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阿蘇灼熱ダンジョン編
ウザい彼女へ伝える言葉
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全受付(女性)を温泉に連れて行く仕事が終わった。
普通にダンジョンを往復しただけなのに、ドッと疲れた。
そのおかげか、受付が笑顔であふれている。
女性探索者とも和かに会話していて、ホッと一安心した。
・・・ちょっと前までの彼女たちの笑顔は見ていられなかったから・・・特に最後の子。
目は笑っているのに歯を食いしばっていたのには恐怖を感じた。
今、阿蘇市の探索者組合では、輝きを放つロングヘアーをサラリと靡かせるのが流行っている。
・・・いい匂いがするのはなぜ?
「ようやくダンジョンアタックが出来るのね」
僕の苦労を理解してくれない天外天のメンバーが、ロビーでたむろしている。
「文句なら支部長に言ってください。受付の悩みなんだから組合の方で処理してくれればよかったのに」
「でもー、安全性を考えて瀬尾くんがってのは理解できるよね。英雄に守られるほど安心なことはないわよー」
「その英雄もやめてください。何だかそれが僕の二つ名になっている気がしますよ。元のやつはどこに行ったんですか?」
「生命強奪者くんは変わってしまったんだよ」
「僕が変わったような言い方やめてください!」
ここ最近、4人の僕への当たりが強い気がする。
「瀬尾様、お時間よろしいでしょうか?」
受付の人が僕を呼びに来た。
「はい。大丈夫です」
「ご注文の品が届きました。確認されますか?」
「あ、来ましたか。一回装備してみたいので更衣室に持って行ってもいいですか?」
「はい、問題ございません。商品も私どもでお持ちします」
そう言って受付に戻り、台車を取り出して荷物を置いて戻ってきた。
「なんか・・・受付の人って瀬尾くんに優しくない?」
「ウンウン。やはり有名になると待遇が変わるのかな?」
「エロい方に行ったり・・・モゲロ」
「瀬尾くん・・・そっか。所詮私は臨時の女だもんね」
「勝手に僕の不名誉な事を捏造しないでください。注文していた冷却装備が届いただけですよ。ちょっと試着してきます」
更衣室に向かおうとすると、後ろで宮下さんが立ち上がった。
「私も見てみたいな!」
「興味はありますね。どこのメーカーの物でしょうか?」
「ヘソだしだったり。エッロ!」
「見るだけならタダよ!」
結局全員で行くことになった。
最初に僕が男性用更衣室に入って、続いて宮下さん、高城さん、麻生さん、植木さんの順で入ってくる。
「オイコラ、何しれっと男子更衣室に入ろうとしている」
「私たちの仲じゃない」
「流れで」
「何となく」
「エロ禁止で」
「出てけ!」
装備を受け取って4人を追い出す。
装備を広げるとパンツとシャツとヘッドの3つに分かれた物が出てきた。
冷却装置が付いている箇所が5箇所。
首裏、肩甲骨、太ももで、胸に循環器が設置されている。
今は管が分かれているが、着用たら頭と腰の管を胸の循環器に取り付けたら完成だ。
「予備の魔石も・・・あるな。新品D級で10時間稼働か・・・。カッティングされている魔石だと2日間。今のはカッティングされてるな。B級は外接のバッテリーを買えば付けれるな。これなら長時間探索も可能か」
動きを確認して管や装置が当たらない事を確認していい買い物をしたと思い微笑む。
「良さげ?」
「ええ、長時間潜れそうですよ」
「何日ぐらいいることになるかな?」
「外接のバッテリーを持っていれば、狩って手に入る魔石で熱さにやられることはないので3日はいたいですね。ただ、一つ問題があるんですよ」
「え? 結構重大?」
「僕にとってはですね・・・何で入ってきてるんですか? 宮下さん」
彼女の顔面を掴んで身体強化のアイアンクローをした。
「痛い痛い! ジョークジョーーーク! ちょっとみただけ!」
「どこから見てたんですか?」
「服を脱ぐところから?」
「全部じゃねーか!」
「ノーーーーーーーーー!!」
宮下さんを再度叩き出して、冷却装備の上にいつもの装備を着て感触を確かめる。
やはり、ちょっとキツくなった。
動きや装置が邪魔にはなっていないので何とかなりそう。
装備を脱いで、全部組合に預けた。
冷却もしっかり稼働して、最後は現地で確認するしかないが、今のところ問題ない。
ロビーに戻るとパソコン室が全席埋まっていた。
「瀬尾くんが冷却装備を購入したことが噂になったみたい」
