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阿蘇ダンジョン攻略編
逆手
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牛頭の刺又と僕の大鎚が撃ち合う。
それらは互いに負けず、撃ち合ったと同時に相手を弾く。
武器があること・・・それがこんなにも頼もしく感じることができるとは、カケラも思ったことがなかった。
「うぉぉおおおおらぁぁあああ!」
大鎚の柄を長く伸ばして、攻撃を妨げようとする刺又を掻い潜り右膝の内側を撃ち抜く。
「ごぉぉぉらららららああああ!」
牛頭の刺又の突きが、僕の右ショルダーガードを貫く。
体感温度が少し上がった気がする。
だけどまだ耐えれる。
大鎚を振り回しながら移動して右肩を狙って振り下ろす。
牛頭は左手の刺又でそれを受け止めた。
一度距離を取るために下がると、牛頭が大きく一歩を踏み出して右手の刺又を投げてきた。
大鎚でそれを受け止める。勢いでさらに下がることができた。
もう一つ欲張って刺又を掴もうとしたが、僕が手を出した時には既にそこになく、僕の手は空を掴む。
・・・速い。
振る速度、突く速度、引く速度、投げる速度全てが速い。
それが全て腕の力だけで行われていることに、恐怖と安心を感じていた。
こいつは、ポテンシャルだけがあるモンスターなのだ。
僕のフェイントにもかかるし、攻撃も狙いがわかりやすい。
前提条件として身体強化のスキルと支配クラスのスキルからの加護のような付与が必須という無理難題があるわけだが、それでも、こいつが達人クラスじゃなくてよかった。
「本来ならその隙間を馬頭が埋めていたんだろうな」
「何の隙間だ!?」
牛頭が2本の刺又を大きく振り下ろすと、衝撃波が地面を抉りながら向かってきた。
だが、これも刺又を振りかぶった時に読めている。
余裕を持って避けて、万が一にもスキル範囲から出ないように大鎚を振り回す。
それを今度は牛頭が刺又で打ち払う。
2本持っているため、上下見境無く攻撃しているのに全て受け止められた。
一思いに、と思って一度回転して、勢いつけてヘッドを巨大化させる。
「いけぇぇぇぇ!」
「ふんぬ!」
牛頭は二つの刺又を一緒に両手で握ってそれを受け止めた。
ゴガァン! と凄く大きな音が響いた。
炎の大鎚は僕には長い棒ぐらいの重量しか感じないが、かなり頑丈で遠心力をつけると、それなりに攻撃力が出るようだ。
後は、僕か牛頭の体力がいつ尽きるか・・・。
「ぐふ・・」
牛頭の口から笑いが溢れた。
「何が可笑しい!」
「あ、すまんな。あまりにも戦いが楽しすぎて笑ってしまった」
「・・・戦いが?」
「ああ、凄く楽しい。生きている実感を覚える。貴様はそうは思わないのか?」
「思わないね。僕は戦うことが怖い。死に1番近い場所で踊る趣味は持ち合わせていないんだ。いつ死ぬかも分からない戦いが楽しいとか・・・人間でそんなことを思う奴がいたらそいつは狂ってるよ」
「そうか・・・それは残念だ!」
牛頭が大鎚を押し返し、僕は次に来るだろう攻撃に備える。
だが、牛頭は攻撃せずに穏やかに微笑んで2本の刺又を1本の刺又へと変化させた。
「残念だ」
「・・・何がだ」
「この血肉が踊るような戦いが終わることが」
「もう勝った気でいるのか?」
「そうじゃない・・・スキルが発動した」
刺又のオーラが牛頭馬頭を包む。
「このスキルは俺の意識を失わせる。次俺が気づくときは、お前が死んでいるか、俺が死ぬ寸前かだ」
牛頭馬頭の筋肉が異常なほど動き始めて、全身の血管が浮き出た。
・・・冗談だろ・・・。
「ああ、残念だ。本当に残念だ。・・・残念・・・だ」
牛頭の目が真っ赤に染まり、瞳孔だけが黒く大きく開く。
「狂乱状態!」
「ブモォォォォオオオオオオオ!」
牛頭が突進してきた。
一瞬の判断で大鎚でガードの構えを取る。
その大鎚に刺又が衝突した。
大鎚ごと僕の体が押され、加重が効いた右足が最後の壁となって僕を支える。
ビキビキ! とアイスアーマーから音が出た。
まずいと思ってすぐに加重を切った。
突然抵抗がなくなって、跳ね飛ばされる僕の身体。
何とか姿勢制御して着地するが、牛頭の衝突を受け止めたとき、大鎚の柄が当たったせいかアイスアーマーの胸部にヒビが出来ていた。
受け止めることが出来ない。
全て避けるか、受け流すか、叩き落とすか・・・やるしかない!
