見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二一

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 恐らく彼らは見た目の年齢や性別に関係なく、ほぼ対等な関係なのだろう。

 どうしてそんな関係が成り立つのかは判らなかったが、少なくともそれぞれが独立した権利を有しており、お互いに自分が優位に立とうとしたりしていないように見える。

 まだ依然として言い合いは続いていたが、そんな中、女が近付いてきた。

「もういいでしょう。貴方、着いておいでなさい」

 女はそう言うと俺に着いてくるように言った。

 俺は言われるままに彼女を抱き抱え、女の後に着いていく。

 最初に連れていかれたあの地下室へ向かっている。
まさか、あの棺に入れば彼女は回復するのでは?

 俺はあの不思議な棺の中で、自分が奇跡的な回復を体験したことを思い出した。

 地下へ降り扉をくぐる。

 女は部屋の奥へと進み、例の棺の前をそのまま通り過ぎた。

「……あ」

 俺は思わず小さな声を発した。
この棺に入れるのではないのか?
まさか、助けてくれる訳ではないのか?

 女はそんな俺の心中に気付いているのか、いないのか。
そのまま部屋の奥へとどんどんと進んでいく。

 意外と広い。
あの時は瀕死だったから気付かなかったが、この部屋は思っていたよりも随分広い。

 不思議な調度品が所狭しと置いてある。
このどれもがあの棺みたいな人智を越えた魔導具なのか。

「さあ、この中に彼女を」

 女が不意に立ち止まり、俺の方を向いた。

 女の背後にはまたしても見たことのない物が置いてあった。

 楕円形と言えばいいのだろうか。
大きな卵形の入れ物。
全面はやはりガラス張りになっていて中が見えるようになっている。

 俺は女の顔を見た。
女は俺の顔を見つめながら、頭を振ってこの中へ彼女を入れろと促した。

 考える余地などない。
もうすでに生きているのか死んでいるのかさえ判断が付かない状態なのだ。
入れても入れなくても状況は変わらない。

 だったら入れないという選択肢はないだろう。

 俺は言われるままにケープの中の彼女を、優しく調度品の中へ入れた。
彼女の瞼はわずかに開かれている。
もう何も見てはいないのだろうが。

女が調度品に人差し指で触れた。

ピッ

 初めて聞く不思議な音がして、間もなく中に水が注入された。

「お、おい」

 俺は軽く女に詰め寄った。
だが、やめてくれと言ってやめたら今と何が変わるのか。

 俺が何かを心配したり口を出すことなど、ここでは蟻ほども意味がない。

やがてガラスの中は液体で充たされた。

「貴方の時と違って、これは回復するとかどうとかの次元ではないわ。それは判るかしら」

 女が振り向きもせず、ガラスの中の様子を凝視しながら語りかけてくる。

 俺は『ああ』とだけ答えた。

「そう。ならいいわ」

 女はそれだけ言うと俺を連れて部屋を出た。
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