83 / 826
八三
しおりを挟む
ナイーダが俺の手を強く握ってきた。
俺はナイーダの顔を見る。
「……たぶん死ぬのと、絶対死ぬの、どっちがいい?」
質問の意味が判らなかったが、ナイーダの表情は真剣だった。
「そりゃあ、『絶対』死ぬよりは……『たぶん』の方がいいだろ」
「そう……同じ答えでよかった。じゃあ覚悟してよね」
そう言うとナイーダは石ころを拾った。
何をする気だ。
そんな俺の疑問を他所に、ナイーダは振りかぶるとコカトリスに石を投げた。
ッ!?
俺は頭が真っ白になった。
何をしでかしているのか判っているのか。
コカトリスの足下へ石ころが転がる。
当然こちらの存在を察しただろう。
「おま……!」
言いかけた俺を無視してナイーダが言う。
「戻るわよ!走って!」
は?
戻る?
俺の思考は完全に停止していた。
「ちょっと待て!何を言っ……」
「いいから早く!」
俺は訳が判らなかった。
だが、ナイーダの真剣な表情を見ていると、質問をしている場合ではないことだけは察しがつく。
「くそっ!あとで説明してくれよ!」
俺は言われたように今来た道を戻った。
タタタタタタタタタタ!
ナイーダを小脇に抱えて全速力で走る。
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
背後から乾いた足音が迫ってくる。
これはコカトリスの足音だ。
「おい!正面はバジリスクが来るぞ!どうするんだ!」
俺はナイーダに問いかけた。
「……何とかやり過ごして」
おい。無理だろ。
「何とかって何なんだよ!」
もう間も無くバジリスクと鉢合わせする。
「元から一か八かなのよ。バジリスクがコカトリスを認識できればそれでいいわ」
どういう事だ。
両者をぶつけると言う事か。
大きな岩陰から採掘場前へ伸びる道に飛び出した。
「うおっ!」
目の前にバジリスクがいる。
距離、約五〇センチ。
近すぎる。
俺の心臓がドキッと音を発てるのが、耳で聞こえるほどに驚いた。
バッ!
とっさに横へ跳んだ。
何も考えなどない。
正面は不味いだろう、ただそれだけ考えて横っ飛びに跳んだ。
その一瞬後。
一瞬前に俺がいた場所を、バジリスクが吐き出した毒がかすめ飛んだ。
一秒の半分のそのまた半分くらいの時間だ。
危なすぎる。
しかし。
ゴロゴロゴロゴロ
俺はナイーダを抱えて地面を転がった。
立ち上がる暇さえないだろう。
こんな場面で倒れるなど、死そのものを意味する。
モンスターとの戦闘中に足を取られただけでも、死ぬ場面は山ほどあるのだ。
くそ……ここまでか。
「コケーッ!」
耳をつんざく大音量でコカトリスが鳴いた。
俺は顔を上げ、見上げた。
「立って!はやく!」
ナイーダが叫んだ。
俺も慌てて立ち上がる。
だが、バジリスクの様子がおかしい。
俺はナイーダの顔を見る。
「……たぶん死ぬのと、絶対死ぬの、どっちがいい?」
質問の意味が判らなかったが、ナイーダの表情は真剣だった。
「そりゃあ、『絶対』死ぬよりは……『たぶん』の方がいいだろ」
「そう……同じ答えでよかった。じゃあ覚悟してよね」
そう言うとナイーダは石ころを拾った。
何をする気だ。
そんな俺の疑問を他所に、ナイーダは振りかぶるとコカトリスに石を投げた。
ッ!?
俺は頭が真っ白になった。
何をしでかしているのか判っているのか。
コカトリスの足下へ石ころが転がる。
当然こちらの存在を察しただろう。
「おま……!」
言いかけた俺を無視してナイーダが言う。
「戻るわよ!走って!」
は?
戻る?
俺の思考は完全に停止していた。
「ちょっと待て!何を言っ……」
「いいから早く!」
俺は訳が判らなかった。
だが、ナイーダの真剣な表情を見ていると、質問をしている場合ではないことだけは察しがつく。
「くそっ!あとで説明してくれよ!」
俺は言われたように今来た道を戻った。
タタタタタタタタタタ!
ナイーダを小脇に抱えて全速力で走る。
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
背後から乾いた足音が迫ってくる。
これはコカトリスの足音だ。
「おい!正面はバジリスクが来るぞ!どうするんだ!」
俺はナイーダに問いかけた。
「……何とかやり過ごして」
おい。無理だろ。
「何とかって何なんだよ!」
もう間も無くバジリスクと鉢合わせする。
「元から一か八かなのよ。バジリスクがコカトリスを認識できればそれでいいわ」
どういう事だ。
両者をぶつけると言う事か。
大きな岩陰から採掘場前へ伸びる道に飛び出した。
「うおっ!」
目の前にバジリスクがいる。
距離、約五〇センチ。
近すぎる。
俺の心臓がドキッと音を発てるのが、耳で聞こえるほどに驚いた。
バッ!
とっさに横へ跳んだ。
何も考えなどない。
正面は不味いだろう、ただそれだけ考えて横っ飛びに跳んだ。
その一瞬後。
一瞬前に俺がいた場所を、バジリスクが吐き出した毒がかすめ飛んだ。
一秒の半分のそのまた半分くらいの時間だ。
危なすぎる。
しかし。
ゴロゴロゴロゴロ
俺はナイーダを抱えて地面を転がった。
立ち上がる暇さえないだろう。
こんな場面で倒れるなど、死そのものを意味する。
モンスターとの戦闘中に足を取られただけでも、死ぬ場面は山ほどあるのだ。
くそ……ここまでか。
「コケーッ!」
耳をつんざく大音量でコカトリスが鳴いた。
俺は顔を上げ、見上げた。
「立って!はやく!」
ナイーダが叫んだ。
俺も慌てて立ち上がる。
だが、バジリスクの様子がおかしい。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる