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第二章 聖サファイア

【Side】 エトランジュ ~再会~

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「エトランジュ! 今日は? たまには公園で息抜きしようよ」

 聖サファイアに留学して二か月。
 最近では、すっかり仲よくなった翡翠様が、よく、誘いにきて下さるの。
 留学と言っても学校に通うというよりは、光の聖女として、光の使徒の力を発現させる訓練が主で、時間割のようなものもなくて、候補生の判断で自律的に動くの。
 だから、翡翠様が仰っているのは、平たく言えば「一緒にサボろうよ」ということね。
 明日からは礼儀作法や教養を教えて下さる教官が何人か新たに赴任されるみたいで、授業が増えるの。
 翡翠様は、だから、サボるなら今のうちだよって言いたいみたい。

「ごめんなさい、翡翠様。今日は金華様と蒼紫様から、必ず訪ねるように言われていて」
「そっかぁ。明日から、新しい教官が来るからだろうね」

 残念そうに言った翡翠様が、くすくす笑った。

「金華様を先にした方がいいよ。金華様はきっと、光の聖女たるもの完璧な礼儀作法と教養を身に着けねばならないとか、堅苦しいお話をなさると思うけど。蒼紫様なら、そんなもの、適当にサボればいいって言って下さるもの」

 私も、つい微笑んでしまいながら、うなずいたの。
 ひとくくりに光の使徒様と言っても、司る力もそれぞれ、性格もそれぞれ、すごく個性的なの。
 金華様は真面目で厳しい方だけど、蒼紫様はなんていうのかしら、あまりやる気がないの。
 だから、叱咤激励はほとんどなさらなくて。
 翡翠様も蒼紫様も、方向性は違うんだけど、一緒にいて安心できるの。

「ねぇねぇ、エトランジュ。じゃあ、次の週末の予定は?」
「あいています」
「やった! じゃあ、一緒に森の湖に行こうよ。公園の方がいい?」

 その時、窓の外から天馬のいななきが聞こえて、涼やかな風が吹き抜けていった。

「新しい教官が到着したみたいだね。明日には紹介してもらえるよ」

 何気なく、窓の外に目を向けた私は息をのんだの。
 教官のうち二人が、ルーカスとガゼル様だったから。


  **――*――**


「ガゼル様!」
「エトランジュ!」

 外に出たら、ガゼル様が笑顔で手を差し伸べて下さって、私、すごく嬉しかった。
 なのに、その手を取る前にルーカスが割り込んだの。超やっぱり。

「エトランジュ、会いたかった!」

 オレの胸に飛び込んで来い、のポーズでルーカスが言ったけど。

 ……私、ルーカスにはあんまり会いたくなかった。
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