見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一二三

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「……何故ヨロめいた」

 戦いを注視していたオニヤンマイザーが呟いた。

 何故?
何故とはどう言う意味か。

どんなベテラン戦士でも、つまずく事くらいあるだろう。

「ふん。馬鹿を言え。我々にそんなイージーミスはあり得ない」

 オニヤンマイザーは俺の意見を鼻で笑った。
そんな馬鹿な。

「……だとしたら、あの魔法のせいなんじゃないか?」

 俺は地面に大きく浮かび上がった魔方陣を、あごで指した。

「……なに?」

 オニヤンマイザーが食いついた。
俺はフォース・フィールドについて説明した。
ひょっとして、彼らは魔法をまったく知らないのではないか。

「知るわけないだろう。そういう事は早く言え」

 オニヤンマイザーはそう言ったが、特別怒っている風でもなかった。

「おい、百足。その地面の紋様の範囲内は、お前にとって弱体化の魔法が有効になってるらしいぞ」

 オニヤンマイザーは『帰りに卵も買ってこいよ』くらいの感じで、オオムカデンダルに事実を告げた。
そんなトーンで良いのか。
結構なピンチだと思うが。

「はーん。なるほどね、どうりでさっきから調子が悪いなと思ったぜ」

 オオムカデンダルはそれを聞いて、何事か納得した。

「じゃあ、少しだけ真面目にやるか」

 そう言うとオオムカデンダルは転がるのを止めた。

「もらったあッ!」

 ライエルが好機とばかりに一際鋭く大剣を振り下ろした。

 ガイインッ!

 硬い音を発ててライエルの大剣が弾き返される。

「なんだとッ!」

 同時にライエルが叫んだ。
オオムカデンダルは、片腕でライエル渾身の一撃を、いとも容易く弾き返して見せた。

 腕で大剣を弾き返す。
自分で言ってて何を言っているのか判らなくなってくる。

「くそッ。いちいち馬鹿げたヤツだ……!」

 ライエルが驚きを通り越して呆れ顔で言う。

「なんだか知らないが、コレ魔法なんだって?なんか調子が悪いなと思ったんだよな……だったら俺も少しは本気出しても良いよな?」

 オオムカデンダルが立ちあがり、肩をぐるぐる回しながら言った。

「……知らなかったと言うのか」

「知るわけないじゃん。魔法なんて非常識なもん」

「……お前たちの方がよっぽど非常識なんだがな」

 ライエルの頬に初めて汗が伝う。

「良いだろう。ならばこっちも容赦はしない。汚かろうが文句は言うな!」

「言わねーって言ったろ!」

 その瞬間、ライエルとオオムカデンダルが同時に打ち合う。

 ガキンッ!ギンッ!ガインッ!

 硬質な金属音が響き渡る。
ライエルの大剣とオオムカデンダルの腕が、互いにぶつかり合った。
オオムカデンダルの腕は大丈夫なのか。

「問題ない。あの程度で切り落とされはしない」

 オニヤンマイザーが腕組みしたまま答えた。
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