「ゴァァァァァアアアアアア!」
「うぉぉぉぉぉおおおおおお!」
牛頭が刺又を振り下ろす。
僕が大鎚を横から振って打ち払う。
牛頭が力任せにそこから刺又を切り上げる。
横に避けると衝撃波が通っていった。
後ろに下がっていたらあれが当たっていたのか。
さらに牛頭は、刺又を横一線に振ってきた。
僕はそれに合わせて下から大鎚を振って刺又を叩き上げた。
「まだまだ!」
振る振る、避ける、振る振る打ち落とす、避ける避ける、叩きつける。
地面に刺又が刺さった。
牛頭の行動が少しだけ遅い。
それを牛頭が抜くのと同時に僕が再度大鎚で叩いて刺した。
「抜けせるか!」
武器を失えば、その分僕にアドバンテージができる!
尚も乱打して刺又がそう簡単には抜けないとこまで埋めて、僕は回転して大鎚を大きく振りかぶった。
牛頭への直接攻撃。
このチャンスは逃せない!
牛頭は刺又から手を離した。
狂乱状態でも分かるぐらい抜けないのだろう。
「食らええええええ!」
上段から振り下ろした大鎚が、ついに牛頭の右肩を打った。
しっかりとした手応えを感じ、口元が緩んだ。
「ブォォォオオオオオオ!」
緩んだせいか、僕は牛頭の左拳を避けることが出来なかった。
「ぐぁああ!」
右ショルダーガードが砕け飛び、胸部の右側もほとんどが砕かれながら僕の身体は飛ばされて地面を転がった。
またも僕の装備の中に熱気が入ってくる。
これ以上、アイスアーマーが砕かれるのはまずい!
すぐに立ち上がって荒く息をする。
馬頭の力を失って垂れた頭を憎々しく睨む。
あいつが変な術で使ったせいで、僕の生命力吸収が効かない状態だ。
いや・・・実際は効いているのだが、馬頭が全部受けて牛頭を守っていると言った方が正しいのだろう。
・・・何だよそれ。
卑怯だろ・・・一体になっているのにスキルを防いでいるって・・・。
・・・スキルを切ったらどうなるんだ?
正面にいる牛頭が刺又を投げるために状態を逸らした。
手加減のない一撃が僕に飛んでくる。
速度も今までの比じゃないだろう。
「賭けだ」
僕はスキルを・・・切った。
ズドォォォォォン!
大きな音を立てて刺又が地面に突き刺さり、牛頭・・・いやこの場合馬頭の方なのだろう。
「な・・・何が!?」
「ブォォ! ブォォォオオオオオオ!」
状況が掴めず混乱している馬頭と横で狂乱している牛頭。
僕は大鎚を牛頭に向けて振り下ろした。
「き、貴様は!」
「ようやく起きた? でももう終わりだ! 二頭同体は攻略できた!」
「ブォォオオ!」
再度牛頭の頭に大鎚を振り下ろす!
直撃を2度食らって、流石に無傷とはいかなかったのか、耳と目から血が溢れ出た。
「させん!」
「それこそさせない!」
立ちあがろうとした馬頭に再度生命力吸収を使うと、突然身体のコントロール権を戻した狂乱状態の牛頭が対応できずに膝をつく。
「まだまだ! ここで終わらせる!」
もうこいつらに攻撃はさせない!
