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三五
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俺は取り敢えずラウンジの椅子に腰を下ろした。
それほど時間的な余裕があるわけでは無かったが、二、三分で人が集まるとも思えない。
少し待ってみて駄目なら一人で場所の下見だけでも済ませておくのが良いだろう。
俺はウェイレトレスを呼び止めてエールを注文した。
これを一杯飲む間だけ待ってみよう。
ふと掲示板を見る。
痩身痩躯の男が、今貼り出した俺の依頼書をカウンターに持って行くのが見えた。
あまり見かけない格好だが何者だろうか。
受付嬢が俺を指差して何やら告げているのが見えた。
志願者に間違いなさそうだ。
「失礼。お主が廃墟調査の依頼主か?」
「そうだ。あんたは?」
「お初にお目にかかる。拙僧はバルバと申す」
拙僧?モンクか。
「如何にも、拙僧は修行僧だ。して、お主は?」
「俺はレオ。見ての通り剣士だ」
そう言って俺は首から下げた自分のプレートを見せた。
「ミラーナイト……」
バルバが一瞬怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いや……普通は同じクラスでパーティー募集するのが一般的だ。ハイパーナイトクラス限定で募集されていたが……ひょっとしてお主……」
なるほど。
上位クラスに混じって甘い汁を吸う、いわゆる『寄生虫』冒険者と疑われたか。
俺は所長権限を示すバッジを見せた。
「これは本物……なぜミラーナイトクラスのお主がこれを?」
バルバが不思議そうに俺とバッジを見比べた。
疑われたままではパーティーは組めない。
俺は経緯を説明した。
「ふむ、なるほどな。トカナでも同様の事件があったとは……」
バルバは腕組みをしてうなずいた。
「であるならば問題ない。拙僧も同道しよう」
バルバはそう言って笑顔を見せた。
「しかしお主の話通りなら、そんな強力な怪物は聞いたこともない」
一口に強力なモンスターと言っても様々だ。
確かに有名なハイエンドモンスターは居る。
だがそうそうお目にかかる機会があるものでもない。
メジャーなところで言えばドラゴンなんて代表的な例だろう。
あまりに例えが極端だったかもしれないが、ウィッチとかウォーロックなどもかなり強力な相手だ。
厳密にはモンスターではないが、どちらも人間を辞めているという意味ではやはり化け物には違いだろう。
「ヤツは俺も初めて見るモンスターだった。元は人間だったようだが既に死んでいる。いくら叩いてもダメージがないように思えるんだ」
俺は思い出しながらヤツについて語った。
「ゾンビの類いということか」
確かに死人が歩いているとすれば、それはゾンビなのだろう。
だが。
「いや、あれはゾンビとは違う。明らかに意思を持っていて意識的に戦っていた。魔法か何か判らんが、無音で背後から迫ってくる。しかも俊敏で馬鹿力だ。その上でこちらの攻撃はほとんど致命傷にならなかった」
それほど時間的な余裕があるわけでは無かったが、二、三分で人が集まるとも思えない。
少し待ってみて駄目なら一人で場所の下見だけでも済ませておくのが良いだろう。
俺はウェイレトレスを呼び止めてエールを注文した。
これを一杯飲む間だけ待ってみよう。
ふと掲示板を見る。
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あまり見かけない格好だが何者だろうか。
受付嬢が俺を指差して何やら告げているのが見えた。
志願者に間違いなさそうだ。
「失礼。お主が廃墟調査の依頼主か?」
「そうだ。あんたは?」
「お初にお目にかかる。拙僧はバルバと申す」
拙僧?モンクか。
「如何にも、拙僧は修行僧だ。して、お主は?」
「俺はレオ。見ての通り剣士だ」
そう言って俺は首から下げた自分のプレートを見せた。
「ミラーナイト……」
バルバが一瞬怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いや……普通は同じクラスでパーティー募集するのが一般的だ。ハイパーナイトクラス限定で募集されていたが……ひょっとしてお主……」
なるほど。
上位クラスに混じって甘い汁を吸う、いわゆる『寄生虫』冒険者と疑われたか。
俺は所長権限を示すバッジを見せた。
「これは本物……なぜミラーナイトクラスのお主がこれを?」
バルバが不思議そうに俺とバッジを見比べた。
疑われたままではパーティーは組めない。
俺は経緯を説明した。
「ふむ、なるほどな。トカナでも同様の事件があったとは……」
バルバは腕組みをしてうなずいた。
「であるならば問題ない。拙僧も同道しよう」
バルバはそう言って笑顔を見せた。
「しかしお主の話通りなら、そんな強力な怪物は聞いたこともない」
一口に強力なモンスターと言っても様々だ。
確かに有名なハイエンドモンスターは居る。
だがそうそうお目にかかる機会があるものでもない。
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あまりに例えが極端だったかもしれないが、ウィッチとかウォーロックなどもかなり強力な相手だ。
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「ゾンビの類いということか」
確かに死人が歩いているとすれば、それはゾンビなのだろう。
だが。
「いや、あれはゾンビとは違う。明らかに意思を持っていて意識的に戦っていた。魔法か何か判らんが、無音で背後から迫ってくる。しかも俊敏で馬鹿力だ。その上でこちらの攻撃はほとんど致命傷にならなかった」
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