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第一章

ダグル迷宮地下二階層……所持者と眷属の違い

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 ここはダグル迷宮地下二階層の隠し通路。そこの出入口と思われる扉の前だ。
 エルはシルフィアが目覚めるまでの間、岩壁に寄りかかり色々と考えていた。

(まだかなぁ……本当に大丈夫なんだよな?)

 そう思い心配になりシルフィアの方をみる。
 するとシルフィアの体が発光した。それから、左の太もも付近が激しく光る。その後、光が消えた。
 グリモエステルスから放たれていた光は消える。そしてグリモエステルスは小さくなり、ページを閉じてエルの目の前まできた。
 それを視認するとエルは、グリモエステルスを手にしたあと立ち上がる。

「終わったみたいだな。あとは、眷属になるための契約の儀式か……」
 “そうなるね。じゃあシルフィアが起きたら、すぐに始めようか”
(そうだな……だけど、なんで眷属だけこんな儀式的なことをするんだ?)

 ふと不思議に思いエルはそう問いかけた。

 “うむ、そうだな……これは話しておいた方がいいか。いや、その前に質問した方がいいね”
(またか……そうだな、それで質問て?)
 “嫌そうだな……だが、まあいい。君は簡単に儂を手に入れたと思っているのかね”

 そう聞かれエルはグリモエステルスが、なぜそう質問したのか分からず悩み始める。

(んー……素直に答えればいいのか?)
 “ああ、勿論だ。これは、エルがどう思っているか知りたいから聞いているんだ”
(そうか……分かった。簡単に手に入れたのか、いやそれはない。あの時は、ギリギリだったからな。一問でも間違えば、グリモエステルスに魂を喰われる)

 そう言うとエルは、その時のことを思い出し顔が青ざめた。

 “そういう事だ。所有者……最初に手に入れた者の方が、眷属よりも大変なんだよ”
(そうか……確かにそうだよな。……すっかり忘れてた。ハハハ……)

 そうエルが言うとグリモエステルスは、宙に浮き開く。するとエルの左腕まで行くと、パタンと閉じて噛みついた。

「イデェエエー……」

 そう叫びエルは、余りの痛さに跳び上がる。そして、両目から大量の涙を流した。
 何もなかったようにグリモエステルスは、ページを閉じたままエルの前で静止する。

 “エル……たまに君は、儂を怒らせるようなことをするね。……わざとなのか?”
(ううん、わざとじゃない。多分……ハハハ……)

 エルは苦笑した。

 “まあいいか。それも君の、いいところなのだろうからね。それじゃ、そろそろ……儀式をするために、やり方を教えておくか”
(そうだな……なんか、まだ不安なんだけどな)
 “不安……今の気持ちじゃ、不完全かな”

 そう言われエルは、どういう事なのかと思い首を傾げる。

(不完全って……)
 “躊躇う気持ちがない方がいい……これは儀式だ。そうだな……能力を使った方がいいかもしれないね”
(……それだけは嫌だ。あの能力を解放すれば、俺の性格が変わる。そうなれば、シルフィアにどんな態度をとるか分からない)

 エルは、つらそうな表情になった。

 “それでいい……理性のない本来の君をみせたらどうだい? それにシルフィアは、これから君の眷属になるんだよ……隠しても仕方ないと思うがね”

 そう言われエルは悩んだ。

(確かにグリモエステルスの言う通りだ。でも……あれが、グリモエステルスの言うように本当の俺なのか?)

 エルはそう考えながら自問自答している。
 そんなエルの様子をグリモエステルスはみていた。

 “(さて、エルはどうするのかな。もし能力を使わない方を選ぶようなら、変わることができないだろう。でもそれじゃ駄目なんだ。
 君はやらなければならないことがある……。それにその気がなくても、恐らく命を狙われる可能性はあるからね)”
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