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一六九
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だが、まったく宛がないのも確かだった。
このまま宛もなくブラブラするのも無意味だ。
あまり気は進まないが、もともと情報を集めに行った店があの始末だ。
もう少し付き合ってみるか。
「俺は人を探している。と言っても特定の人物ではない。言うなれば知識人だ。できればセイジ級がいい」
マズルは相変わらず背後から俺の服を掴んで離さなかった。
「セイジクラスか……賢者か隠者、後は天啓者か。隠者と天啓者は無理だろうな。最近は存在さえ知る者が少なくなった。まあ、隠遁生活してるから当たり前だが……」
そうだろうな。
その程度の情報は俺でも知ってる話だ。
「だが、お前は運がいい」
マズルが初めて服を離して俺の前に回り込んできた。
「今度警護する人物はな、賢者様だ」
なんだって。
こんな怪しい男にでも、一応は話してみるものだ。
俺も賢者には会ったことはないが、どんな人物か見てみるには良い機会だ。
「警護に参加すれば話せる機会はあるのか」
マズルは腕を組んで難しそうな顔をした。
「まあ……普通に言えばないな」
俺は再び歩き出した。
「まてまてまて!気が早いぞ、話は最後まで聞け!」
マズルは正面から俺の胸を両手で押し返す。
「くそ、お前はなんて怪力なんだ。少しも止められないじゃないか」
マズルはズルズルと足を滑らせながら俺に押し返されている。
「俺がチャンスを作ってやる。少しだろうが一言くらい話すことはできるだろうよ」
一言か。
まあ、もともと拐ってこいと言われている。
一言話せる時間なら拐うこともできるだろう。
拐わなくても済むならそれが一番ではあるが。
「……良いだろう。入隊はしないがその仕事は手伝ってやる」
「ほんとか!よし!決まりだ!」
マズルはパッと顔を輝かせた。
「そうと決まれば善は急げだ!」
張り切るマズルをよそに、俺は水筒を取り出して水を口に含んだ。
この体になってから、やたら水が欲しくなる。
クラゲだからか?
「その前に聞きたいことがある。警護すると言うが、一体何から警護するんだ」
俺は水を飲みながら質問した。
警護対象が拐う前に殺されでもしたら目も当てられない。
「ん?ああ。確かネオジョルトとか言うテロリストだか野党集団だとか聞いたが……」
ブホッ!ゲホゲホゲホッ!
俺は飲みかけた水を噴き出した。
鼻に水が入ったらしい。
でも痛くはなかった。
クラゲだからか?
「お、おい!大丈夫か?」
「……今なんだって?」
「大丈夫かと言ったんだ」
「いや、違う。なんと言うテロリストだと?」
「ああ。ネオジョルトだったか。俺も初耳なんだが、どうも相当凶悪な奴ららしい。その賢者様は帝国から来るんだがな、そのネオジョルトなる奴らについてお調べになりたいようなんだ。ただの好奇心なのか、帝国の使命なのかは判らんが……」
俺は返す言葉が見つからなかった。
このまま宛もなくブラブラするのも無意味だ。
あまり気は進まないが、もともと情報を集めに行った店があの始末だ。
もう少し付き合ってみるか。
「俺は人を探している。と言っても特定の人物ではない。言うなれば知識人だ。できればセイジ級がいい」
マズルは相変わらず背後から俺の服を掴んで離さなかった。
「セイジクラスか……賢者か隠者、後は天啓者か。隠者と天啓者は無理だろうな。最近は存在さえ知る者が少なくなった。まあ、隠遁生活してるから当たり前だが……」
そうだろうな。
その程度の情報は俺でも知ってる話だ。
「だが、お前は運がいい」
マズルが初めて服を離して俺の前に回り込んできた。
「今度警護する人物はな、賢者様だ」
なんだって。
こんな怪しい男にでも、一応は話してみるものだ。
俺も賢者には会ったことはないが、どんな人物か見てみるには良い機会だ。
「警護に参加すれば話せる機会はあるのか」
マズルは腕を組んで難しそうな顔をした。
「まあ……普通に言えばないな」
俺は再び歩き出した。
「まてまてまて!気が早いぞ、話は最後まで聞け!」
マズルは正面から俺の胸を両手で押し返す。
「くそ、お前はなんて怪力なんだ。少しも止められないじゃないか」
マズルはズルズルと足を滑らせながら俺に押し返されている。
「俺がチャンスを作ってやる。少しだろうが一言くらい話すことはできるだろうよ」
一言か。
まあ、もともと拐ってこいと言われている。
一言話せる時間なら拐うこともできるだろう。
拐わなくても済むならそれが一番ではあるが。
「……良いだろう。入隊はしないがその仕事は手伝ってやる」
「ほんとか!よし!決まりだ!」
マズルはパッと顔を輝かせた。
「そうと決まれば善は急げだ!」
張り切るマズルをよそに、俺は水筒を取り出して水を口に含んだ。
この体になってから、やたら水が欲しくなる。
クラゲだからか?
「その前に聞きたいことがある。警護すると言うが、一体何から警護するんだ」
俺は水を飲みながら質問した。
警護対象が拐う前に殺されでもしたら目も当てられない。
「ん?ああ。確かネオジョルトとか言うテロリストだか野党集団だとか聞いたが……」
ブホッ!ゲホゲホゲホッ!
俺は飲みかけた水を噴き出した。
鼻に水が入ったらしい。
でも痛くはなかった。
クラゲだからか?
「お、おい!大丈夫か?」
「……今なんだって?」
「大丈夫かと言ったんだ」
「いや、違う。なんと言うテロリストだと?」
「ああ。ネオジョルトだったか。俺も初耳なんだが、どうも相当凶悪な奴ららしい。その賢者様は帝国から来るんだがな、そのネオジョルトなる奴らについてお調べになりたいようなんだ。ただの好奇心なのか、帝国の使命なのかは判らんが……」
俺は返す言葉が見つからなかった。
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