見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三八

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「でも、なんてことない案件なら一人くらい帰ってきても良さそうなもんだ。やはりそれなりの何かがあると見て間違いないだろう」

 ガイが言った。
確かにそれもその通りなのだが。
だからこそ行かなくてはならない。

予定通り一時間後、俺たちは目的地の丘の入り口までたどり着いた。

「見ろ。あれだ」

 俺が指差した小高い丘の上に巨大な廃墟があった。
想定していたよりもずっと大きい。

「でかいな……ありゃ何の廃墟だ?」

 ガイが眉の上に手のひらをかざして廃墟を見つめた。

「話によると教会らしい。あの裏手に森があるんだが、一時期モンスターが棲みついていたそうだ」

 俺は知っていることを話した。

「なるほど。皆それを避けて廃墟になってしまったと……」

 バルバが納得したと言うように呟いた。

 陽は幾分傾きかけていた。
あと二時間もすれば完全に夜だろう。

「どうする?一晩野営してからにするか?」

 モンスターは大体夜が活動時間だ。
今から日が暮れるのにわざわざ行かなくても良いとは思う。
しかし、時間が惜しいのも事実だ。
生存者がいるとは思えなかったが、万が一ということもある。

「拙僧は構わん。生存者がいるなら早い方が良かろう」

 バルバが言う。

「そうね……できれば夜は避けたいけど捜索目的でもあるし、早く見つけてあげなきゃ可哀想だわ」

 ディーレも賛成した。
ガイもルガも同意見のようだ。

「判った。じゃあこのまま行こうハンドシグナルはさっき決めた通りでいいな」

 全員がうなずく。
俺たちは覚悟を決めて進軍を開始した。

 先頭はレンジャーのルガだ。
辺りの痕跡を確認しながら進む。
その後ろをタンク役のガイ。
俺、バルバ、ディーレと続く。

 丘の上まであと一〇〇メートルくらいだろうか。

「一応この辺でエンチャントしておくわ」

 ディーレはそう言って仲間の装備に付与魔法を掛けた。

 エンチャント・ウェポン
 エンチャント・アーマー
 エンチャント・フェザー・ライト
 ホーリー・ブライト

 ディーレは複数の魔法を一斉に掛けた。
これがハイパーナイトクラスか。
俺は内心驚いていた。

「武器強化は魔法力上乗せだから魔力無効化のスキルを持ってる相手には意味ないわ。防御力強化も同じ。装備品の軽量化は無効化される心配はあまりないわね」

 ディーレが簡単に説明する。
仲間内は知っているだろうから、これは俺たち向けの説明だろう。

「ホーリー・ブライトとはなんだ?」

 バルバが尋ねた。

「幸運のおまじないよ。何かあった時にホンの少しのラッキーが貴方を救うかもね」

 そう言ってディーレは悪戯っぽく笑った。

 幸運を付与したということか?
そんなこともできるのか。

「でも過信は禁物よ。あくまでホンのちょっぴり運が付くだけだから。その運を物にできるかは自分次第よ」
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