「無駄に踊らされてますね。あの人たちは火口ダンジョンに入れるほど強いのかな?」
「ファイアバードの巣を抜けれるのは、私が知る限り瀬尾さんだけですね」
「化け物クラスのスキルを持ってないと、あの中に突っ込めない。そんな勇気出ないよ」
まるで僕が生命力吸収頼りの探索者だと思われる可能性がある言い方だが、突進してきたファイアバードが生命力を抜かれたかと言って、突っ込んでくる速度が無くなるわけがない。
そういうのを回避できる体術ぐらいは習得している。
「みなさんは冷却装備の動作確認は、当然しましたよね?」
僕の質問にみんな頷く。
流石3級。
自分の命を守る物に関しては余念がない。
「ペルチェ製の冷却装備だから、問題はないわよ」
「奮発しましたね。あのメーカーはひとセット最低300万でしたよね」
「5箇所冷却で500万だけど、4人注文で割引してもらったわ。みんな23回払い以内で何とかできたからよかったわ」
「ローン審査によく通りましたね」
「半額近くを先払いしたのが大きかったみたい。後はパーティの活躍を見込んでだと思う。死なないようにしないとね」
フフフと高城さんがブラックジョークをかましてくる。
探索者の間では不吉になるのでなるべく死という言葉は使わないようにしているのだが、あまり気にしない人のようだ。
「それでは、いつ行きますか?」
僕の言葉に、みんな目を輝かせた。
僕以外、前人未踏の世界に足を踏み入れるのだ。
「明日、朝7時に瀬尾くんが泊まるホテルに集合しましょう。莉乃はどうせ瀬尾くんと泊まるんでしょ?」
「あたり前田のクラッカー」
「瀬尾くん、そういう事だから、遅刻しないように起こしてあげてね」
「・・・なぜみんなそれを良しとしているのか不明ですが、分かりました」
そうして僕たちは、それぞれ預けた物以外の装備を確認し、僕の情報を元に作戦を練っていく。
ホテルに戻る時は、当然のように宮下さんがついてきて、ホテルマンも普通に通す。
止めてもらえないか、微かに期待していた僕の思いは、この時点で砕け散った。
「宮下さんは・・・僕と一緒の部屋で嫌じゃないんですか?」
「え? 何でそう思うのかな?」
「いちよ、男と女なんですけど・・・」
「その点を気にしてくれてるの? 嬉しいな。7歳上だから普通に嫌がられているかと思った」
「宮下さんを嫌に思う人はほとんどいないでしょ。話する人みんな楽しそうじゃないですか」
「それなりにウザ絡みしている自覚あったからねー」
「自覚あったんですか」
「私は楽しいんだけどね。まあ、瀬尾くんは好みだったし、日に日に大人になっていくからどこまでやっていいか測りながらだったけど」
「僕が宮下さんのこと惚れたらどうするつもりなんですか?」
「バッチこーい」
「受け入れ万全かよ!」
あははは! としばらく笑って僕を見つめる。
「まあ、私は瀬尾くんの事情を知っているけど、瀬尾くんは私の事情を知らないからね。まずはそこからかなー」
「名前呼びから始めます?」
「ん? 私を狙ってみるの?」
「・・・ダメなんですか?」
「・・・ちょっとビックリしちゃった。うーん、ちょっと呼び合ってみようか。京平くん」
あまり女性なれしていないことは自覚している。
頑張って動揺しないよう気を引き締めても、それでも、心臓が跳ねた。
「り、莉乃・・・さん」
「・・・初手から呼び捨てでくるかと思った。ちょっと恥ずかしいね」
宮下さんが顔を赤くして頬を掻く。
僕も顔を直視できずに目を逸らす。
「えっと、それじゃ、とりあえず名前呼びから」
「あ、続ける? えっと、予想外の展開だけど、私の事情を知って引かなければ・・・まだ話せないけどね」
「分かった。・・・話してくれるのを待つよ」
「うん、待ってて」
その夜は、宮下さんを気にしてしまい、上手く寝ることが出来なかった。
夜明け前の数時間は寝れたと思うが、結局5時に起きて準備を始めることになった。
「あ、おはよう・・・えっと」
「おはよう、莉乃さん」
なるべく普通に彼女の名前を読んだ。
「・・・うん、京平くん」
普通にダンジョンを往復しただけなのに、ドッと疲れた。
そのおかげか、受付が笑顔であふれている。
女性探索者とも和かに会話していて、ホッと一安心した。
・・・ちょっと前までの彼女たちの笑顔は見ていられなかったから・・・特に最後の子。
目は笑っているのに歯を食いしばっていたのには恐怖を感じた。
今、阿蘇市の探索者組合では、輝きを放つロングヘアーをサラリと靡かせるのが流行っている。
・・・いい匂いがするのはなぜ?