大鎚を振り回し、何度もスキルをオンオフしながら牛頭の頭を叩き続ける。
「はぁ・・・はぁ・・・」
何度繰り返したか分からないが、ようやく動かなくなった牛頭がこっちを見ていた。
「うぬ・・・俺の負けか・・・」
「ああ、お前の負けだ!」
「すまんな・・・馬頭」
「・・・」
「馬頭は喋れないぞ」
「グフフ・・・締まらないな・・・やってくれ」
大鎚を振り下ろす。
今度は牛頭だけではなく馬頭にも振り下ろす。
そして、体力が尽きる前に牛頭と馬頭は光に変わっていった。
残ったのは二つがくっついた虹色の魔石。
僕はそれを拾い上げて、一度木下たちの元へ戻った。
流石にこれからボスとの連戦は出来ない。
アイスアーマーも直してもらって体力と気力を戻してから挑もう。
・・・木下も一回殴らないと。
それらは互いに負けず、撃ち合ったと同時に相手を弾く。
武器があること・・・それがこんなにも頼もしく感じることができるとは、カケラも思ったことがなかった。
「うぉぉおおおおらぁぁあああ!」
大鎚の柄を長く伸ばして、攻撃を妨げようとする刺又を掻い潜り右膝の内側を撃ち抜く。
「ごぉぉぉらららららああああ!」
牛頭の刺又の突きが、僕の右ショルダーガードを貫く。
体感温度が少し上がった気がする。
だけどまだ耐えれる。
大鎚を振り回しながら移動して右肩を狙って振り下ろす。
牛頭は左手の刺又でそれを受け止めた。
一度距離を取るために下がると、牛頭が大きく一歩を踏み出して右手の刺又を投げてきた。
大鎚でそれを受け止める。勢いでさらに下がることができた。
もう一つ欲張って刺又を掴もうとしたが、僕が手を出した時には既にそこになく、僕の手は空を掴む。
・・・速い。
振る速度、突く速度、引く速度、投げる速度全てが速い。
それが全て腕の力だけで行われていることに、恐怖と安心を感じていた。
こいつは、ポテンシャルだけがあるモンスターなのだ。
僕のフェイントにもかかるし、攻撃も狙いがわかりやすい。
前提条件として身体強化のスキルと支配クラスのスキルからの加護のような付与が必須という無理難題があるわけだが、それでも、こいつが達人クラスじゃなくてよかった。
「本来ならその隙間を馬頭が埋めていたんだろうな」
「何の隙間だ!?」
牛頭が2本の刺又を大きく振り下ろすと、衝撃波が地面を抉りながら向かってきた。
だが、これも刺又を振りかぶった時に読めている。
余裕を持って避けて、万が一にもスキル範囲から出ないように大鎚を振り回す。
それを今度は牛頭が刺又で打ち払う。
2本持っているため、上下見境無く攻撃しているのに全て受け止められた。
一思いに、と思って一度回転して、勢いつけてヘッドを巨大化させる。
「いけぇぇぇぇ!」
「ふんぬ!」
牛頭は二つの刺又を一緒に両手で握ってそれを受け止めた。
ゴガァン! と凄く大きな音が響いた。
炎の大鎚は僕には長い棒ぐらいの重量しか感じないが、かなり頑丈で遠心力をつけると、それなりに攻撃力が出るようだ。
後は、僕か牛頭の体力がいつ尽きるか・・・。
「ぐふ・・」
牛頭の口から笑いが溢れた。
「何が可笑しい!」
「あ、すまんな。あまりにも戦いが楽しすぎて笑ってしまった」
「・・・戦いが?」
「ああ、凄く楽しい。生きている実感を覚える。貴様はそうは思わないのか?」
「思わないね。僕は戦うことが怖い。死に1番近い場所で踊る趣味は持ち合わせていないんだ。いつ死ぬかも分からない戦いが楽しいとか・・・人間でそんなことを思う奴がいたらそいつは狂ってるよ」
「そうか・・・それは残念だ!」
牛頭が大鎚を押し返し、僕は次に来るだろう攻撃に備える。
だが、牛頭は攻撃せずに穏やかに微笑んで2本の刺又を1本の刺又へと変化させた。
「残念だ」
「・・・何がだ」
「この血肉が踊るような戦いが終わることが」
「もう勝った気でいるのか?」
「そうじゃない・・・スキルが発動した」
刺又のオーラが牛頭馬頭を包む。
「このスキルは俺の意識を失わせる。次俺が気づくときは、お前が死んでいるか、俺が死ぬ寸前かだ」
牛頭馬頭の筋肉が異常なほど動き始めて、全身の血管が浮き出た。
・・・冗談だろ・・・。
「ああ、残念だ。本当に残念だ。・・・残念・・・だ」
牛頭の目が真っ赤に染まり、瞳孔だけが黒く大きく開く。
「狂乱状態!」
「ブモォォォォオオオオオオオ!」
牛頭が突進してきた。
一瞬の判断で大鎚でガードの構えを取る。
その大鎚に刺又が衝突した。
大鎚ごと僕の体が押され、加重が効いた右足が最後の壁となって僕を支える。
ビキビキ! とアイスアーマーから音が出た。
まずいと思ってすぐに加重を切った。
突然抵抗がなくなって、跳ね飛ばされる僕の身体。
何とか姿勢制御して着地するが、牛頭の衝突を受け止めたとき、大鎚の柄が当たったせいかアイスアーマーの胸部にヒビが出来ていた。
受け止めることが出来ない。
全て避けるか、受け流すか、叩き落とすか・・・やるしかない!
