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本編
罪の重さ
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「クッ……! 減らず口をッ!」
アオイが叫ぶと同時にライ&トゥルースは、二度三度と棒を振るった。
ガシッ! ガシッ! ガシッ!
繰り返し打ち付ける。まるでハンマーだ。
それを受け止める唯桜の足は、少しずつ地面にめり込んでいく。
「驚れえたなあ。こんなの堪えられる人間が居るなんてよお」
コンタがため息を吐く様に呟いた。
良く見ると、唯桜の後ろに隠れる様にマキが居た。
と言うよりも、唯桜がマキの前に立ちはだかっていると言うのが正解だろう。
庇っているのか。
避けようと思えば避けられる攻撃を敢えて受け止めているのは、マキを守っているからなのではないか。
コンタにはそう思えた。
ガシッ!
何度目かの攻撃を唯桜は手で掴まえた。
ライ&トゥルースが振りほどこうとしても、恐るべき怪力で捕まえられ動けない。
「な、なんだ、この力は!?」
アオイが驚く。
「嬢ちゃん、おイタが過ぎるぜ。人を棒で叩きなさいとママが教えたのか?」
唯桜がそのまま前に出る。
「クッ! 離せッ!」
唯桜が強引に棒を掴まえてライ&トゥルースを蹴り飛ばす。
唯桜に蹴られてライ&トゥルースは、後ろへ大きく仰け反った。
「面白そうだ。是非俺も叩いてみてえな」
唯桜の手にはライ&トゥルースから奪い取った棒が握られている。
アオイが驚く。
まさか、守護精霊の武器を取り上げたと言うのか。
前代未聞である。
人間とは違い守護精霊はミスをしない。
武器を落としたり、武器捌きを誤ったりもしない。
武器を取られた。
つまりミスでは無い。力ずくで奪われたのだ。
アオイにとって考えられない出来事であった。
「まさか!? そんなデタラメな!」
後ろへ後ずさるアオイに唯桜がゆっくり詰め寄る。
手に持った棒で自分の肩をトントンと叩いている。
だが、守護精霊であるライ&トゥルースは正面から唯桜に対峙した。
アオイが下がってもその守護者である守護精霊は、臆する事は無い。
「ライリー……」
アオイが呟く。
ライ&トゥルースにアオイが付けた愛称だ。
その後ろ姿にアオイは奮起する。
「女だてらに見上げた根性じゃねえか」
唯桜がライ&トゥルースを見てそう言った。
「だが相手が女でも容赦はしねえ!」
唯桜はそう言うと同時に棒を大きく振り上げた。
ライ&トゥルースが咄嗟に頭上で腕をクロスする。十字受けだ。
唯桜の棒を両腕で受け止めるつもりらしい。
「へっ、真似してやれるもんならやってみやがれ!」
唯桜は渾身の力を込めて棒を叩き付けた。
「ライリーッ!」
アオイが叫んで同じポーズを取る。
頭上で両腕を交差する。
守護精霊と同じ体勢だ。
ガシッ!
見事、守護精霊が棒を受け止めた。だが。
ボゴオッ!
