見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一二九

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 オオムカデンダルが初めて後ろへ後退する。

「マジかよ……こんなのいつ以来だ?」

 あのオオムカデンダルが狼狽していた。

「今なら武器を使っても少しも恥ずかしくないぞ?」

 いつの間にかワイバーンの上に乗ったライエルが、オオムカデンダルに向かって言った。

「……こりゃ確かにな」

 いつもは軽口ばかりのオオムカデンダルが珍しく真面目なトーンで答えた。
やはり、ふざけていても実際には冷静に物事を見ている事の証左だ。

 しかし、今さら武器を手にしたからと言って、どうにかなるような問題ではなかった。

「ムカデンダルブレード!」

 オオムカデンダルが叫んだ。
両手を腕組みしてから大きく左右に開く。
その瞬間、オオムカデンダルの両手は肘から指先まで真っ赤に光っていた。

「なんだ……あれは」

 俺は思わず呟いた。

 オオムカデンダルはそんな事などお構いなしに、再びワイバーンへと突っ込んでいく。

「カアッ!」

 短く叫んだオオムカデンダルは、同時にワイバーンへと手刀を叩き込む。
真っ赤な光が線を描き、それが何度もワイバーンの下腹辺りに炸裂する。

 しかし。

「ハッハッハッハッ!無駄だと言ったはずだ!」

 ライエルの高笑いがこだまする。
オオムカデンダルの手刀は少しも効果がない。

「くそっ……これでもか」

 オオムカデンダルはそう言ってすぐに次の行動に移る。

「切断できないなら!」

  オオムカデンダルが両方の拳をワイバーンへと突き出した。

「ムカデンダルヒューイット!」

 オオムカデンダルの手首と前腕の間、装甲の隙間と言えば良いのか。
その部分からロープのような物が飛び出した。

 飛び出したロープの先端がワイバーンに当たる。

 バチバチバチバチッ!

 まばゆい閃光と音が辺りに広がる。
雷か?

 オオムカデンダルは素早くロープを引戻し、頭上で勢いよく振り回す。

 ヒュンヒュンヒュン!

 そうしておいてから、ムチのようにロープをワイバーンへと振るった。

 バチッ!バチッ!バチッ!

 その度に音と閃光が広がった。
だが、ワイバーンにダメージが与えられる様子はない。

「チッ……なら、アレを食らわせてやる」

 オオムカデンダルはロープを戻すと今度はワイバーンから距離を取る。

「今度は何をする気だ?」

 今やライエルには余裕があった。
オオムカデンダルの次の攻撃を楽しみにしている様子さえある。

「……おい、管理人。センチピードランチャーだ。早くしろ」

 オオムカデンダルが何事か呟いた。
管理人?
誰のことだ?

 オオムカデンダルは頭上に手を伸ばす。
そこへ。

 音も発てずに何かが現れる。
何もない空中に突然何かが出現したのだ。

「まだ、俺を驚かせるのか……」

 無駄だと判っていても、俺はまだオオムカデンダルに驚かされていた。
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