35 / 826
三五
しおりを挟む
俺は取り敢えずラウンジの椅子に腰を下ろした。
それほど時間的な余裕があるわけでは無かったが、二、三分で人が集まるとも思えない。
少し待ってみて駄目なら一人で場所の下見だけでも済ませておくのが良いだろう。
俺はウェイレトレスを呼び止めてエールを注文した。
これを一杯飲む間だけ待ってみよう。
ふと掲示板を見る。
痩身痩躯の男が、今貼り出した俺の依頼書をカウンターに持って行くのが見えた。
あまり見かけない格好だが何者だろうか。
受付嬢が俺を指差して何やら告げているのが見えた。
志願者に間違いなさそうだ。
「失礼。お主が廃墟調査の依頼主か?」
「そうだ。あんたは?」
「お初にお目にかかる。拙僧はバルバと申す」
拙僧?モンクか。
「如何にも、拙僧は修行僧だ。して、お主は?」
「俺はレオ。見ての通り剣士だ」
そう言って俺は首から下げた自分のプレートを見せた。
「ミラーナイト……」
バルバが一瞬怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いや……普通は同じクラスでパーティー募集するのが一般的だ。ハイパーナイトクラス限定で募集されていたが……ひょっとしてお主……」
なるほど。
上位クラスに混じって甘い汁を吸う、いわゆる『寄生虫』冒険者と疑われたか。
俺は所長権限を示すバッジを見せた。
「これは本物……なぜミラーナイトクラスのお主がこれを?」
バルバが不思議そうに俺とバッジを見比べた。
疑われたままではパーティーは組めない。
俺は経緯を説明した。
「ふむ、なるほどな。トカナでも同様の事件があったとは……」
バルバは腕組みをしてうなずいた。
「であるならば問題ない。拙僧も同道しよう」
バルバはそう言って笑顔を見せた。
「しかしお主の話通りなら、そんな強力な怪物は聞いたこともない」
一口に強力なモンスターと言っても様々だ。
確かに有名なハイエンドモンスターは居る。
だがそうそうお目にかかる機会があるものでもない。
メジャーなところで言えばドラゴンなんて代表的な例だろう。
あまりに例えが極端だったかもしれないが、ウィッチとかウォーロックなどもかなり強力な相手だ。
厳密にはモンスターではないが、どちらも人間を辞めているという意味ではやはり化け物には違いだろう。
「ヤツは俺も初めて見るモンスターだった。元は人間だったようだが既に死んでいる。いくら叩いてもダメージがないように思えるんだ」
俺は思い出しながらヤツについて語った。
「ゾンビの類いということか」
確かに死人が歩いているとすれば、それはゾンビなのだろう。
だが。
「いや、あれはゾンビとは違う。明らかに意思を持っていて意識的に戦っていた。魔法か何か判らんが、無音で背後から迫ってくる。しかも俊敏で馬鹿力だ。その上でこちらの攻撃はほとんど致命傷にならなかった」
それほど時間的な余裕があるわけでは無かったが、二、三分で人が集まるとも思えない。
少し待ってみて駄目なら一人で場所の下見だけでも済ませておくのが良いだろう。
俺はウェイレトレスを呼び止めてエールを注文した。
これを一杯飲む間だけ待ってみよう。
ふと掲示板を見る。
痩身痩躯の男が、今貼り出した俺の依頼書をカウンターに持って行くのが見えた。
あまり見かけない格好だが何者だろうか。
受付嬢が俺を指差して何やら告げているのが見えた。
志願者に間違いなさそうだ。
「失礼。お主が廃墟調査の依頼主か?」
「そうだ。あんたは?」
「お初にお目にかかる。拙僧はバルバと申す」
拙僧?モンクか。
「如何にも、拙僧は修行僧だ。して、お主は?」
「俺はレオ。見ての通り剣士だ」
そう言って俺は首から下げた自分のプレートを見せた。
「ミラーナイト……」
バルバが一瞬怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いや……普通は同じクラスでパーティー募集するのが一般的だ。ハイパーナイトクラス限定で募集されていたが……ひょっとしてお主……」
なるほど。
上位クラスに混じって甘い汁を吸う、いわゆる『寄生虫』冒険者と疑われたか。
俺は所長権限を示すバッジを見せた。
「これは本物……なぜミラーナイトクラスのお主がこれを?」
バルバが不思議そうに俺とバッジを見比べた。
疑われたままではパーティーは組めない。
俺は経緯を説明した。
「ふむ、なるほどな。トカナでも同様の事件があったとは……」
バルバは腕組みをしてうなずいた。
「であるならば問題ない。拙僧も同道しよう」
バルバはそう言って笑顔を見せた。
「しかしお主の話通りなら、そんな強力な怪物は聞いたこともない」
一口に強力なモンスターと言っても様々だ。
確かに有名なハイエンドモンスターは居る。
だがそうそうお目にかかる機会があるものでもない。
メジャーなところで言えばドラゴンなんて代表的な例だろう。
あまりに例えが極端だったかもしれないが、ウィッチとかウォーロックなどもかなり強力な相手だ。
厳密にはモンスターではないが、どちらも人間を辞めているという意味ではやはり化け物には違いだろう。
「ヤツは俺も初めて見るモンスターだった。元は人間だったようだが既に死んでいる。いくら叩いてもダメージがないように思えるんだ」
俺は思い出しながらヤツについて語った。
「ゾンビの類いということか」
確かに死人が歩いているとすれば、それはゾンビなのだろう。
だが。
「いや、あれはゾンビとは違う。明らかに意思を持っていて意識的に戦っていた。魔法か何か判らんが、無音で背後から迫ってくる。しかも俊敏で馬鹿力だ。その上でこちらの攻撃はほとんど致命傷にならなかった」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる