見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七四

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 冒険者のクラスは善人かどうかを示すものではない。
あくまでも実力を示すものだ。
カーディナルが詐欺まがいの事を言うのはどうかと思うが、それさえ絶対ではない。

 世の中には聖職者だろうと悪いヤツはいる。
もしかしたらその聖職者だって嘘をついた訳ではなく、本人にはそう思う理由があったのかもしれない。

「……ところで資料にはバジリスクが山頂付近に居るとあったが、あれが今のこの山の主なのか?」

 俺は話題を変えた。

「おそらくそう。まだ半年くらいだけど」

「半年くらいとは?」

「その前は別の主だったってことよ。その時はオーガだったわ」

 オーガ。
人間よりも大きな体躯を持った人食い鬼だ。
小柄なヤツでも二メートル、大きければ三メートル以上のヤツもいる。
種族的な特性が近いのか、時々ゴブリンを従えている時もある。
だが、基本的にはゴブリンとは別の種族だ。

 大きいというのはそれだけで脅威だが、人肉を好み、若干の知性もあるというのが厄介だ。
愚鈍だが馬鹿と言うわけではない。

「それがバジリスクに覇権争いで破れた訳か」

 俺の言葉を彼女が継ぐ。

「バジリスクの毒と石化能力には、オーガの知能と能力では対抗出来なかったのよ」

 できれば山の主がオーガの間に来たかった。
バジリスクと戦う羽目になるよりも、オーガの方が楽だったように思える。

 いや、知能のあるオーガの方が面倒か。
どっちがマシかなど考えても仕方がなかったが、今はバジリスクをどうするかを考えた方が良さそうだ。

「モンスターの強さには確かに序列はあるけれど絶対的な評価ではないわ。お互いに相性があるもの。言うなればジャンケンのような関係ね」

 言い得て妙だ。
山の主の座を掛けてモンスター同士が争えば、最終的にはドラゴンが主で間違いない。
だが実際には様々なモンスターが入れ替り王座に就いている。

 つまりモンスターには相性があり、それが弱点ということになる。

 問題はその弱点だ。

 バジリスクの弱点は何か。
残念ながら俺は知らない。

 バジリスクとは『大トカゲ』だ。
一般的には三〇センチから、大物で五〇センチ程度だ。
片側四本、両方で八本の足を持つ。
外観的な特徴はそのくらいだろう。

「問題は毒か……」

 俺はため息混じりに呟いた。
石化は脅威だが、まず近付けない。
それは毒のためだ。
バジリスクは身体に強い毒性を持っている。
それを様々な形で使ってくるのだ。

 息として吐く場合、周囲には毒の息が立ち込める。
胃液を吐きかけてくる場合には、矢のように飛ばして撃ってくる。
そして身体を傷つけると血液や体液が猛毒として噴き出してくる。
そして、槍のように長い武器で攻撃しても、武器を伝わり毒が回ると言われている。

「一体どうすりゃいいんだ……」

 俺は途方に暮れた。
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