見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一三〇

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 ブー……ン

 耳なりか。
静かな音がする。

 空中に出現した謎の物体を、オオムカデンダルは掴まえた。
それを引き寄せ肩に担ぐ。
いったい何なのか、皆目見当もつかない。

 全体的に長く、筒状になっている。
その筒先をワイバーンに向けている辺り、砦に取り付けられた大砲を思わせる。

「覚悟しやがれ。コイツで吠え面かかせてやる……ッ!」

 オオムカデンダルはそう言うと、腰を落として姿勢を安定させた。

「食らえ!センチピードランチャー!」

 オオムカデンダルの叫び声と同時に、筒先から何かが発射された。
白い煙の尾を引いて、それは一直線にワイバーンの胸へと直撃した。

 バアアアアアアアンッ!

 ワイバーンの胸で激しい爆発が起きた。
大きな火球が生まれ、そのままワイバーンを包む。
ワンテンポ遅れて衝撃波と爆風がここまで到達した。

「うおおおおおおっ!」

 ギャアアアアアンッ!

 ライエルの叫び声とワイバーンの叫び声が聞こえた。

「へっ……どうだ!?」

 オオムカデンダルが構えを解いて、真っ赤な火球を眺める。


 だが、すぐに火球は収まった。
その中からワイバーンの姿が現れる。

 やはり駄目か。
オオムカデンダルの不思議な力に少しは期待しなくもなかったが、やはり龍族には歯が立たない。
ワイバーンの背にライエルの姿もあった。
ノーダメージだ。

「ふ……ふふふ。驚いたぞ。一瞬焦った……お前のデタラメな強さに一瞬、『まさか!』と思ってしまった」

 ライエルが正直な感想をもらす。
余裕があるからこそ、強がる必要がない。
今、ライエルには余裕があるのだ。

 一方、オオムカデンダルの精神的なダメージは相当な物だろう。
文字通り、棒立ちである。
ただ立ちすくんで、燃える炎を見つめている。

「どうした?気が済んだか?」

 ライエルがオオムカデンダルに尋ねた。

「……」

「……なに?聞こえんな。もう声を出す元気も失ったか」

 ライエルが微笑を浮かべてオオムカデンダルを見下ろす。

「……なんだ、ちゃんと通じるじゃないか」

 オオムカデンダルは確かにそう呟いた。

「なんだと……?」

「……くっくっ……はっはっはっはっはっ!ちゃんと通用してるじゃないか!」

 突然オオムカデンダルが笑い出した。
ライエルだけではなく、俺も一様に驚いた。

 オオムカデンダルがワイバーンを指差す。

「見ろ。鱗に傷が入ってるぜ」

 本当か?
俺は目を凝らしてワイバーンの胸の辺りを凝視する。

 あれか?
ほんの少し。
本当にほんの少しだけ鱗が欠けている。
一枚の鱗の端が本当にわずかに欠けている。

 あんなものよく見つけたなと感心する。

 しかし、それがいったいなんだと言うのか。
たったあれだけで大喜びするほど追い詰められているのか。
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