う。
グググググはどうやら笑い声だ。

「死なないのが自分だけなんて思わない方がいいぞ」

 俺は構わず戦いの姿勢をとる。
相手が誰でも、どうせやることは変わらないのだ。

「何を言っているッ!」

 ヒュンッ!

 ヴァンパイアが叫ぶと同時に襲い掛かる。
鋭かった爪が、更に巨大に鋭利さを増す。

 ガッ!

 ヴァンパイアの攻撃を片腕で受けきった。

「なんだと!」

 思わずヴァンパイアが叫んだ。

「くたばれ」

 今度は俺がパンチを叩き込む。

 ドカッ!

 ヴァンパイアの腹にまともに入った。
たまらず後ろへよろける。

「どうした。以前と展開が全く同じだぞ」

 ただ、あの時は俺ではなくオオムカデンダルがやったのだが。

「くそっ。馬鹿な、俺も変身しているんだぞ」

 ヴァンパイアが腹を押さえながら俺を睨み付ける。

「カアッ!」

 気合いと同時にヴァンパイアが両手を俺に向けた。

 どすんっ!

 体全体に力が掛かる。
また例の見えない力だ。

 グググググ……

 なんなんだ、この力は。
ヴァンパイアの能力によるものなのは明らかだったが、これが何なのかは判らない。

 しかも、さっきよりパワーが増している。
変身して本領を発揮しているからなのか。

ぬかるんだ地面に足が沈み始める。
そんな馬鹿な。

「グググググ。そのまま地面に埋めてやる」

 力自体には対抗できても、体が沈んでいく事は止められない。

「……くそ!」

 もう足首辺りまで地面に埋まった。

『ほれほれ、どうした、頑張れよレオ』

 また耳の奥で声がした。
オオムカデンダルだ。

『負けたら承知しないからな』

 オオムカデンダルは明るい声で言ったが、この言い方は割りと本気だ。
負けたら何をされるか判らない。
しかし、この状況の打開策はいったい。

『ち……しょうがないな。お前さ、人間の時の感覚は捨てろよ。お前はもっと色々出来るんだよ。常識は無視しろ』

 オオムカデンダルはそう言うが、人間の感覚を捨てろとはどういう事か。

『感覚を研ぎ澄ませ。お前の体にある力を探るんだ。あるだろ、それを見つけて使え』

 力を探す?
変身の感覚を探したあの時のようにか。

 もうすぐ膝下まで地面に埋まる。
言われた通りにやるしかない。

 俺は体の中の『力の感覚』を探した。
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