見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一三五

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 キュンッ!キュンッ!キュンッ!

 火花が散った。
ワイバーンの体表でガトリング砲とやらの弾が弾き返される。

「さすがに硬いな。だが、全弾無傷とはいかないぜ!」

 オオムカデンダルの言う通りだろう。
あれだけの数の弾を撃ち込まれれば、ワイバーンと言えどもいつまでも耐えられる物ではあるまい。

 普通の弾ではない。
巨大な銃から撃ち出される、巨大な弾である。
しかもどうやらオオムカデンダルの手製だ。
どうせ馬鹿みたいな威力なのは想像がつく。

 ガンッ!ゴンッ!ガランッ!

 辺りに空の薬莢が飛ぶ。
巨大な薬莢が辺り一面を埋め尽くす勢いだ。
足元に居るだけで巻き込まれれば死にかねない。

 もはや誰も近付く事さえできなかった。
ワイバーンとセンチピーダーだけの世界。

「……くっ!これ以上食らうな、素早さで対応するのだ!」

 ライエルがワイバーンに指示を出した。
さすがは将軍だ。
ワイバーンの力に頼りきって、ただ、しがみついている訳ではないらしい。

 バサアッ!

 ワイバーンはたまらず空へと逃げ場を求める。
それをガトリング砲の雨が追う。
素早さとしなやかさを併せ持つワイバーンは、巧みに弾丸をよけた。

 空の王者ワイバーン。
ひとたび空を駆ければ、文字通り水を得た魚、いや、空を得た飛竜である。

「ち……速いな。やるじゃないか」

 オオムカデンダルは空を舞うワイバーンの機動力に舌打ちした。

 ギャアアアアアンッ!

 咆哮。
ドラゴンブレスが来る。

 ボッ!ボッ!

 二連射だ。
あの威力のファイヤー・ボールを連射できるのか。

 バゴオオオオオオンッ!

 ドゴオオオオオオンッ!

 センチピーダーの足元に炎柱と土柱が交互に上がった。

「うおおっ!」

 オオムカデンダルの雄叫びが聞こえる。
ワイバーンはくるりと反転すると、再びセンチピーダー目掛けて舞い戻った。

 ギャアアアアアンッ!

 まただ。

 ボッ!ボッ!ボッ!

 三連射!

 ドゴオオオオオオオオオンッ!

 ドゴオオオオオオオオオンッ!

 バゴオオオオオオオオオンッ!

 恐ろしい光景だった。
辺りは昼間のように明るく照らし出された。
紅蓮の炎が逆巻き、辺りには暴風となって爆風が吹き荒れる。
その炎の中に、センチピーダーのシルエットだけがクッキリと映し出される。

 これだけ離れていても熱風が容赦なく襲ってくる。
普通なら村の一つや二つ、跡形もなく消し飛んでいるだろう。

「野郎……やられっぱなしだと思うなよ」

 オオムカデンダルが言った。

 何をする気だ。

 センチピーダーがガトリング砲を背中に戻すと、今度は自らも走り出した。

 ガインッ!ガインッ!ガインッ!ガインッ!

 鈍重な足音が辺りにこだまする。
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