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第一章

白旗と処遇

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 ムドルはグレイフェズに勝利した。そしてその後、ニヤケながらベルべスクとカロムが居る方へ向かっている。 

(これで、ルイさんと二人になる機会ができました。ですが……あとは、ルイさん次第。大丈夫だとは、思いますが……)

 そう考えながらムドルは、ベルべスクとカロムが居る所まできた。

 戦っていたベルべスクとカロムは、ムドルに気づきやめる。

 ベルべスクは、ムドルが目の前に居ることで察した。ムドルが勝利したことに……。

 するとベルベスクの顔が、ミルミル青ざめる。その後どこから出したのか、二つの小さな白旗を一本ずつ両手で持ち振った。

「……ムドル、降参だ! オレは、お前に勝てねぇからな」

 そう言いベルべスクの額から、一滴の汗が流れ落ちる。

「それは、残念だ。久しぶりに、やり合えるかと思ったんだが」

 ムドルは不服そうな顔でベルべスクをみた。

「フゥ……まぁいいでしょう。どちらにせよ、これ以上は試験をしたとしても無意味ですし。とりあえず、グレイフェズの治療が先ですね」

「オレ達の試験の結果はどうなる?」

 そうムドルが問うとカロムは、ティハイドの居る部屋の方に視線を向ける。

「そうですね……ティハイド様に判断を仰ぎたいと思いますので、これから案内する部屋で待機してください」

 カロムはそう言いながらグレイフェズの方をみた。

「治療のためグレイフェズを、貴方たちとは別の部屋に連れて行きます」

「別室? どうしてだ。治療だけなら、同じ部屋でもいいんじゃないのか」

 そうムドルが聞くとカロムは、ハァーッと息を漏らす。

「ここからでも、かなりの治療が必要にみえます。それに……まぁこれは、ティハイド様の判断となりますので。申し訳ないが迂闊には、私の口から言えません」

「そういう事か……。グレイフェズは、負けた。だが試験の判定は、勝ち負けじゃない。そういったものも、あるって訳か」

「いや、それだけではない。それ以上は、詮索するな」

 そう言いカロムは、ムドルを凝視する。

「ああ……悪い。どうも気になると、な」

「まぁいい。お前たち二人の案内をさせる者を連れてくる」

 その後カロムは「ここで待ってろ」と言い部屋を出ていった。

 それを確認するとムドルとベルべスクは、ふぅ~っと互いに息を漏らす。

「ムドル、気をつけろ。変に勘繰られたら面倒だ」

「そうだな。ツイ、悪い癖がでた。すまない……」

「まぁ……オレも気になったがな。護衛の試験をやった訳とかもだ」

 そう言いベルべスクは、真剣な表情で考え込んだ。

 そうこう二人が話しているとカロムは、侍女を連れてきた。その後ムドルとベルべスクは、侍女の案内で部屋へと向かう。

 それを視認するとカロムは、ティハイドの居る部屋の方に視線を向ける。

 ティハイドはそれに気づき部屋を出てカロムの方へと向かい歩き出した。

 それをみるとカロムは、頭を軽く下げる。

 ティハイドはそばまでくると立ちどまりカロムをみた。

「カロム、護衛は三人もいらん。だが、グレイフェズも勿体ない」

「それでは、どう致しましょうか?」

「そうだな……護衛は、あの二人でいい。そうなると……」

 そう言いながらティハイドは、ぐるりと辺りを見回す。

「では――」

「ああ……そうだな。護衛の方ではなく、そっちの依頼を任せてみるか。金になりそうだしな」

「ええ、ただ……受けるでしょうか?」

 そう聞かれティハイドは、グレイフェズの方をみる。

「依頼料を、倍にする。それと稼いだ金額の一割を払ってやれ。恐らくそのぐらい、稼いでくれるだろうからな」

「承知しました。では治療しましたら、そのように伝えたいと思います。それと……あの二人には、なんと説明すれば?」

「別の仕事を依頼したことにすればいい」

 そうティハイドに言われカロムは頷いた。

「分かりました。では様子をみて、グレイフェズを部屋に運びたいと思います」

 そう言い会釈をするとカロムは、グレイフェズの方へと向かう。

 ティハイドはそれを確認すると、部屋を出て自分の書斎へと向かった。

 その後カロムはそばまでくると、グレイフェズの状態をみる。

 そしてカロムは屋敷の使用人を四人呼んで来て、グレイフェズを部屋に運ばせたのだった。
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