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一〇三
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何故、ルドムは赤子と言うのか。
将軍の地位にある者ならば、どうして姫と呼ばないのか。
ただの言葉の綾なのか。
オオムカデンダルはジッとルドムの顔を見ていた。
「……お前、この赤ん坊を殺すつもりだろ?」
突然オオムカデンダルがとんでもない事を口にした。
「なに……?」
ルドムが眉間にシワをよせる。
「将軍だと言ったな。どうして部下を引き連れてこない?何故たった一人でここに来た。ロック鳥もまだ生きているのに」
確かにロック鳥はまだ生きてはいるが、オニヤンマイザーに眠らされて、今や『家』の中だ。
それよりも。
オオムカデンダルの言葉は鋭かった。
ロック鳥が墜落したのは彼らにも遠くから見えていた筈だ。
その場所へ、たった一人で乗り込んでくるのか。
あれだけの大軍勢で来ておいて、まったく腑に落ちない。
大隊長が独断で救出に来たのを追ってきたのだろう。
何故か?
オオムカデンダルの言葉に信憑性が増してくる。
そう考えると、この大隊長は姫と呼んでいた。
その態度からも、姫を敬愛し忠誠を誓っているのは誰の目にも明らかだった。
オオムカデンダルの言葉を、ルドムは一笑に付した
「面白いことを言う。だがその言葉、不敬では済まされんぞ」
そう言ったルドムの目は笑っていなかった。
「ふふっ……悪いが気が変わった。この赤ん坊はやれんな」
「なんだと……?」
ルドムが言うと同時に、俺も同じことを内心で叫んだ。
返さないだと?
馬鹿な。連れて帰るとでも言うのか。
帝国の姫君だぞ。
それにオオムカデンダルに赤ん坊の相手など、できる気がしない。
どんな事になるのか想像もつかない。
「お、おい……」
俺はオオムカデンダルを引き留めようとした。
「お前、この赤ん坊が殺されてもいいっての?」
オオムカデンダルが俺を見た。
言葉が胸に突き刺さる。
いや、だがしかし、まだ殺すと決まった訳では。
「そんな可哀想なこと、俺にはできんね」
オオムカデンダルはうそぶいた。
嘘つけ。
アンタがそんな事を言う方が信じられない。
一方で、ナンダカンダと言いながらこれまで結局俺や仲間を救ってくれている。
今も彼女は、彼らの屋敷で治療を受けているのだ。
「冗談でないのなら、斬ることになるが」
ルドムの雰囲気が一変した。
将軍ながらにこれまでよく優しく接していたな、と思う。
無礼な態度で、いつ斬ってもおかしくはなかったのだ。
だが、さすがにこうなっては実力行使も辞さない。
どこの馬の骨とも知れない者を、将軍自ら斬るのは稀なことだ。
やはり何か違和感を覚える。
将軍の地位にある者ならば、どうして姫と呼ばないのか。
ただの言葉の綾なのか。
オオムカデンダルはジッとルドムの顔を見ていた。
「……お前、この赤ん坊を殺すつもりだろ?」
突然オオムカデンダルがとんでもない事を口にした。
「なに……?」
ルドムが眉間にシワをよせる。
「将軍だと言ったな。どうして部下を引き連れてこない?何故たった一人でここに来た。ロック鳥もまだ生きているのに」
確かにロック鳥はまだ生きてはいるが、オニヤンマイザーに眠らされて、今や『家』の中だ。
それよりも。
オオムカデンダルの言葉は鋭かった。
ロック鳥が墜落したのは彼らにも遠くから見えていた筈だ。
その場所へ、たった一人で乗り込んでくるのか。
あれだけの大軍勢で来ておいて、まったく腑に落ちない。
大隊長が独断で救出に来たのを追ってきたのだろう。
何故か?
オオムカデンダルの言葉に信憑性が増してくる。
そう考えると、この大隊長は姫と呼んでいた。
その態度からも、姫を敬愛し忠誠を誓っているのは誰の目にも明らかだった。
オオムカデンダルの言葉を、ルドムは一笑に付した
「面白いことを言う。だがその言葉、不敬では済まされんぞ」
そう言ったルドムの目は笑っていなかった。
「ふふっ……悪いが気が変わった。この赤ん坊はやれんな」
「なんだと……?」
ルドムが言うと同時に、俺も同じことを内心で叫んだ。
返さないだと?
馬鹿な。連れて帰るとでも言うのか。
帝国の姫君だぞ。
それにオオムカデンダルに赤ん坊の相手など、できる気がしない。
どんな事になるのか想像もつかない。
「お、おい……」
俺はオオムカデンダルを引き留めようとした。
「お前、この赤ん坊が殺されてもいいっての?」
オオムカデンダルが俺を見た。
言葉が胸に突き刺さる。
いや、だがしかし、まだ殺すと決まった訳では。
「そんな可哀想なこと、俺にはできんね」
オオムカデンダルはうそぶいた。
嘘つけ。
アンタがそんな事を言う方が信じられない。
一方で、ナンダカンダと言いながらこれまで結局俺や仲間を救ってくれている。
今も彼女は、彼らの屋敷で治療を受けているのだ。
「冗談でないのなら、斬ることになるが」
ルドムの雰囲気が一変した。
将軍ながらにこれまでよく優しく接していたな、と思う。
無礼な態度で、いつ斬ってもおかしくはなかったのだ。
だが、さすがにこうなっては実力行使も辞さない。
どこの馬の骨とも知れない者を、将軍自ら斬るのは稀なことだ。
やはり何か違和感を覚える。
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