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『心配』の行方

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「お連れの方が一人で出ていったから、気になって様子を見に来たの。調子はどう?」

 どうやら訪れた女性は一人残されたモレーナを心配して、こうして来てくれたらしい。


「はい、ゆっくり休ませてもらってますので」

 心配はいらないと伝えて、去っていくのを願う。

「それならよかったわ。折角だもの。女の子同士休憩しながらお話しない?」

 しかし、モレーナの期待とは異なり、女性が立ち去ることはなかった。

(断ると不審がられるかもしれないし、会話だけなら……大丈夫だよね?)

 現れた女性が一人だったこと。そして、裸ではなくマントを身につけていたことが、モレーナに少しの安心感を感じさせた。
 緊張しながらも小さく頷くと、中へと足を踏み入れた女性は扉を閉めて鍵をかける。
 そのことにも少し安堵した。
 誰かと口裏を合わせたのではなく、一人で来たという証拠だ。

 ソファへと座る女性に手招きされ、その隣へと腰掛ける。大人3人が座れる長椅子を2人で座ると余裕がかなりあるのだが、女性は隙間を空けて座ったモレーナと肌がぶつかる位置へと再び座り直す。

「……あのぅ?」

 近すぎませんか、と言葉には出さずに訴える。

「ふふっ。離れていたら密かな話はできないものよ」

 女性の言い分は一理ある。
 けれど、ここは個室でモレーナと彼女の二人しかいないのだ。わざわざ小声で話す必要もないだろう。

「って、あら? 貴女がこれを飲んだの?」
「……? はい」

 不思議そうにこちらを見る女性を、モレーナも不思議に思って見返す。
 女性が指を差したのは、先ほどまでモレーナが飲んでいた水の入った水差しだ。今は中の水が半分ほどにまで減っている。

「そう。美味しかった?」

 にっこりと笑みを浮かべる女性にモレーナも微笑む。

「はい。甘くて飲みやすかったです」
「んふっ。貴女可愛い子ね」
「……?」

 向けられた眼差しが変わったことに気づいた。

(どうして……?)

 少し前までは心からモレーナの体調を心配している女性だったのだ。それなのに、今はその眼差しの奥に妖艶な色が浮かんでいる。
 ねっとりと体に纏わりつく視線を感じて身震いをした。



「体、熱くない?」

 体が熱くないか。
 そう問われて意識をすると、確かに違う。
 異様な世界に踏み込んだことで『正常』がなにかの感覚がマヒしていたのだ。


 体が熱い。特に、布地で隠している部分が――。

 意識するとどうしようもない気分に陥り、思わず両足を擦らせる。
 たったそれだけなのに、体がびくりと大きく跳ねた。

「可愛い子……。初めてだものね、女性同士だと慣れやすいんじゃないかと殿方に言われて様子を見に来たのだけれど……」

 視線と同様にねっとりとしなやかな手がモレーナに伸びる。
 しかし、モレーナを襲う感覚が少し前とは違った。

「んんっ……」

 マント越しにお腹周りを撫でられただけだ。
 それなのに、声が我慢できない。

(あのおじさんの仕業なのね……!?)

 この女性が挨拶をかわした男性によって差し向けられたということをようやく理解する。
 けれど、この体の異常なまでの反応はなぜなのだろうか。

 状況を理解できていないモレーナに教え導くように、女性は吐息を混ぜてモレーナの耳元で囁く。


「貴女が飲んだあま~いお水はね、実は媚薬が混ざっているのよ。だから、甘くて美味しいの」


 言葉の意味を理解して、思わず目を見開く。

(私のバカ……!! ここは敵陣、それも媚薬を裏取引する人達が開催する夜会なのに、疑いもしなかったなんて!!)

 後悔する時点で手遅れなのだ。
 どうしよう、と考える時間すらもらえず、女性の手がマントの中へと手を潜ませてモレーナの秘めやかな場所へと指を這わせる。

 ぐちゅりと卑猥な音がした。
 耐えきれない嬌声が響き渡る。

「あぁぁッ!! はッ……んぁ!」

 ぐちゅりぐちゅりと、長く細い指先によって奏でられる音がモレーナの心拍を速くする。

「ずっと我慢していたのね? 可哀想に。もう大丈夫よ」

 囁かれる言葉に嫌々と首を振るも、女性の手は止まることはない。

「やっ……あぁんッ……」

 いつの間にかソファに横たわるモレーナの上に女性が覆いかぶさっていた。
 広げられたマントによって、モレーナの肢体が晒される。

 恥ずかしい。
 しかし、一度与えられた熱によって、体中が全然足りないと叫んでいる。

「んッ……」

 嬌声をあげる声を遮ったのは、女性の厚みのある唇だ。ぷるぷるとした弾力が触れ合う唇によって伝わる。
 絡み合う舌が水音を立てる。
 お互いの熱い吐息が、よりモレーナを狂わせた。

(私、キス初めてなのに……)

 そんな思考はたったの一瞬だ。
 キスからも、モレーナの秘部をまさぐる女性の指先からも競り合う快感が思考を中断させる。
 指が蜜が溢れ出る場所へと沈み込む。

「痛っ…!!」

 ミシミシと細い指がナカへと入っていくのが分かった。
 キスを止めた女性がモレーナの耳を舐め、息を吹きかけて囁いた。

「貴女、初めてだったのね? それでこんなところにくるなんていけない子だわ」
「んぁッ……」
「痛む?」

 問われた言葉に必死に首を縦にふる。
 もしかしたら中断してくれるのではないだろうか。そんな希望が膨らむ。

 すると、モレーナの中へと侵入していた指が引き抜かれた。
 物足りない感覚と、終わったのだという安堵。

 瞼を閉じて呼吸を整いている間、立ち上がった女性が何かを探し始めた。

「たしかこの辺りに……あったわ」

 ぎしりとソファが沈む。
 呼吸が整い始めたことでゆっくりと目を開けると、うっとりと微笑んでいる女性と目がかち合う。

(――これで終わりじゃない)

 モレーナは瞬時に悟った。
 しかし、体勢を整える力も時間稼ぎをする余裕もなかった――

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