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ドラゴン来襲編
警察庁再び
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東京都に戻ってきた。
ここでのやる事は決まっていて、気持ちが落ちてしまう。
霞ヶ関の警察庁の前でタクシーから降りて、浜田さんと2人揃って地下の会議室に入った。
室内には既に数名の人がいて、入ってきた僕たちに目を向ける。
そこには鬼木さんや宮地さんも座っているが、知らない顔も何人かいた。
「瀬尾くんはこっちに座って。・・・ちょっと今回は洒落にならないから」
鬼木さんが自分の隣を指差す。
僕はおとなしくそこに座り、その横に浜田さんが座った。
僕の後ろに、離れて座っていた鬼教官が座る。
囲まれた?
・・・いや、僕を守るためだ。
「あと、来てないのは誰?」
「警察からはみんな来ている。今回は公安委員長からの直接命令だから、逆らうバカはいない」
「自衛隊からは写楽のメンバーだけが都合がつきませんでした。北、東、中、西の隊長は来ています。東北の金田隊長は福島県のいわき市で災害復旧中です」
「探索者は牧山だけが参加よ。他は来たら迎え撃つスタンスらしいわ」
僕に手を振る女性がいた。
あの人が『水妖精』の牧山薫さんなのだろう。
僕も軽く手を振り返しておく。
「さて、まずは私からだな」
出席している人の中でも、一際眼光が鋭い人が立ち上がった。
「国家公安委員長を務めている松本義史という。この度は、私どもの組織の人間があってはならない事態を起こした。大変申し訳ない」
松本さんが頭を下げるのと同時に、警察関係者が立ち上がって、同じように頭を下げた。
横にいる浜田さんも同じように頭を下げている。
「え、えっと、すみません頭を上げてください」
こうなるかなーっと考えていた通りの事が起きた。
正直やめて欲しかった。
お偉いさんたちに頭を下げられると、何となく戸惑ってしまう。
「今、私を含めた警察に従事している者たち全てに、読心や過去見ができる者たちを集めてチェックを行っている。勿論シングルではなくトリプルチェックで確認中だ」
とんでもない大事になっていた。
いや、確かに大事なのだろう。
なんせ、警察内部の人間が重大事件に関わっているだろう組織と繋がりがあったのだから。
「彼らの動きは追跡出来たんですか?」
「出来なかった。どうしても途切れている時間が存在する。死体からの過去見は、死ぬ瞬間も視てしまうから禁忌とされている。下手すると引きずられるからな」
「そこまではこっちも求めないわ。でも、瀬尾京平のスキルが狙われた事が最も重要よ。奴らが何で生命力吸収を狙ったのか・・・それは分からなかったの?」
「分からない。偶然なのか、狙ったのかも不明だ」
「クソ・・・。マジであの害虫どもが!」
ギリギリと鬼木さんが歯を軋ませる。
「瀬尾くんは知らないと思うけど、昔レア狩りという集団がいたんだよ。そいつらが・・・反神教団の前身で、かつて自衛隊・警察・探索者の超レアアイテムを狙い、殺害していった犯罪集団だ」
浜田さんが眉間に皺を寄せながら教えてくれた。
「ニュースには?」
「なっていない。そんな集団がいるなど、意味なく国民に不安を与える情報だ。彼らも狙っているのは私たちだけで民衆に狙いをつけたりしない」
「・・・待ってください。安部は僕の祖父母を殺しましたよ?」
「確か、スキルが付いたアイテムを強奪された件でしたね」
「超レアアイテムは無かったはずなのに?」
「安部はスキル付きアイテムはそれだけで貴重だと・・・」
「・・・すまないが、その時のアイテムのスキルは覚えているかな?」
初めて見る人が僕に聞いてきた。
「確か、ばーちゃんにあげた料理が上手になるやつと、じーちゃんに腕力上昇のやつ? でも、効果が小さかったと・・・」
「もっと個数あったわよね? 刀はオークションでアクセ2つは日野さんともう1人にあげて・・・4つぐらいなかったかしら?」
「もう・・・覚えてないですね」
そんなことよりも、あいつに対する怒りの方が強くて他が些細なことになってしまっている。
「・・・いや」
一瞬、記憶がつながった。
「そうだ、刀だ!」
土尾さんが持っていた刀!
何処かで見た事があると思っていた!
