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第一章

ep.11 曖昧な記憶

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 ここはリュコノグルの城下町にある宿屋のハルリアの部屋。そこには、ハルリア、ルミカ、カールディグス、メイミル、四人がテーブルを囲み椅子に座って話をしている。

「師匠? おーい」

 そう言いルミカは、ハルリアの眼前に目掛けて手を振った。
 だがそれに気づいていないのかハルリアは、ボーッとしている。

「どうしたんでしょうか? 戻って来てから、この調子ですし」
「カール様、もしかして師匠……恋煩いかな?」
「「え゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛ーー!?」」

 まさかと驚きルミカとカールディグスは、声が裏返りながら叫んだ。
 そして三人は、マジマジとハルリアをみる。
 それに気づいたハルリアは、三人を見回した。

「ん? お前たち、なんでみてるんだ」
「えーっと……師匠、好きな人ができたのですか?」
「……。な、何を言ってる? そもそも、なんでそんな話になったんだ」

 そうハルリアが言うと三人は、ホッと胸を撫で下ろす。

「なんで、って。師匠が、ボーッとしてたからですよ」
「ルミカ……ああ、それでか。いや、すまん……昔のことを思い出してたんでな」
「昔のこと? でも、なんで急に……」

 そうカールディグスが問いかけるとハルリアは、真剣な顔で窓の方をみる。

「……今日、知り合ったヤツが昔……好きだった女に似てた。姓、までもな」
「なるほど……って、えぇぇえええーー……」

 驚きルミカはそう叫んだ。カールディグスとメイミルも、時間差で驚き同じく叫ぶ。

「待って、ハルリア様……その人と関係はもったんですか?」
「カール……いや、ないとは思う」
「思うって、覚えてないの?」

 そうメイミルに聞かれハルリアは、頭を抱え悩み始める。

「……実はな。その頃の記憶が、曖昧で思い出せん」
「それって、どういう事ですか? 今日、あった人が……十五なら」
「カール、十五……十六年前ってことだ。だいたい二十九か、三十ぐらいか」

 ハルリアはそう言い必死に思い出そうとした。

「ですね……。でも、思い出せないって……普通じゃありません。なぜでしょうか……付き合ってたのですよね?」
「ああ……ルミカ、付き合っていた。そのことは、覚えてるんだがな」
「変ですね。その頃って、何があったんですか?」

 そうカールディグスが聞くとハルリアは、んーっと思い出そうとしている。

「あの頃か。確か……なんかの任務をしてた。その時の記憶も途切れてる」
「じゃあ、もしかして……その時に記憶が……」
「メイミルの言う通りかもしれません。そうなると……その女性と関係があったかは、分からない」

 そうカールディグスに言われハルリアは、コクッと頷いた。

「可能性は……低いはずだ。それに……旧姓のままで、この町に居るとも思えねぇからな」
「そうですね……それに今日、会った人が……その女性の子とも限りませんし」
「ルミカ。ああ……まぁそうだとしても、オレの子供じゃねぇかもだしな」

 そう言いハルリアは、ふぅ~っと息を吐く。

「だけど師匠、可能性もないとは言えないよ」

 メイミルはそう言い、ジト目でハルリアをみる。

「確かに、師匠の女性遍歴は……」
「カール、いや……まぁそうだな。ハハハ……」

 そう言いかけハルリアは、言い返す言葉がみつからず苦笑した。

「まぁそのことは、追々分るでしょう。それよりも明日は、僕たちの番です」
「そうです……明日でした。思い出したら、緊張してきちゃいましたよ」
「うん、そうだね……大丈夫かなぁ」

 そう三人が言うとハルリアは、近くにあった棒を手にする。するとその棒で、カールディグス、メイミル、ルミカ、三人の頭を順に軽く叩いた。

「何を緊張してやがる。お前たちなら大丈夫だ。それに、試験と言っても……紙のテストと面接だけだしな」
「そうですね……師匠の言う通りです」

 そうルミカが言うとカールディグスとメイミルは頷く。
 そしてその後ハルリア達は、そのことと今後のことを話していたのだった。
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