見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二五

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「おい、そっちじゃない。こっちだ」

 奥へ進もうとする俺をオオムカデンダルが呼び止める。
奥ではなく、右に進んだ先にもう一つ扉があった。

 オオムカデンダルが先にその扉をくぐる。
俺もその後に続いた。

 部屋の中は意外と質素な感じだった。
さっきの部屋とは大分雰囲気が違う。

「その台に上がって横になれ」

 俺は言われるままに部屋の隅にある小さなベッドのような台に横になった。

「動くなよ。大した処置じゃないからすぐ終わる」

 オオムカデンダルはそう言って金属のトレーを持ち出した。

 チクッとした痛みが腕に走る。
何か針のようなものが腕に刺された。

 そして。

「おい。終わりだ。起きろ」

 俺はハッとして我に返る。
一瞬。ほんの一瞬で寝ていたのか。
体が何だかぼんやりする。

 俺はよく状況が飲み込めないままオオムカデンダルの顔を見た。

「母親を見る子供の目だな」

 オオムカデンダルはそう言って何故か大笑いした。
確かに不安からそんな目で彼を見たのかもしれない。

 俺は何となく恥ずかしさを誤魔化すため、必要以上に勢いよくベッドから立ち上がった。

「もう終わったのか?」

 俺は努めて冷静に尋ねた。

「ああ終了だ。改造手術としては初歩的なものだからな。簡単な処置だけで完了する」

 よく判らないがこれで強くなってるのだろうか。
まるで実感が湧かない。
あんな一瞬で何が変わったというのか。

「一瞬?まあ、と言っても一五分くらいは掛かったんだがな。お前は麻酔で寝てたから判らんだろうが」

 俺の疑問にオオムカデンダルが答えた。

 寝てたのか。
あの妙な感覚はそう言われれば納得できる感覚だった。
次の瞬間には終わっていたが、何となく前後が繋がらないような感覚。

 しかし一瞬で眠らされ、しかも一五分も経過していたとは。

「気分はどうだ。違和感は?」

「いや、ない。大丈夫だ」

 オオムカデンダルの問いにそう答えたものの、俺は何が変わったのか確かめたくなった。

「単純な肉体強化だ。筋力や神経系、視力や聴力といったもともとの能力が上がっている」

 俺はそう言われて自分の手を見た。
当然なにも変わったところはない。

 つまりあれか。
身体強化付与の魔法か。
しかしそれらを掛けられたときでさえ実感は多少ある。

「効果はどのくらい続くんだ?」

「持続時間か?お前が死ぬまでそのままだぞ」

 なんだと。
無制限だというのか。

 俺は驚きのあまりオオムカデンダルの顔を凝視した。

「……なんて顔してんだよ」

 オオムカデンダルが視線に気付いて眉をひそめた。

 これは凄いことだ。
いや、さっきからずっと凄いことの連続なのだが、俺も麻痺していたらしい。

 無制限の身体強化付与。

 俺は珍しく効果を試したくなっていた。
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