大きな音を発てて守護精霊の体は、膝辺りまで地面に埋ってしまった。
「あぐぅ……ッ!」
アオイが呻く。
丁度棒を受け止めたのと同じ部分から血が噴き出していた。
ガクッと膝を着く。
守護精霊は守護対象者を護る為、自発的に戦う。
しかし、力を限界以上に引き出す為には守護対象者とシンクロする必要があった。
これにより守護精霊は実力以上の力を発揮する事が出来る。
しかしシンクロすると言う事はダメージも共有すると言う事であり、結果ダメージを負った際には守護対象者である『契約者』もただでは済まない。
ライ&トゥルースはネルソンの『ベイリーフ・ブラック』よりもパワーやスピードでは劣る。
しかしライ&トゥルースにはベイリーフ・ブラックには無い特殊能力が有った。
それこそがアオイがネルソンと同格に位置している所以である。
アオイは血塗れの腕を抑えながら立ち上がった。
「噂なんて可愛い物だったわね……尾ひれが付いて伝わる物を、実物は更に上回っているなんて……」
アオイの顔色が悪い。
ダメージは深刻だ。
「アオイ、もう止めるだ。これ以上は無意味だあ」
コンタがアオイを止めた。
「無意味って何よ。私を勝手に可哀想に思わないでもらえる?」
アオイはヨロヨロと歩いた。
「人間じゃ無い。こんな馬鹿力、獣人並みだわ」
唯桜は黙ってアオイを見ていた。
「ふふふ……ところで、その彼女は貴方の何なのかしら。恋人?」
「ああ」
アオイの質問に唯桜は一言で答えた。
「そう。奧さんでは無いのね」
この質問にはマキが食い気味に答えた。
「いいえ、妻よ。この人は私の夫です」
マキの答えにアオイがわずかに微笑む。
「そうなの? 間違いない?」
「間違いないわ!」
アオイが唯桜を見た。
「どうなの? 彼女は嘘を吐いているんじゃなくて? 本当に貴方の奧さんなの?」
アオイが食い下がる様に唯桜に尋ねる。
唯桜は一瞬沈黙した後に、ああ、そうだと答えた。
突然。
ガクンッ!
体が重い。唯桜は事態が呑み込めなかった。
なんだ、何が起こった?
気のせいでは無い。本当に体が重たく感じる。
アオイがニヤリと笑った。
「嘘を吐いたわね。ライ&トゥルースは嘘と真実が花言葉。この場で嘘は許されないわ」
唯桜がアオイを見上げる。
重さでもう膝が地面に付きそうである。
マキが唯桜を見た。
「……なんで。なんで嘘を吐くの? 私を妻だと認めていないの?」
マキの目から涙が溢れる。
実際夫婦では無いのだから仕方が無い。
マキを気遣った言葉が嘘となるのならば、ハッキリ違うと言わなければならないのか。
「嘘を吐く度、罪の分だけ体は重くなるのよ」
形勢は逆転した。
アオイが叫ぶと同時にライ&トゥルースは、二度三度と棒を振るった。
ガシッ! ガシッ! ガシッ!
繰り返し打ち付ける。まるでハンマーだ。
それを受け止める唯桜の足は、少しずつ地面にめり込んでいく。
「驚れえたなあ。こんなの堪えられる人間が居るなんてよお」
コンタがため息を吐く様に呟いた。
良く見ると、唯桜の後ろに隠れる様にマキが居た。
と言うよりも、唯桜がマキの前に立ちはだかっていると言うのが正解だろう。
庇っているのか。
避けようと思えば避けられる攻撃を敢えて受け止めているのは、マキを守っているからなのではないか。
コンタにはそう思えた。
ガシッ!
何度目かの攻撃を唯桜は手で掴まえた。
ライ&トゥルースが振りほどこうとしても、恐るべき怪力で捕まえられ動けない。
「な、なんだ、この力は!?」
アオイが驚く。
「嬢ちゃん、おイタが過ぎるぜ。人を棒で叩きなさいとママが教えたのか?」
唯桜がそのまま前に出る。
「クッ! 離せッ!」
唯桜が強引に棒を掴まえてライ&トゥルースを蹴り飛ばす。
唯桜に蹴られてライ&トゥルースは、後ろへ大きく仰け反った。
「面白そうだ。是非俺も叩いてみてえな」
唯桜の手にはライ&トゥルースから奪い取った棒が握られている。
アオイが驚く。
まさか、守護精霊の武器を取り上げたと言うのか。
前代未聞である。
人間とは違い守護精霊はミスをしない。
武器を落としたり、武器捌きを誤ったりもしない。
武器を取られた。
つまりミスでは無い。力ずくで奪われたのだ。
アオイにとって考えられない出来事であった。
「まさか!? そんなデタラメな!」
後ろへ後ずさるアオイに唯桜がゆっくり詰め寄る。
手に持った棒で自分の肩をトントンと叩いている。
だが、守護精霊であるライ&トゥルースは正面から唯桜に対峙した。
アオイが下がってもその守護者である守護精霊は、臆する事は無い。
「ライリー……」
アオイが呟く。
ライ&トゥルースにアオイが付けた愛称だ。
その後ろ姿にアオイは奮起する。
「女だてらに見上げた根性じゃねえか」
唯桜がライ&トゥルースを見てそう言った。
「だが相手が女でも容赦はしねえ!」
唯桜はそう言うと同時に棒を大きく振り上げた。
ライ&トゥルースが咄嗟に頭上で腕をクロスする。十字受けだ。
唯桜の棒を両腕で受け止めるつもりらしい。
「へっ、真似してやれるもんならやってみやがれ!」
唯桜は渾身の力を込めて棒を叩き付けた。
「ライリーッ!」
アオイが叫んで同じポーズを取る。
頭上で両腕を交差する。
守護精霊と同じ体勢だ。
ガシッ!
