見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一八〇

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「世の中には序列と言う物がある。僕は魔王と呼ばれているが人間ごときの質問に、あれこれ全て答えてやるほど安くはない」

 ヴァンパイアは答えなかった。
以前のような慢心さはあまりうかがえない。
付け入る隙は無くなっている。

「一度やられたのに復讐に来るとは、アンタも訓練を積んできたのかい?」

 挑発するだけしてみよう。
こんな事で隙が出来るとも思えなかったが。

「ふん……話は終わりだ。後は自らの身をもって体験するがいい」

 ばっ!

 ヴァンパイアがマントをひるがえす。
来るのか。

 俺は生唾を飲み込んだ。
くそ……トラウマか。
俺の足は勝手にすくんでいた。

三メートルほどの距離を空けて、ヴァンパイアが右手を俺にかざした。

「む!」

 体にまた衝撃が加わる。
見えない力が俺を押さえ付けようとしていた。

「なんだ……この力は……」

 俺は力に抵抗する。
さっきよりも遥かに強い力だった。
人間なら捻り潰されている程の力だ。

 だが。
まだ耐えられる。
この体のポテンシャルは本当に凄い。

「……なんなのだ。人間とは思えん」

 ヴァンパイアが呟く。
その表情は本気で驚いているように見える。

 そうだ。
ビビっている場合ではない。
相手が魔王だと言うなら、戦わなければ余計にピンチを広げるだけだ。

 そうさ。
今の俺ならやれる。
やれる筈だ。

 俺は覚悟を決めて構えた。
相手が魔王ヴァンパイアでは、素手と言う訳にもいかない。
武器を取らなければ。

 幸い武器はそこら中にあった。
彼らの武器をどれか拝借しよう。

ヴァンパイアの動きに注意しながら、俺はゆっくりと最も近い小ボスから剣を拝借した。

「ふふ。そんなに怖がるなよ。武器くらい好きなものを拾いたまえ」

 ヴァンパイアはそう言ったが、少しずつその間合いを詰めている。

「そう言えば自分の剣はどうしたんだい?ああ、そうか。この前ミスリル銀山で駄目にしてしまったんだったね」

 くそっ。
なんでもお見通しって訳か。
そう言えばさっき、霧のようになっていた。
剣が通用しないようだと困る。
絶対にあの姿にさせてはいけない。

 ならば、速攻しかない。
俺は剣を握り直すと、素早く飛び込んだ。

 だっ!

 地面を蹴ってヴァンパイアに迫る。
瞬間的にヴァンパイアとの間合いはゼロになった。

「!」

 ヴァンパイアの驚いた顔が一瞬見えた。

 ヒュッ!

 息を止めたまま一気に剣を薙ぎ払う。
しかし。

「……ふ……ふふふ。驚いた。君、やはり何かが違うね。それはもう人間の速さじゃない」

 ちっ。
かわされた。
あのスピードをよけるのか。
さすがは魔王か。
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