見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四八

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「みんな……」

 そこにはガイを初めとした、ディーレやバルバやルガの姿があった。

 まさか、死んでいるのか?

「ふふふ。怖い顔をするのは止め給え。まだ生きている……まだね」

 そして彼らを前にして不敵に笑う男が立っていた。

 何者だ。
それに、 一体どうやって全員を捕まえたのか。

「君は実に興味深いね。ひょっとして噂に聞くブラックナイトとかいうヤツかい?」

『噂に聞く』だと?

 コイツ。
人間のくせに知らないとでもいう素振りか。
そう言えば『彼』もハイパーナイトを知らなかった。

 まさか、そんなのに二回も会うとはな。

 見た目は普通の人間にしか見えないが、これでモンスターだというのか。

 いや、それはそうなのだろう。
こんな巨大な狼を従え、ディーレが恐怖するほどの魔力を持ち、ハイパーナイトクラスの冒険者を四人も捕らえる。

 見た目はどう見ても普通の人間だ。
しかし、この底知れぬ威圧感は人間のそれではない。

 だが。

 人型のモンスター。
 強大な魔力。
 狼を従える。
 
 まさか……

 いや、そんな筈はない。
こんな所にヤツが居れば、それこそたちまち国が全軍で制圧に乗り出すはずだ。

「……ひょっとして日没を待っていたのか」

 俺は声を絞り出すようにして尋ねた。
恐怖で声が出しにくい。
声がかすれる。

「そう。その通り。どうやら私が何者なのか、君は感づいているようだね」

 嘘だ。
嘘だと言ってくれ。
聞きたくないぞ、そんなの。 

「お初にお目にかかる。……いや、さようならか」

 ヤツはそう言って鼻で笑った。

 ヴァンパイアか……

 マジなのか。
俺はどうしようもない絶望を感じていた。
ヤツを灰にできる陽の光は、たった今沈んでしまった。
寝ている間に心臓に木の杭を打ち込む事も活動中の今は無理だ。

 頼みの教会もアレでは……
俺はヤツの背後にそびえる巨大な廃墟に目をやった。

 まさに、神はいないのだ。

「ヴァンパイアのくせに教会跡に住むとは……大胆なヤツだ」

 そう言った俺の言葉を満足そうに聞いてからヴァンパイアは答えた。

「そうだろう?誰もここにヴァンパイアが居るとは思わないのさ。こう言うのを君たちの言葉でなんと言うんだったか……」

 俺は苦虫を噛み潰したように言う。

「……灯台下暗しか?」

「おお!それだ!灯台下暗しだろう?」

 ちっ……
ヴァンパイアのくせにふざけた事を言いやがる。

「……ただ、コイツらがね。近づく奴らを追い払うだけで良かったんだが、喰ってしまうんだよ」

 生き残った二匹の狼が、ヴァンパイアの横に集まった。

 三対一か。

 勝負は決まったようなものだった。
だが、今度は逃げない。

「……例え無理でも、片目、片腕くらいはもらって行くぜ」

 俺は三度剣を構えた。
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