見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八四

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 『蛇ににらまれたカエル』と言う言葉がある。
まさにバジリスクはその状況におちいっていた。

「バジリスクの天敵はコカトリス……」

 ナイーダが言った。

「何故か昔からバジリスクはコカトリスに会うと、一目散に逃げていくそうよ」

 本当か。
そんな話は初めて聞く。
だが実際、目の前のバジリスクはコカトリスを前にして明らかにおかしかった。

 あれほど攻撃的だったバジリスクは微動だにしない。
それどころかコカトリスの前進に合わせて少しずつ下がっているようにも見える。

「コケーッ!」

 羽を広げてコカトリスが再び鳴いた。
その瞬間、バジリスクは俺たちには脇目も振らず逃げ出した。

「マジか……」

 俺は呆然とそれを見送った。

 そして。

 ザッ ザッ ザッ ザッ

 今度はコカトリスが俺たちを真っ直ぐに見つめて前進してきた。

「マジか……」

 一難去ってまた一難。
どっちがマシだったかは聞かないで欲しい。
単にチャンピオンが入れ替わっただけだった。
依然、俺たちは挑戦者のままと言うわけだ。

 「……おい。今度はどうするんだ?」

 俺はナイーダに聞いた。

「……頑張って勝ってね」

 ナイーダが震える声で言った。
やっぱりそうか。
俺は何とか立ち上がると、後ろにナイーダをかばった。

「頑張ってはみるが、勝ちを拾えるかは別の話だ。なるべく下がっていろ」

 俺はそう言ってなるべくナイーダを遠ざけた。

「さて……」

 ようやく剣士の仕事らしくなってきたが、いきなりのピンチとは。
俺は半ば仕方なくスモールシールドを正面に構えて剣を抜いた。

 体を開き、七・三に構える。
だいたい石化攻撃とはスモールシールドで防げるものなのか。
物理攻撃ならこれで十分なのだが。

大きな盾は自分の性に合わない。
相手の打撃を的確にガードできれば、そして『受ける』か『かわす』かの判断が的確なら、盾はスモールシールドで十分だ。
その方が俺には使いやすい。

「せめて盾にアンチ・マジックくらい付与できれば……」

 今更ながらエンチャントが欲しかった。
しかし、今ディーレはいない。

 コカトリスの石化の方法は『にらみ』だと聞く。
つまり視線だ。
呪文の詠唱もないなんて反則だろう。

「どこから攻めるか……」

 俺は小さなスモールシールドの陰に、なるべく体を小さくして隠れた。
できれば目は潰したい。

「……目か」

 俺は頭部に目標を定め、足に力を溜めた。

 ヴ……ン

 俺の動きを読み取ったのか、足の補助器が小さく唸りをあげる。

 だんっ!

 俺は斜め前に跳ぶと、着地して再び斜めに跳んだ。
ジグザグにコカトリスへと迫る。
石化攻撃の標的を絞らせない為だ。

 この速さと動きには着いて来られまい。
俺は必殺の一撃をコカトリスの頭に狙い定めた。
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