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第一章

ダグル迷宮地下二階層……脱出と経過報告

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 エルはシルフィアと話したあと、岩戸を開けるためのスイッチを魔法で探した。すると岩戸の右側の岩壁の一部が青く発光する。
 それを確認するとエルは、青く光った部分を手で触ってみた。
 手で触れた部分が楕円形にくり抜かれたように、スッと消える。

「なんか上に付いてるね」
「うん、下に引くタイプみたいだな」

 エルはその部分を下へ引いた。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴォォォォー……――

 そう音を立てながら岩戸が上がる。

「開いたわね。んー、だけどこの先って?」
「ちょっと待って……俺が先に出てみる」
「うん、気をつけてね」

 それを聞きエルは頷いた。その後、警戒しながら出てみた。
 そしてエルは状況を確認すると、再び部屋に入ってくる。

「シルフィア、通路だ。それに、知ってる場所みたい」
「……じゃあ、戻れそうだね」
「ああ、とりあえず一旦ログスとララファの所に戻ろう」

 そう言われシルフィアは頷いた。
 その後二人は、この部屋から出てログスとララファが居る休憩施設に向かう。

 ∞✦∞✧∞✦∞

 ここはダグル迷宮地下二階層にある休憩施設。
 あれからエルとシルフィアはここにくる。そしてログスとララファと話をしていた。

「……そうか。兄貴たちは、みつからなかったんだな」

 そう言いログスは俯く。

「ごめん……探せなくって」
「エル、仕方ないよね。でも、兄さん……どこに居るのかなぁ」

 ララファはそう言いながら遠くをみつめている。

「どうするの? まだ行ってない場所があると思うけど」
「シルフィア。そうだな……少し休んだら行くか?」

 そうエルが言うとララファは首を横に振る。

「もういいよ。エルとシルフィアが、これだけ探しても……みつからないんだし」
「そうだな……ララファの言う通り、もう大丈夫です」

 そう言うもログスとララファは、凄くつらそうだ。

「本当にそれでいいのか?」
「エル、そう言ったって……。このまま探してもらっていても、二人に迷惑かけているだけだし。結局は、自分じゃ何もできてない」
「うん、ログスの言う通り。アタシも、ただここで待っているなんて嫌だよ。もし、また行くならアタシも……」

 ララファは訴えかけるようにエルとシルフィアをみる。

「それは……無理だ。俺たちでも、やっとだったからな」
「そ、そうだね……」

 そう言いシルフィアはエルから目を逸らした。

(やっと……って、エルは違う気がするけど……わざとかな?)

 そうシルフィアは思いエルをみる。

「じゃあ、いいです。悔しいけど……諦める」
「ログス……」

 エルはログスとララファの気持ちが分かるためそれ以上、言葉にならなかった。
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