「鬼木さん! オークションの購入者って追えますか?」
「え? 犯罪が関係するのなら追えるけど、明確な証拠がないと情報開示出来ないわよ?」
「あります! 愛媛県警に防犯カメラありますよね! そこに刀を持った土尾さんか、黒ずくめの映像ないですか!?」
「2人の姿は・・・映っていたはずです」
よっし! と僕は拳を作った。
「まさか、あの刀が使われたの!?」
「はい。土尾さんが買っていたのなら、初日から持っていたはずです。多分あれは僕の腕を切るためだけに渡されたと思います」
「・・・映像データちょうだい。オークションセンターに問い合わせるわ」
鬼木さんと浜田さんが席を立って部屋から出て行く。
空いた席を、城島さんと牧山さんが座った。
牧山さんは座る前に僕にウィンク一つして座った。
ちょっとだけ鬼木さんや莉乃さんにない優雅さを感じた。
「さて、これからの奴らを追い詰める手段についてだ」
後ろから鬼教官が声を上げた。
「まず、何処にいるかが問題だ」
「瀬尾くんと関わりのあるのが阿蘇にいるとか?」
「はい。おそらく安部浩がいます」
「他のメンバーで有名どころは、アイズとファンタジア、透過もいたな。自衛隊の方では誰か他に把握していませんか?」
「北海道で獣神武装を奪った奴がいましたね。あの顔は今でも覚えている」
「鬼くん、我々の世代でもあいつがいたな」
「甲斐か! クソ! 思い出した!」
「・・・甲斐か・・・私も思い出したよ」
結構色々な場所でやらかしているようで、部屋にいるみんながそれぞれ嫌な顔をし始めた。
「今、所有者がいないアイテムとかは大丈夫なんですか?」
僕の質問に宮地さんが頷いた。
「レアスキルが付いたアイテムは、厳重に保管されています。それに、どういう訳か、所有者が死ぬと、超レアスキルのなかには消えてしまうものもいます」
「消えるんですか?」
「はい。一説には、持ち主の魔力と同調するため、それが消えるとスキルも維持できなくなると言われていますが、残るものもいるので不明ですね」
「・・・大罪系は? 蝿の王の加工品で出ちゃったんですよね?」
「あれはヴァチカンに送られました。永久封印されたそうですよ」
海外なら万が一にも大丈夫だろう。
どうやって運んだかは不明だけど、今でも何とかすれば海外に行く事は出来るのか。
「縄文杉からは、超レアスキルは出なかったですから、今回のワイバーンとアイスドラゴンから出ないことを祈るしかないですね」
「出ても信頼できる人に託せばいいのでは?」
「今回の件で、かなり難しくなってしまいましたよ」
宮地さんは、そう言って目を閉じた。
「国家公安委員会に所属するという事は、それだけ信頼されていた証でもある。その人の過去を一から詳らかにして、国家のために活動する・・・はずだったんですけどね」
そんな人が2人も裏切ってしまった。
僕たちの間に暗い空気が流れ、誰からともなく、ふぅーとため息が聞こえた。
話し合いが終わって、僕らは元の活動拠点に戻ることになった。
「瀬尾くんは阿蘇から出ないの?」
「僕の復讐の相手がいるはずですからね。そいつを倒さない限りは移動はなしです」
「ふーん。でも、倒したら何処にでも行けるんでしょ? だったら、これを渡しておくわ」
そう言って、牧山さんは名刺を僕に差し出した。
「私は北海道の釧路湿原をメインにしているの。来る機会があったら連絡ちょうだい」
名刺を受け取ると、彼女は颯爽と歩いて帰って行った。
僕がその後ろ姿を見ていると、隣に鬼木さんが来た。
「瀬尾くんは宮下が好みかと思ってたけど、ああいうのも好きなのかな? 宮下に言ってやろー」
「何でそうなるんですか。ただ、後ろ姿がカッコよかったから見惚れていただけですよ」
「おっ、自白したな。まあ、カッコいいのは確かだけど、当たり前だろうね」
「何でですか?」
僕の質問に、鬼木さんはやれやれと言いたげに首を横に振った。
「彼女、トップモデルよ。テレビでもそれなりに見るし、雑誌の表紙にも何度も出ているんだけどね」
「・・・僕はネットしか」
「ネットニュースにも、それなりに出てるわよ。トップモデルで1級探索者よ? 話題性抜群なはずなんだけどね。何で知らないのかな~」
「暗に情弱って言わなくて結構です。僕も帰りますよ」
「私はちょっと調べ物して、また阿蘇に行くわ。私がいないからって太らないように、天外天のメンバーには言っておいて」
鬼木さんに僕は頷いて、浜田さん、宮地さんの2人と一緒にタクシーに乗り込んだ。
今回のことで、僕はしばらく単独行動が禁止となった。
ダンジョンに入る時も誰かと一緒じゃないといけなくなり、不自由な日々が続くことになる。
一緒に行動するのは、主に浜田さんや宮地さん、そして天外天のメンバーになるだろうが、窮屈なことになりそうだ。
ここでのやる事は決まっていて、気持ちが落ちてしまう。
霞ヶ関の警察庁の前でタクシーから降りて、浜田さんと2人揃って地下の会議室に入った。
室内には既に数名の人がいて、入ってきた僕たちに目を向ける。
そこには鬼木さんや宮地さんも座っているが、知らない顔も何人かいた。
「瀬尾くんはこっちに座って。・・・ちょっと今回は洒落にならないから」
鬼木さんが自分の隣を指差す。
僕はおとなしくそこに座り、その横に浜田さんが座った。
僕の後ろに、離れて座っていた鬼教官が座る。
囲まれた?