「ようやくダンジョンアタックが出来るのね」
僕の苦労を理解してくれない天外天のメンバーが、ロビーでたむろしている。
「文句なら支部長に言ってください。受付の悩みなんだから組合の方で処理してくれればよかったのに」
「でもー、安全性を考えて瀬尾くんがってのは理解できるよね。英雄に守られるほど安心なことはないわよー」
「その英雄もやめてください。何だかそれが僕の二つ名になっている気がしますよ。元のやつはどこに行ったんですか?」
「生命強奪者くんは変わってしまったんだよ」
「僕が変わったような言い方やめてください!」
ここ最近、4人の僕への当たりが強い気がする。
「瀬尾様、お時間よろしいでしょうか?」
受付の人が僕を呼びに来た。
「はい。大丈夫です」
「ご注文の品が届きました。確認されますか?」
「あ、来ましたか。一回装備してみたいので更衣室に持って行ってもいいですか?」
「はい、問題ございません。商品も私どもでお持ちします」
そう言って受付に戻り、台車を取り出して荷物を置いて戻ってきた。
「なんか・・・受付の人って瀬尾くんに優しくない?」
「ウンウン。やはり有名になると待遇が変わるのかな?」
「エロい方に行ったり・・・モゲロ」
「瀬尾くん・・・そっか。所詮私は臨時の女だもんね」
「勝手に僕の不名誉な事を捏造しないでください。注文していた冷却装備が届いただけですよ。ちょっと試着してきます」
更衣室に向かおうとすると、後ろで宮下さんが立ち上がった。
「私も見てみたいな!」
「興味はありますね。どこのメーカーの物でしょうか?」
「ヘソだしだったり。エッロ!」
「見るだけならタダよ!」
結局全員で行くことになった。
最初に僕が男性用更衣室に入って、続いて宮下さん、高城さん、麻生さん、植木さんの順で入ってくる。
「オイコラ、何しれっと男子更衣室に入ろうとしている」
「私たちの仲じゃない」
「流れで」
「何となく」
「エロ禁止で」
「出てけ!」
装備を受け取って4人を追い出す。
装備を広げるとパンツとシャツとヘッドの3つに分かれた物が出てきた。
冷却装置が付いている箇所が5箇所。
首裏、肩甲骨、太ももで、胸に循環器が設置されている。
今は管が分かれているが、着用たら頭と腰の管を胸の循環器に取り付けたら完成だ。
「予備の魔石も・・・あるな。新品D級で10時間稼働か・・・。カッティングされている魔石だと2日間。今のはカッティングされてるな。B級は外接のバッテリーを買えば付けれるな。これなら長時間探索も可能か」
動きを確認して管や装置が当たらない事を確認していい買い物をしたと思い微笑む。
「良さげ?」
「ええ、長時間潜れそうですよ」
「何日ぐらいいることになるかな?」
「外接のバッテリーを持っていれば、狩って手に入る魔石で熱さにやられることはないので3日はいたいですね。ただ、一つ問題があるんですよ」
「え? 結構重大?」
「僕にとってはですね・・・何で入ってきてるんですか? 宮下さん」
彼女の顔面を掴んで身体強化のアイアンクローをした。
「痛い痛い! ジョークジョーーーク! ちょっとみただけ!」
「どこから見てたんですか?」
「服を脱ぐところから?」
「全部じゃねーか!」
「ノーーーーーーーーー!!」
宮下さんを再度叩き出して、冷却装備の上にいつもの装備を着て感触を確かめる。
やはり、ちょっとキツくなった。
動きや装置が邪魔にはなっていないので何とかなりそう。
装備を脱いで、全部組合に預けた。
冷却もしっかり稼働して、最後は現地で確認するしかないが、今のところ問題ない。
ロビーに戻るとパソコン室が全席埋まっていた。
「瀬尾くんが冷却装備を購入したことが噂になったみたい」
「無駄に踊らされてますね。あの人たちは火口ダンジョンに入れるほど強いのかな?」
「ファイアバードの巣を抜けれるのは、私が知る限り瀬尾さんだけですね」
「化け物クラスのスキルを持ってないと、あの中に突っ込めない。そんな勇気出ないよ」
