見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一七四

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 翌日。
俺は八時前に警備隊の詰所に着いた。
マズルはもう居たが、他の隊員は程なくして揃った。

「あー、急だが皆に紹介しておく。新隊員のレオだ。今日の任務では俺と一緒に賢者様の直接警護を担当してもらう」

 マズルが俺を紹介した。

「レオだ。隊員と言っても今回だけの臨時隊員だ。マズルに頼まれて参加する事になった。よろしく」

 俺は適当に挨拶をした。
きっちり筋を通す必要もないだろう。
ずっと世話になる訳でもない。
それどころか賢者を拐うのだから。

「さて、早速任務に付いてもらおう。俺とレオは賢者様を迎えに行く。手筈は伝えた通りだ」

 マズルはそう言ってから、解散と指示を飛ばした。
皆それぞれに詰所を出ていく。

「よし、俺たちも行こう」

 俺はマズルの後に続いた。
町の北の入り口にて賢者を待つ。
三十分ほど経った頃、ようやく賢者一行が現れた。

「警護を担当する警備隊隊長のマズルです」

 マズルが帝国兵士に敬礼をした。

「貴様が隊長か。判っているとは思うが賢者様にもしもの事がないよう、しっかりと頼んだぞ」

 マズルが、はっ!と返事をした。
俺は馬上の賢者を見上げた。
幾つだろうか。
老人には違いないが、一定以上年を取ると、もう年齢は見ても判らない。

 ドラゴンクラスと言われる程だ。
百歳と言われても驚かないが、こんな老人でもそれなりに風格のような物を感じる。
さすがは賢者と言ったところか。

 マズルは帝国兵士から引き継ぐと、賢者の乗る馬の手綱を自ら引いた。

「それでは賢者様、とりあえず一度詰所に寄ります」

「なぜだ?」

 マズルの説明に早速疑問が付された。

「お疲れではありませんか?お茶くらいご用意出来ます。それからゆっくりと計画を練られては如何でしょうか?」

「その必要はない。疲れてもおらぬ」

「そうですか。ではこの後どうするかお決めになっておられるのですか?」

 マズルの質問に賢者サルバスは少し黙考した。

「……そうさの。ワシを狙う輩が居るとか居らぬとか。そやつらに会ってみたい」

 マズルの表情が険しくなる。
何故だかは判らんが、賢者サルバスは例の件を既に知っている。
マズルの企みは一秒で崩壊した。

 まあ、俺としてはどうでも良い事だ。
せいぜいマズルに任せて、気楽にチャンスを待とう。

 それにしてもネオジョルトを名乗るのは誰なのか。
まさか本当に彼らだとは思わないが、心当たりは全くない。

「……ところで、おい。お主」

 賢者サルバスが俺に声をかけた。
俺はサルバスの顔を見上げる。

「……なんでしょう」

 サルバスが、じぃっと俺の顔を凝視している。

「お主は何者だ」

「臨時に雇われた警備隊員です。そこのマズル隊長に乞われまして」

 別に嘘は言っていない。
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