・・・いや、僕を守るためだ。
「あと、来てないのは誰?」
「警察からはみんな来ている。今回は公安委員長からの直接命令だから、逆らうバカはいない」
「自衛隊からは写楽のメンバーだけが都合がつきませんでした。北、東、中、西の隊長は来ています。東北の金田隊長は福島県のいわき市で災害復旧中です」
「探索者は牧山だけが参加よ。他は来たら迎え撃つスタンスらしいわ」
僕に手を振る女性がいた。
あの人が『水妖精』の牧山薫さんなのだろう。
僕も軽く手を振り返しておく。
「さて、まずは私からだな」
出席している人の中でも、一際眼光が鋭い人が立ち上がった。
「国家公安委員長を務めている松本義史という。この度は、私どもの組織の人間があってはならない事態を起こした。大変申し訳ない」
松本さんが頭を下げるのと同時に、警察関係者が立ち上がって、同じように頭を下げた。
横にいる浜田さんも同じように頭を下げている。
「え、えっと、すみません頭を上げてください」
こうなるかなーっと考えていた通りの事が起きた。
正直やめて欲しかった。
お偉いさんたちに頭を下げられると、何となく戸惑ってしまう。
「今、私を含めた警察に従事している者たち全てに、読心や過去見ができる者たちを集めてチェックを行っている。勿論シングルではなくトリプルチェックで確認中だ」
とんでもない大事になっていた。
いや、確かに大事なのだろう。
なんせ、警察内部の人間が重大事件に関わっているだろう組織と繋がりがあったのだから。
「彼らの動きは追跡出来たんですか?」
「出来なかった。どうしても途切れている時間が存在する。死体からの過去見は、死ぬ瞬間も視てしまうから禁忌とされている。下手すると引きずられるからな」
「そこまではこっちも求めないわ。でも、瀬尾京平のスキルが狙われた事が最も重要よ。奴らが何で生命力吸収を狙ったのか・・・それは分からなかったの?」
「分からない。偶然なのか、狙ったのかも不明だ」
「クソ・・・。マジであの害虫どもが!」
ギリギリと鬼木さんが歯を軋ませる。
「瀬尾くんは知らないと思うけど、昔レア狩りという集団がいたんだよ。そいつらが・・・反神教団の前身で、かつて自衛隊・警察・探索者の超レアアイテムを狙い、殺害していった犯罪集団だ」
浜田さんが眉間に皺を寄せながら教えてくれた。
「ニュースには?」
「なっていない。そんな集団がいるなど、意味なく国民に不安を与える情報だ。彼らも狙っているのは私たちだけで民衆に狙いをつけたりしない」
「・・・待ってください。安部は僕の祖父母を殺しましたよ?」
「確か、スキルが付いたアイテムを強奪された件でしたね」
「超レアアイテムは無かったはずなのに?」
「安部はスキル付きアイテムはそれだけで貴重だと・・・」
「・・・すまないが、その時のアイテムのスキルは覚えているかな?」
初めて見る人が僕に聞いてきた。
「確か、ばーちゃんにあげた料理が上手になるやつと、じーちゃんに腕力上昇のやつ? でも、効果が小さかったと・・・」
「もっと個数あったわよね? 刀はオークションでアクセ2つは日野さんともう1人にあげて・・・4つぐらいなかったかしら?」
「もう・・・覚えてないですね」
そんなことよりも、あいつに対する怒りの方が強くて他が些細なことになってしまっている。
「・・・いや」
一瞬、記憶がつながった。
「そうだ、刀だ!」
土尾さんが持っていた刀!
何処かで見た事があると思っていた!