「ゴァァァァァアアアアアア!」
「うぉぉぉぉぉおおおおおお!」
牛頭が刺又を振り下ろす。
僕が大鎚を横から振って打ち払う。
牛頭が力任せにそこから刺又を切り上げる。
横に避けると衝撃波が通っていった。
後ろに下がっていたらあれが当たっていたのか。
さらに牛頭は、刺又を横一線に振ってきた。
僕はそれに合わせて下から大鎚を振って刺又を叩き上げた。
「まだまだ!」
振る振る、避ける、振る振る打ち落とす、避ける避ける、叩きつける。
地面に刺又が刺さった。
牛頭の行動が少しだけ遅い。
それを牛頭が抜くのと同時に僕が再度大鎚で叩いて刺した。
「抜けせるか!」
武器を失えば、その分僕にアドバンテージができる!
尚も乱打して刺又がそう簡単には抜けないとこまで埋めて、僕は回転して大鎚を大きく振りかぶった。
牛頭への直接攻撃。
このチャンスは逃せない!
牛頭は刺又から手を離した。
狂乱状態でも分かるぐらい抜けないのだろう。
「食らええええええ!」
上段から振り下ろした大鎚が、ついに牛頭の右肩を打った。
しっかりとした手応えを感じ、口元が緩んだ。
「ブォォォオオオオオオ!」
緩んだせいか、僕は牛頭の左拳を避けることが出来なかった。
「ぐぁああ!」
右ショルダーガードが砕け飛び、胸部の右側もほとんどが砕かれながら僕の身体は飛ばされて地面を転がった。
またも僕の装備の中に熱気が入ってくる。
これ以上、アイスアーマーが砕かれるのはまずい!
すぐに立ち上がって荒く息をする。
馬頭の力を失って垂れた頭を憎々しく睨む。
あいつが変な術で使ったせいで、僕の生命力吸収が効かない状態だ。
いや・・・実際は効いているのだが、馬頭が全部受けて牛頭を守っていると言った方が正しいのだろう。
・・・何だよそれ。
卑怯だろ・・・一体になっているのにスキルを防いでいるって・・・。
・・・スキルを切ったらどうなるんだ?
正面にいる牛頭が刺又を投げるために状態を逸らした。
手加減のない一撃が僕に飛んでくる。
速度も今までの比じゃないだろう。
「賭けだ」
僕はスキルを・・・切った。
ズドォォォォォン!
大きな音を立てて刺又が地面に突き刺さり、牛頭・・・いやこの場合馬頭の方なのだろう。
「な・・・何が!?」
「ブォォ! ブォォォオオオオオオ!」
状況が掴めず混乱している馬頭と横で狂乱している牛頭。
僕は大鎚を牛頭に向けて振り下ろした。
「き、貴様は!」
「ようやく起きた? でももう終わりだ! 二頭同体は攻略できた!」
「ブォォオオ!」
再度牛頭の頭に大鎚を振り下ろす!
直撃を2度食らって、流石に無傷とはいかなかったのか、耳と目から血が溢れ出た。
「させん!」
「それこそさせない!」
立ちあがろうとした馬頭に再度生命力吸収を使うと、突然身体のコントロール権を戻した狂乱状態の牛頭が対応できずに膝をつく。
「まだまだ! ここで終わらせる!」
もうこいつらに攻撃はさせない!
大鎚を振り回し、何度もスキルをオンオフしながら牛頭の頭を叩き続ける。
「はぁ・・・はぁ・・・」
何度繰り返したか分からないが、ようやく動かなくなった牛頭がこっちを見ていた。
「うぬ・・・俺の負けか・・・」
「ああ、お前の負けだ!」
「すまんな・・・馬頭」
「・・・」
「馬頭は喋れないぞ」
「グフフ・・・締まらないな・・・やってくれ」
大鎚を振り下ろす。
今度は牛頭だけではなく馬頭にも振り下ろす。
そして、体力が尽きる前に牛頭と馬頭は光に変わっていった。
残ったのは二つがくっついた虹色の魔石。
僕はそれを拾い上げて、一度木下たちの元へ戻った。
流石にこれからボスとの連戦は出来ない。
アイスアーマーも直してもらって体力と気力を戻してから挑もう。
・・・木下も一回殴らないと。
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