見事、守護精霊が棒を受け止めた。だが。
ボゴオッ!
大きな音を発てて守護精霊の体は、膝辺りまで地面に埋ってしまった。
「あぐぅ……ッ!」
アオイが呻く。
丁度棒を受け止めたのと同じ部分から血が噴き出していた。
ガクッと膝を着く。
守護精霊は守護対象者を護る為、自発的に戦う。
しかし、力を限界以上に引き出す為には守護対象者とシンクロする必要があった。
これにより守護精霊は実力以上の力を発揮する事が出来る。
しかしシンクロすると言う事はダメージも共有すると言う事であり、結果ダメージを負った際には守護対象者である『契約者』もただでは済まない。
ライ&トゥルースはネルソンの『ベイリーフ・ブラック』よりもパワーやスピードでは劣る。
しかしライ&トゥルースにはベイリーフ・ブラックには無い特殊能力が有った。
それこそがアオイがネルソンと同格に位置している所以である。
アオイは血塗れの腕を抑えながら立ち上がった。
「噂なんて可愛い物だったわね……尾ひれが付いて伝わる物を、実物は更に上回っているなんて……」
アオイの顔色が悪い。
ダメージは深刻だ。
「アオイ、もう止めるだ。これ以上は無意味だあ」
コンタがアオイを止めた。
「無意味って何よ。私を勝手に可哀想に思わないでもらえる?」
アオイはヨロヨロと歩いた。
「人間じゃ無い。こんな馬鹿力、獣人並みだわ」
唯桜は黙ってアオイを見ていた。
「ふふふ……ところで、その彼女は貴方の何なのかしら。恋人?」
「ああ」
アオイの質問に唯桜は一言で答えた。
「そう。奧さんでは無いのね」
この質問にはマキが食い気味に答えた。
「いいえ、妻よ。この人は私の夫です」
マキの答えにアオイがわずかに微笑む。
「そうなの? 間違いない?」
「間違いないわ!」
アオイが唯桜を見た。
「どうなの? 彼女は嘘を吐いているんじゃなくて? 本当に貴方の奧さんなの?」
アオイが食い下がる様に唯桜に尋ねる。
唯桜は一瞬沈黙した後に、ああ、そうだと答えた。
突然。
ガクンッ!
体が重い。唯桜は事態が呑み込めなかった。
なんだ、何が起こった?
気のせいでは無い。本当に体が重たく感じる。
アオイがニヤリと笑った。
「嘘を吐いたわね。ライ&トゥルースは嘘と真実が花言葉。この場で嘘は許されないわ」
唯桜がアオイを見上げる。
重さでもう膝が地面に付きそうである。
マキが唯桜を見た。
「……なんで。なんで嘘を吐くの? 私を妻だと認めていないの?」
マキの目から涙が溢れる。
実際夫婦では無いのだから仕方が無い。
マキを気遣った言葉が嘘となるのならば、ハッキリ違うと言わなければならないのか。
「嘘を吐く度、罪の分だけ体は重くなるのよ」
形勢は逆転した。
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