まるで僕が生命力吸収頼りの探索者だと思われる可能性がある言い方だが、突進してきたファイアバードが生命力を抜かれたかと言って、突っ込んでくる速度が無くなるわけがない。
そういうのを回避できる体術ぐらいは習得している。
「みなさんは冷却装備の動作確認は、当然しましたよね?」
僕の質問にみんな頷く。
流石3級。
自分の命を守る物に関しては余念がない。
「ペルチェ製の冷却装備だから、問題はないわよ」
「奮発しましたね。あのメーカーはひとセット最低300万でしたよね」
「5箇所冷却で500万だけど、4人注文で割引してもらったわ。みんな23回払い以内で何とかできたからよかったわ」
「ローン審査によく通りましたね」
「半額近くを先払いしたのが大きかったみたい。後はパーティの活躍を見込んでだと思う。死なないようにしないとね」
フフフと高城さんがブラックジョークをかましてくる。
探索者の間では不吉になるのでなるべく死という言葉は使わないようにしているのだが、あまり気にしない人のようだ。
「それでは、いつ行きますか?」
僕の言葉に、みんな目を輝かせた。
僕以外、前人未踏の世界に足を踏み入れるのだ。
「明日、朝7時に瀬尾くんが泊まるホテルに集合しましょう。莉乃はどうせ瀬尾くんと泊まるんでしょ?」
「あたり前田のクラッカー」
「瀬尾くん、そういう事だから、遅刻しないように起こしてあげてね」
「・・・なぜみんなそれを良しとしているのか不明ですが、分かりました」
そうして僕たちは、それぞれ預けた物以外の装備を確認し、僕の情報を元に作戦を練っていく。
ホテルに戻る時は、当然のように宮下さんがついてきて、ホテルマンも普通に通す。
止めてもらえないか、微かに期待していた僕の思いは、この時点で砕け散った。
「宮下さんは・・・僕と一緒の部屋で嫌じゃないんですか?」
「え? 何でそう思うのかな?」
「いちよ、男と女なんですけど・・・」
「その点を気にしてくれてるの? 嬉しいな。7歳上だから普通に嫌がられているかと思った」
「宮下さんを嫌に思う人はほとんどいないでしょ。話する人みんな楽しそうじゃないですか」
「それなりにウザ絡みしている自覚あったからねー」
「自覚あったんですか」
「私は楽しいんだけどね。まあ、瀬尾くんは好みだったし、日に日に大人になっていくからどこまでやっていいか測りながらだったけど」
「僕が宮下さんのこと惚れたらどうするつもりなんですか?」
「バッチこーい」
「受け入れ万全かよ!」
あははは! としばらく笑って僕を見つめる。
「まあ、私は瀬尾くんの事情を知っているけど、瀬尾くんは私の事情を知らないからね。まずはそこからかなー」
「名前呼びから始めます?」
「ん? 私を狙ってみるの?」
「・・・ダメなんですか?」
「・・・ちょっとビックリしちゃった。うーん、ちょっと呼び合ってみようか。京平くん」
あまり女性なれしていないことは自覚している。
頑張って動揺しないよう気を引き締めても、それでも、心臓が跳ねた。
「り、莉乃・・・さん」
「・・・初手から呼び捨てでくるかと思った。ちょっと恥ずかしいね」
宮下さんが顔を赤くして頬を掻く。
僕も顔を直視できずに目を逸らす。
「えっと、それじゃ、とりあえず名前呼びから」
「あ、続ける? えっと、予想外の展開だけど、私の事情を知って引かなければ・・・まだ話せないけどね」
「分かった。・・・話してくれるのを待つよ」
「うん、待ってて」
その夜は、宮下さんを気にしてしまい、上手く寝ることが出来なかった。
夜明け前の数時間は寝れたと思うが、結局5時に起きて準備を始めることになった。
「あ、おはよう・・・えっと」
「おはよう、莉乃さん」
なるべく普通に彼女の名前を読んだ。
「・・・うん、京平くん」
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