見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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九七

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「ちっ……余計な真似を」

 オニヤンマイザーが苦々しそうに呟いた。

 ドオオオオオオンッ!
 ドオオオオオオンッ!

そうこうしている間にも、次々とフレイム・アローがロック鳥に命中する。

「しゃあない。俺があいつら黙らせてやろうか?」

 オオムカデンダルが腕をグルグル回しながら、どことなく嬉しそうに言った。

「とんでもない!国軍に手を出すなど、それこそ戦争になる!」

 俺は慌ててオオムカデンダルを止めた。
止めなければ冗談抜きで本当に始めてしまうだろう。
いや、俺には判る。彼ならやる。

「くそ……これだから人間どもに関わるのは嫌だったんだ……!」

 オニヤンマイザーはそう言ったが、モンスター欲しさに出てきたのはアンタだろう。と言うのは言わない方が良さそうだ。

「だったら先にロック鳥を捕まえて、さっさと撤収すればいい。どうせヤツらは追って来れない」

 俺はそう言ってなるべく彼らの気が立たないように努めた。

「……ふん。言われなくてもそうするつもりだ」

 オニヤンマイザーはそう言うと、空のロック鳥を仰ぎ見た。

 バッ!

 オニヤンマイザーの背中から透明な薄い羽が飛び出した。
四枚の羽、大きな複眼、凶悪そうな下顎、そして黄色と黒のカラーリング。
注意を喚起する黄色と黒は、見るからに危険な印象を受ける。

 これはトンボだ。
オニヤンマイザーこと蜻蛉洲秀一は、トンボの怪人なのだ。

 タッ

 軽く地面を蹴ると、オニヤンマイザーは軽やかに空へと飛び立った。

 ブー……ン

 あの大きさだ。
普通は聞こえないトンボの羽音がしっかりと聞こえる。

 オニヤンマイザーは空を舞うロック鳥目掛けて、一直線に迫った。

 ヒューッ!

 それと同じタイミングで再びフレイム・アローがロック鳥に迫る。

「危ない!」

 俺は思わず叫んだ。

「うるさい。邪魔をするな」

 オニヤンマイザーは冷静に迫りくるフレイム・アローを片手で払った。

 ドオオオオオオンッ!

 払った瞬間、フレイム・アローは大爆発を起こす。
俺は硬直してしまった。
フレイム・アローの直撃だと?
いくら彼らでも無傷では済むまい。

 しかし、俺の心配など耳くそほどの意味もなかった。
オニヤンマイザーもまた、少しもダメージを受けていない。

「何てことだ……」

 俺は呆然とした。
強さのレベルが根本的に人間とは違いすぎる。
モンスターと比べても遜色ないどころか、彼らの方が明らかに強かった。

 今頃、国軍の方でも大騒ぎになっているだろう。
間違いない。

 オニヤンマイザーはスピードを上げてロック鳥を追う。
そして、追い付くと頭の上に取りついた。

 次の瞬間、俺は目を疑った。
ロック鳥が突然墜落を始めたのだ。

「なんだ!?」

「ただの麻酔さ」

 俺の疑問にオオムカデンダルが当然だと言うように答えた。

「麻酔?」

「寝かせたのさ。これで運べるだろ?」

 そんなことも出来るのか。
俺は呆然と視線をロック鳥へと戻した。
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