見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六七

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「その口ぶりだとミスリル銀山がどんな所か知らないようだな」

 俺はため息混じりに言った。

「どういう意味だ」

 よく判っていないであろうオオムカデンダルの問いに俺は答えてやった。

「何を読んでミスリル銀の事を知ったのかは知らないが、ミスリル銀の鉱山には必ず上位モンスターが生息している。しかも魔力の豊富なヤツほど好むから常に様々な種類のモンスターがやって来ては争いが起きている。中にはそれほど強くなく他のモンスターと共生するのもいるが……ブラックナイト級の冒険者でも近付こうと言う酔狂なヤツはいない」

 俺はそこまで一気にまくし立てた。
どれほどの無茶を言っているのか理解させる必要がある。

「お前、あの雑魚ヴァンパイアの事も魔王だ何だと言ってたろ。大した事無いって、ビビり過ぎだ」

 その言葉に俺はピクッと反応した。

 いや、アンタにはそうかもしれないが俺たちは苦戦を強いられていた。

 いやいや、訂正しよう。
言いたくないが、俺たちは通用していなかった。
アンタは確かに通用していた。
逃げられなければヴァンパイアも倒していたかもしれない。

 だが、だからと言ってミスリル銀山が簡単に近付ける場所と思ってもらっては困る。

「……言いたくはないが、俺には無理だ。とても近付けない。鉱脈にたどり着く前に死んでしまうだろう」

 俺は本心を告げた。
情けないが事実である。

「お前、ひょっとしてビビってんの?」

 オオムカデンダルが核心を突いてくる。

「違うと言っても信じるかは判らないが、彼女に必要ならどこにでも行く覚悟はある。だが、通用しないなら行ったところで入手はできない。そう言う意味で持ち帰るのは無理だと言っている。死んでしまうだろうからな」

「なるほど。ビビってはいないと」

「怖いのは確かだが実力的に無理だ」


 俺の言葉の後、しばらく黒猫は黙った。

「……アンタなら余裕じゃないのか」

 俺は恐る恐るその言葉を口にした。
沈黙の間に堪えられなかったと言うのもある。

「余裕だろうな」

 簡単に答えが返ってきた。即答だ。
だが心なしか言葉が冷たい。

「……俺は別にあんな女どうでもいい。俺がどうしても助けたい訳じゃないからな。助けたいのはお前だろ?」

 心に何かが突き刺さった。
グサッと耳に聞こえるくらい、そのくらいの感覚だった。

「お前にやる気がないならこの話はここまでだ」

「待ってくれ、彼女はどうなる?」

 俺の慌てた言葉にしばし沈黙があった。

「別に。どうもならない。ガラスケースの中にずっと浮いてるだろうな。維持するエネルギーはもったいないが」

 俺は愕然とした。 
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