見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八ニ

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 もう少し。
もう少しで出口だ。

 たった十数メートルの距離がとても長く感じられた。

「来たわ!」

 ナイーダが声をあげた。

 ピタピタピタピタ

 バジリスクの足音が速足で近付いてくる。
もともと縄張り意識が強いモンスターだと聞く。
俺たちをこのまま見逃すつもりはないのか。

 ピタッ

 不意にバジリスクの足音が止まった。
ヤバい感じがする。
俺は自分でも訳も判らないまま担いだナイーダごと跳んだ。

 だんっ!

 補助器のお陰で常人には不可能なスピードで、かなりの距離を一気に跳んだ。
その俺の頭の上を、バジリスクが吐き出した毒がかすめ飛ぶ。

 ズザザザザザッ!

 俺はナイーダを包み込むように丸まって着地した。
着地したと言えば聞こえはいいが、ゴロゴロと乱暴に転がっただけだ。

「立て!」

 俺はすぐさまナイーダの手を引いた。
痛がっている暇などない。
登ってきたルートを引き返すべきか。
しかしまだミスリル銀の採掘は済んでいない。

 出直すか。
出直したところでまた同じことの繰り返しではないか。
そもそも今回はとても運が良かったはずだ。
敵とは遭遇せずにミスリル銀までたどり着けた。
次回はきっと、こうはいくまい。

 どうする。
俺は自問自答しながらひたすら走った。

「止まって!」

 ナイーダが小さく叫んだ。
そうだ。
ナイーダだって両親を一目見たからこれでいい、なんて訳はないだろう。

 俺は言われるままに立ち止まった。

「敵よ」

 ハッとした。
すっかり忘れていたが、ここはモンスターだらけなのだ。
他にもモンスターはそこら中にウジャウジャいる。

 山肌に身を寄せてゆっくりうかがう。

「なんだ……ありゃあ」

 俺は息を飲んだ。

 見たことのないモンスターが何かをついばんでいる。

「巨大なニワトリ?」

 俺は首をかしげた。
そこへナイーダが首を出した。

 一瞬ナイーダがビクッとしたのを俺は見逃さなかった。

「……コカトリス」

 ナイーダの顔が青ざめた。
いや
俺もおそらく同じ顔をしていただろう。

 コカトリス。
人と同じか、人よりも大きな雄鶏の姿をしていると言う。
そしてコイツも石化能力を持つ危険なモンスターだ。

 俺も見るのは初めてだが、こんなレアモンスターにばかり遭遇するとはミスリル銀山恐るべし。

「前にコカトリス、後ろにバジリスク、どうあっても神様は俺たちを石にしたいらしい」

 道は一本道。
隠れる場所はなかった。
コカトリスがこちらへ来たら、嫌でも戦う意外の選択肢はない。

 一方、後ろからくるバジリスクが俺たちを見つけたら、最悪両方と戦わなければならない。

 絶望的だった。
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