「鬼木さん! オークションの購入者って追えますか?」
「え? 犯罪が関係するのなら追えるけど、明確な証拠がないと情報開示出来ないわよ?」
「あります! 愛媛県警に防犯カメラありますよね! そこに刀を持った土尾さんか、黒ずくめの映像ないですか!?」
「2人の姿は・・・映っていたはずです」
よっし! と僕は拳を作った。
「まさか、あの刀が使われたの!?」
「はい。土尾さんが買っていたのなら、初日から持っていたはずです。多分あれは僕の腕を切るためだけに渡されたと思います」
「・・・映像データちょうだい。オークションセンターに問い合わせるわ」
鬼木さんと浜田さんが席を立って部屋から出て行く。
空いた席を、城島さんと牧山さんが座った。
牧山さんは座る前に僕にウィンク一つして座った。
ちょっとだけ鬼木さんや莉乃さんにない優雅さを感じた。
「さて、これからの奴らを追い詰める手段についてだ」
後ろから鬼教官が声を上げた。
「まず、何処にいるかが問題だ」
「瀬尾くんと関わりのあるのが阿蘇にいるとか?」
「はい。おそらく安部浩がいます」
「他のメンバーで有名どころは、アイズとファンタジア、透過もいたな。自衛隊の方では誰か他に把握していませんか?」
「北海道で獣神武装を奪った奴がいましたね。あの顔は今でも覚えている」
「鬼くん、我々の世代でもあいつがいたな」
「甲斐か! クソ! 思い出した!」
「・・・甲斐か・・・私も思い出したよ」
結構色々な場所でやらかしているようで、部屋にいるみんながそれぞれ嫌な顔をし始めた。
「今、所有者がいないアイテムとかは大丈夫なんですか?」
僕の質問に宮地さんが頷いた。
「レアスキルが付いたアイテムは、厳重に保管されています。それに、どういう訳か、所有者が死ぬと、超レアスキルのなかには消えてしまうものもいます」
「消えるんですか?」
「はい。一説には、持ち主の魔力と同調するため、それが消えるとスキルも維持できなくなると言われていますが、残るものもいるので不明ですね」
「・・・大罪系は? 蝿の王の加工品で出ちゃったんですよね?」
「あれはヴァチカンに送られました。永久封印されたそうですよ」
海外なら万が一にも大丈夫だろう。
どうやって運んだかは不明だけど、今でも何とかすれば海外に行く事は出来るのか。
「縄文杉からは、超レアスキルは出なかったですから、今回のワイバーンとアイスドラゴンから出ないことを祈るしかないですね」
「出ても信頼できる人に託せばいいのでは?」
「今回の件で、かなり難しくなってしまいましたよ」
宮地さんは、そう言って目を閉じた。
「国家公安委員会に所属するという事は、それだけ信頼されていた証でもある。その人の過去を一から詳らかにして、国家のために活動する・・・はずだったんですけどね」
そんな人が2人も裏切ってしまった。
僕たちの間に暗い空気が流れ、誰からともなく、ふぅーとため息が聞こえた。
話し合いが終わって、僕らは元の活動拠点に戻ることになった。
「瀬尾くんは阿蘇から出ないの?」
「僕の復讐の相手がいるはずですからね。そいつを倒さない限りは移動はなしです」
「ふーん。でも、倒したら何処にでも行けるんでしょ? だったら、これを渡しておくわ」
そう言って、牧山さんは名刺を僕に差し出した。
「私は北海道の釧路湿原をメインにしているの。来る機会があったら連絡ちょうだい」
名刺を受け取ると、彼女は颯爽と歩いて帰って行った。
僕がその後ろ姿を見ていると、隣に鬼木さんが来た。
「瀬尾くんは宮下が好みかと思ってたけど、ああいうのも好きなのかな? 宮下に言ってやろー」
「何でそうなるんですか。ただ、後ろ姿がカッコよかったから見惚れていただけですよ」
「おっ、自白したな。まあ、カッコいいのは確かだけど、当たり前だろうね」
「何でですか?」
僕の質問に、鬼木さんはやれやれと言いたげに首を横に振った。
「彼女、トップモデルよ。テレビでもそれなりに見るし、雑誌の表紙にも何度も出ているんだけどね」
「・・・僕はネットしか」
「ネットニュースにも、それなりに出てるわよ。トップモデルで1級探索者よ? 話題性抜群なはずなんだけどね。何で知らないのかな~」
「暗に情弱って言わなくて結構です。僕も帰りますよ」
「私はちょっと調べ物して、また阿蘇に行くわ。私がいないからって太らないように、天外天のメンバーには言っておいて」
鬼木さんに僕は頷いて、浜田さん、宮地さんの2人と一緒にタクシーに乗り込んだ。
今回のことで、僕はしばらく単独行動が禁止となった。
ダンジョンに入る時も誰かと一緒じゃないといけなくなり、不自由な日々が続くことになる。
一緒に行動するのは、主に浜田さんや宮地さん、そして天外天のメンバーになるだろうが、窮屈なことになりそうだ。
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