見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三七

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「別に問題ない。取り敢えず三人としただけだ」

 俺は正直に話した。

「そう。なら遠慮なく入らせてもらうわ」

 女はそう言って後ろの仲間を招き寄せた。

「私たちは三名で固定パーティーを組んでるの。元は五名だったんだけど、まあ色々あってね」

 女もまた正直に話した。
別にそこまで言わなくても良さそうなものだが。

「私はディーレ。ハイパーナイトクラスのエンチャントレスよ」

 まず彼女が名乗った。
赤毛は中々珍しい。
短くカットした髪の毛と少しのそばかす。
意思の強そうな眉。
アクティブな彼女の性格が表に出ているように見える。

「俺はガイだ。同じハイパーナイトクラスで衛士をやっている」

 男は見た目通りのタンク役か。
大きな頑強そうな盾を持っているので一目でそれと判る。
プレートメイルを着込んで背中にメイスを担いでいる。
守りは相当に堅そうだった。

「アタシはルガ。ハイパーナイトクラスのレンジャーさ」

 レンジャーか。
俺は屋敷に置いてきた彼女のことを思い出した。

 褐色の肌をした少年だと思っていたが少女だったのか。
しかし、この若さでハイパーナイトクラスとは信じられない。

「……今、ガキのくせにハイパーナイトかよって思ったろ?」

 俺は図星を突かれて面食らった。

「アタシはダークエルフだよ。だから歳はアンタよりも歳上。非公開だけど」

 そう言ってニカッと笑った。

 亜人種は珍しい。
ましてやダークエルフはもっと珍しい。
髪を掻き上げると、確かに尖った耳が見えた。

「彼はバルバ。ハイパーナイトクラスのモンクだ」

 俺はまずバルバを紹介した。

「そして俺が依頼主のレオだ。見ての通りの剣士でクラスはミラーナイトだ」

俺がミラーナイトであることを告げると、やはり一瞬空気が固まった。

「まあ、言いたいことは判る。だが時間が惜しいから行きながら話そう」

 俺はそう言って強引に話を打ち切った。

「メンバーはこれで良いとして、このまま向かうか?」

 俺はバルバに意見を求めた。

「特に用意すべき物がなければこのままでも良いだろう。食料などは行きながら途中で買えよう」

 俺は、そうだなとうなずいた。

「場所は外れの廃墟だ。歩けば一時間といったところだ」

 目的は全員理解している。
簡単な指示だけで彼らはやってくれるだろう。
なにせ彼らはハイパーナイトクラスなのだ。

 斡旋所を出て歩きながら、俺は簡単に事の成り行きを話した。
途中の店で簡単に食料などを買った。

「簡単そうな依頼の割りに報酬がやけに良いなとは思ったのよねぇ」

 ディーレが言った。
だが嫌そうではない。笑っている。

「だが真相は何も判らん。行ってみたら、もしかして何てことない案件なのかもしれんぞ」

 俺はそう言った。
本当に何も判らないのだ。
プニーフタールを追う手がかりはない。
怪しい案件は片っ端から当たるしかなかった。
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