見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一四三

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「おい、管理人。ミスリル銀山に新しい拠点を建設する。図面を引いて早速取り掛かってくれ」

 オオムカデンダルが大きな声で言った。

 また『管理人』だ。
いったい誰の事なのだ。

「了解しました。では取り掛かります」

 どこからともなく返事が返ってきた。
俺はギョッとした。

「管理人とは誰なんだ?俺はアンタら以外に会ったことないぞ」

 俺はオオムカデンダルに尋ねた。

「んあ?管理人は管理人だよ。この屋敷を始め、だいたいの事を管理している」

 オオムカデンダルは、当たり前だろ?と言う顔で言った。
相変わらず説明する気はないらしい。

「お初にお目にかかります。私が管理人です。以後お見知りおきを」

 またどこからともなく声が聞こえてきた。
男とも女ともつかない、中性的な声だ。

「管理人はこの屋敷その物だよ。全てを管理している言わばマネージャーだ」

 フィエステリアームが助け船を出してくれた。

「そうです。管理人兼、執事兼、その他エトセトラ……。平たく言えば何でも屋です」

 管理人が自分でそう言った。
屋敷がしゃべっていると言うのか。

 まったく訳がわからない。

 屋敷に棲みつく精霊と言うのは居るが、そんな感じなんだろうか。

「拠点が完成したら、ナイーダの両親はそこで治療する。あそこからここへ運び込む必要もない。レオ、お前の治療は先にここでする」

 蜻蛉洲が、いとも容易いと言わんばかりの口ぶりでそう言った。
本当に治す気なのだ。
期待はしていたが、彼らの『当然』と言う態度に今更ながらに驚嘆する。

「一つ提案がある」

 蜻蛉洲が珍しく自ら提案を持ち出した。

「我々はこの世界の事について、もう少し情報を得た方がいい。今までは百足の趣味の範囲だと思い黙認していた。その為にレオを情報収集に放っていた訳だが、このやり方では時間が掛かりすぎる」

「ふむ」

 蜻蛉洲の提案にオオムカデンダルが腕組みをする。

「……つまり、どうせよと?」

「知識が必要だ。それも専門的な知識だ。俺たちは魔法についても何も知らない。もちろんモンスターやこの世界の様々な分野においても同様だ。ワイバーンしかり、お前も痛感しただろ?」

 なるほど。
蜻蛉洲が言いたいことはよく判る。
この世界に住んでいる俺でさえ、知らないモンスターの生態や魔法の知識はたくさんある。
ましてや彼らは異邦人だ。
知っておいた方が良いと言うのは当然だろう。

「……この世界で我々に相当する者が必要だ」

 蜻蛉洲たちに相当する者。
科学者に相当する者という事か。

「アルケミストやメイジとかウィザード辺りの事か……」

 俺は科学者に相当する者がどういう者か自信はなかったが、おそらく近いであろう職業を挙げた。
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