147 / 826
一四七
しおりを挟む
その後、数週間が経った。
何もない日々は過ぎるのが早い。
これがあの化け物揃いの連中と共に過ごす日々だとは到底思われなかった。
「レオ」
ある時、オオムカデンダルに呼び止められた。
俺は内心、ドキッとした。
「そろそろ拠点も完成する。その前にお前の改造の件を片付けておかんとな」
やっぱりその件か。
全く気乗りはしないが、どうにか断る術はないのか。
「来い。プランについて話そう」
俺はオオムカデンダルにそう言われて、後ろに着いて歩いた。
「そこへ座れ」
いつもの広間のいつもの席にオオムカデンダルは座った。
俺には向かいの席に座るよう促す。
「俺としてはこれを予定しているんだが……」
そう言うとオオムカデンダルは本のような物を取り出した。
それをテーブルの上を滑らせて俺によこす。
中には書類が綴られていた。
『改造案一』と書かれたページをめくる。
これは……
「それは『リオック』だ」
リオック?
聞いたことがない。
だが、この見た目はどう見てもコオロギだ。
「そうだな。見た目はコオロギと大差ない。だがコイツは肉食でな、かなり強いぞ」
オオムカデンダルは嬉しそうに言った。
強いったって、コオロギとは……
予想していたゴキブリよりはだいぶマシだが、どうしても虫でなければならないのか。
「そう言う訳じゃないが、強さを求めれば必然的に節足動物になるってだけだ」
セッソクドウブツ?
「面倒だから簡単に言う。昆虫とかだ」
昆虫とか。
『とか』の部分が気になるが、面倒な部分がおそらくソコなのだろう。
気にしてもあまり意味はなさそうなので、俺も気にしない事にした。
「もっと、熊とか狼とか隼とか、そう言うのはないのか?」
せめてイメージの良さそうな物にしてもらいたい。
狼や隼でももちろん嫌だが、虫はもっと嫌だと言うだけだ。
「チッチッチッチッ。あんなもん弱すぎる。意味ないね」
オオムカデンダルは人指し指を立てて左右に振った。
何故だ。
狼のどこが弱いのか。
「お前、狼と虫を比べて虫が弱いと思ってるんだろ?」
実際そうだろう。
「じゃあ聞くが、ムカデと狼が同じ大きさだったらどっちが強いと思うんだ?」
俺はハッとした。
同じ大きさならムカデの方が強いのは、誰の目にも明らかだ。
「お前は何もコオロギになる訳じゃない。コオロギの力を持った『戦士』になると言うだけだ」
言われてみれば確かにその通りだった。
しかし……
それでもコオロギになるのに喜びは感じない。
やっぱり嫌だ。
俺は残りの書類も手に取った。
期待はしないが、一応見ておいて損はないだろう。
俺はワラにもすがる思いでページをめくった。
何もない日々は過ぎるのが早い。
これがあの化け物揃いの連中と共に過ごす日々だとは到底思われなかった。
「レオ」
ある時、オオムカデンダルに呼び止められた。
俺は内心、ドキッとした。
「そろそろ拠点も完成する。その前にお前の改造の件を片付けておかんとな」
やっぱりその件か。
全く気乗りはしないが、どうにか断る術はないのか。
「来い。プランについて話そう」
俺はオオムカデンダルにそう言われて、後ろに着いて歩いた。
「そこへ座れ」
いつもの広間のいつもの席にオオムカデンダルは座った。
俺には向かいの席に座るよう促す。
「俺としてはこれを予定しているんだが……」
そう言うとオオムカデンダルは本のような物を取り出した。
それをテーブルの上を滑らせて俺によこす。
中には書類が綴られていた。
『改造案一』と書かれたページをめくる。
これは……
「それは『リオック』だ」
リオック?
聞いたことがない。
だが、この見た目はどう見てもコオロギだ。
「そうだな。見た目はコオロギと大差ない。だがコイツは肉食でな、かなり強いぞ」
オオムカデンダルは嬉しそうに言った。
強いったって、コオロギとは……
予想していたゴキブリよりはだいぶマシだが、どうしても虫でなければならないのか。
「そう言う訳じゃないが、強さを求めれば必然的に節足動物になるってだけだ」
セッソクドウブツ?
「面倒だから簡単に言う。昆虫とかだ」
昆虫とか。
『とか』の部分が気になるが、面倒な部分がおそらくソコなのだろう。
気にしてもあまり意味はなさそうなので、俺も気にしない事にした。
「もっと、熊とか狼とか隼とか、そう言うのはないのか?」
せめてイメージの良さそうな物にしてもらいたい。
狼や隼でももちろん嫌だが、虫はもっと嫌だと言うだけだ。
「チッチッチッチッ。あんなもん弱すぎる。意味ないね」
オオムカデンダルは人指し指を立てて左右に振った。
何故だ。
狼のどこが弱いのか。
「お前、狼と虫を比べて虫が弱いと思ってるんだろ?」
実際そうだろう。
「じゃあ聞くが、ムカデと狼が同じ大きさだったらどっちが強いと思うんだ?」
俺はハッとした。
同じ大きさならムカデの方が強いのは、誰の目にも明らかだ。
「お前は何もコオロギになる訳じゃない。コオロギの力を持った『戦士』になると言うだけだ」
言われてみれば確かにその通りだった。
しかし……
それでもコオロギになるのに喜びは感じない。
やっぱり嫌だ。
俺は残りの書類も手に取った。
期待はしないが、一応見ておいて損はないだろう。
俺はワラにもすがる思いでページをめくった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる