見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一六七

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 店内には喝采が溢れた。
当然、面白くなさそうにしている奴もいるが、大体は盛り上がっていた。

 こんな予定ではなかったのだが。
これでは落ち着いて計画を練ることができない。
しかし、捨て置けなかったのだから仕方がない。
俺は諦めて店を出ることにした。

 店主に多めに代金を支払う。

「いいんだ。迷惑料だと思ってくれ」

 俺はそう言って店主に代金を掴ませた。
店を一歩出るとやっと陽が傾いてきた頃だ。
本当に真っ昼間から飲んだくれた奴らばかりだな。
俺は改めて振り返り店内を一瞥した。

 さて、どうするか。
宛もなく俺は歩き出した。

「……」

数メートル歩くとすぐに気がついた。
着けてくる奴がいる。
俺はそう思ったものの、特に何ができるでもなし様子を見ることにした。
この体になってからと言うもの、余裕ができたせいか、どうも自分から何かしようという気にならない。

 用があるなら向こうに行動を取らせればいい。
そんな気持ちが強くなっている。

 路地を一本入った通りで、人気が少なくなった。
ここから先は住宅地か。
ずいぶんと静かだ。

 背後の気配が間合いを詰めてきた。
ここでか。
人気が減ったからと言うのが理由だろうが、判り易すぎる。

 背後の出来事が手に取るように判る。
自分でも何故だかは判らない。
人物は二人。
両方男だ。

 率先して迫ってくる方が大柄だ。
俺はどうしても判ってしまうのを無視して、なるべく隙だらけに努めた。

 ヒョオ!

 風切り音だ。
長物と言うことは判る。
振ってくると言うことは槍ではあるまい。
刀剣類か。
しかし、それにしては音が大きい。

 詳細は不明だが、衣類が斬られるのは嫌だ。
だが、仕方がない。
後でこいつらに払わせよう。
俺はあえて斬られてやることにした。

 ドカッ!

 右肩に衝撃を感じる。
刃物じゃないのか。
俺はそこで初めて振り返った。

「ん?」

 顔を見て俺は首をかしげる。
てっきりさっきの悪党どもが仕返しに来たのかと思ったのだが。

「……誰だ?」

 見かけない顔と見知った顔。
両方並んでいる。

「恐れ入った……まったく通用していないのか」

 大柄の男が呟く。
いや、誰だよ。
見知らぬ男をつけ回して背後から得物で殴り付けるなんて、強盗以外のなんだと言うのか。

 俺は本格的に相手に向き直る。

「いや、すまない。アンタを試したかっ……」

 俺は話の途中で男を平手で殴り付けた。

「ぶはっ!」

 男はもんどりうって道端に転がった。
もう一人の顔を見る。
さっきの普通の男だ。

 どういう組み合わせだ?

 助けてやったと言うのに、世の中こんなに世知辛いのか。
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