見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一三七

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 ダアァァンッ!

 投げつけられたワイバーンが、帝国軍の前に張り巡らされたグレート・ウォールにぶつかった。
あれが無かったら、今頃帝国軍の何割かは壊滅している。

「少しは俺たちの存在に脅威を感じてもらわんとな」

 オオムカデンダルはそう言った。
何を企んでいる。

「まさか……おい!馬鹿、やめろ!」

 突然オニヤンマイザーが叫び出した。
いったいどうしたのか。

「……もしかして百足君」

「いや、あの馬鹿ならやりかねん。と言うかやる!」

 ここまで興味なさげに沈黙を守っていたウロコフネタマイトまで、何かを察して顔色を変えた。

「最小威力だがあんまり死ぬなよ」

 オオムカデンダルが何やら物騒な事を言い出した。

「くそ……やっぱりやる気だ」

 オニヤンマイザーは諦めたような口ぶりだった。
確かにこの状況でオオムカデンダルが何をしようと、もう止められまい。

「グラビトンガン!」

 オオムカデンダルの声と同時にセンチピーダーの背中が開いた。

 ブオオオオオッ!

 突然熱風が吹き出した。
かなりの風圧だ。
熱を吐き出しているのか。

「……あれがグラビトンガンか」

 興味深そうにフィエステリアームがその光景に見入っている。

 だが、しばらく経っても何も起きなかった。

「なんなんだ……何も起きないじゃないか」

 俺はホッとしたような、肩透かしを食らったような、微妙な気持ちで様子を見守った。

「……もう起きてる」

 オニヤンマイザーが静かに言った。
もう起きてる?
俺はもう一度、センチピーダーとワイバーンを交互に見比べた。

 おかしい。
何もわからない。
いったい、何がもう起こっていると言うのか。

「さすがは龍。これを耐えているのか」

 オオムカデンダルが感心したように言った、その瞬間。

 ギャアアアアアンッ!

 ワイバーンが一際大きく叫んだ。
そして。

 パアアアンッ!

 俺は言葉を失った。
何が起こったのかも理解できなかった。
ただ、目の前でワイバーンが破裂した。

 辺り一面に、おびただしいワイバーンの肉片と体液が降り注いだ。

 なんだと……
何が起こったんだ。
数秒経っても、少しも何が起こったのか理解できなかった。

「何が起こった……」

「……理解できるかは知らんが、重力子を発射している。ワイバーンは巨大な重力で圧潰したのだ」

 オニヤンマイザーはそう説明した。
当然理解はできないが、魔法も同じような物だと納得した。

メイジやセイジのような高位の魔法職でなければ、魔法の理を説明できる者はいない。
身も蓋もない言い方だが、『何らかの不思議な方法でワイバーンを押し潰した』と言うことか。

「……なぜだ。何故やめない」

 そんな俺をよそに、オニヤンマイザーはセンチピーダーを見つめてそう呟いた。
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