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番外編
しっぽり温泉デート 後編
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たっぷりと新鮮な空気を吸い込んで肺に入れると、思っていた以上に冷たかった。
ふぅっと吐き出すと白く変わるので、それが楽しくて紅葉を見ながら一人で遊んでしまった。
自然が豊かなところに来るのは、君塚の本家を訪ねて以来で、やっぱり落ち着くなと思った。
俺は一人、老舗ホテル自慢の紅葉が楽しめる庭に用意された椅子に座っている。
誰もいないと思うと気が緩んで足をぶらぶらさせてしまったが、履いていた草履が飛んでいって、何をやっているんだと笑ってしまった。
いいのだ。
旅行というのは、気持ちが大きくなっているから、こんな失敗くらい何でもないと思える。
都会だと気を張り詰めている時間が多いので、たっぷり楽しんで帰るつもりだ。
久々のぽっかり空いた休み、佳純の地方出張に一緒に付いて行き、早朝新幹線乗って温泉で有名な観光地にやってきた。
温泉街で一番の老舗ホテルで、君塚陶器の展示会が行われることになり、佳純はその打ち合わせと現地確認でやって来た。
佳純は到着するなり、すぐに担当者に囲まれて、町の公民館に行ってしまった。
ゆっくりしていてくださいと言われたので、その通り、早速温泉に入って、ホテルの庭を散策してちょっと一休みしているところだ。
付いてきた身なので、佳純の仕事が終わるまでは大人しく待っていようと思っているが、都会の喧騒から離れて、一人でのんびりしていると色々と考えてしまう。
仕事は順調だし、佳純は優しすぎるくらいで、毎日幸せに包まれている。
それでも、日々の忙しさに身を置いていて、考えないようにしていることがある。
「あと少しで、発情期か……」
佳純と結婚してからすでに何度か発情期を迎えた。番を得たことで俺の発情期は安定して、日常生活で苦労することはなくなった。
それはいいことなのだが、ひとつ問題があった。
もともと結婚の条件として、佳純は早く子供が欲しいと言っていた。
それは、前当主で、現在施設で暮らしている佳純の祖母である、珠代氏のためだ。
一時期は危ないと言われていたが、今は体調が安定して、以前より元気になったようにも見える。
寝たきりだったのが、散歩できるくらいに回復した。
しかし時間が限られていることには変わりない。
結婚してからもバタバタしていて、その辺りのことをちゃんと話し合ってはいなかった。
俺は先日、オメガの定期検診で病院を訪れた時のことを思い出していた。
子供のことを医師に確認すると、血液検査でまだ前に飲んでいた薬の成分が残っていると聞かされた。
頻繁に熱を出すほど体調を崩しやすかった俺は、強い抑制剤でないと効果がでなかった。
長い間、強い抑制剤に慣れた体は、薬をやめて自然に発情をしても子供ができる状態には戻っていなかった。
今の状態について、佳純に悲しい顔をさせたらと思うと怖くて話せずにいた。
医師には、いつかは戻ると思うので、ゆっくりと体調を整えていきましょうと言われたが、焦る気持ちだけ残ってしまった。
珠代のことを考えたら、のんびりなんてしていられないのに、自分の体が追いついてこない。
佳純は溢れるくらいの愛情で満たしてくれる。
もちろん、子供のことだけで俺を選んでくれたのではないというのは分かっている。
好きだからこそ応えたい。
仕事の忙しさで気を紛らわせていたが、時々ふと考えてしまい、気持ちばかり焦る日々が続いていた。
「……だめだな。一人で悩んでいないで、ちゃんと子供のこと話してみよう。この旅行がいい機会かもしれない」
よしっと、膝を叩いて立ち上がった。
ずっと飲んでいた薬の影響から抜けられなくて、まだ少し時間がかかるかもしれない。
どうか待っていて欲しい。
この言葉をどうにか伝えて、佳純の気持ちを確かめたい。
砂利道をホテルの草履で踏みしめながら、散歩を終えてロビーへ戻ると、出かける時にはなかったお土産の出店が出ていた。
ちょっと覗いていこうかなと近寄っていくと、店員のおじさんとバチっと目が合ってしまった。
「そこのお兄ちゃん、今日は特別なの揃えているよー」
「これは……地酒ですか?」
「そうそう、全部ここの酒造で作ったもので、数が少なくて市場には出回ってないの。こっちで試飲もできるから、ぜひ試していってよ」
「あ……あの、お酒は……」
飲めないわけではないが、飲むとすぐ赤くなるし酔ってしまう。
断ろうかと思ったが、店員のおじさんの奥に、ホテルの関係者の人達がいて、にこにこと笑いながら頭を下げられてしまった。
ホテルに着いた時に、佳純と一緒に挨拶したので、結構ですと断ってしまったら、印象が悪いかもしれないと考えてしまった。
「少しだけなら……」
「いいねぇ! じゃあこっちに! たくさん用意しているから」
暇そうにしていたので、いいお客が見つかったと、おじさんのエンジンがかかってしまったようだ。
背中を押されて、試飲コーナーに連れて行かれてしまった。
「へぇ、お兄ちゃん、新婚さんなんだね。じゃあ、お祝い。これもどうぞ」
「ありがとうございます。……んっ、甘くて美味しい」
「それは飲みやすくてお勧め。それでこっちは辛口だけど、フルーティーで……」
話し上手なおじさんのおかげで、コップに次々と日本酒を注がれてしまい、少量だけでも飲み続けたら体が熱くなって意識がフワフワし始めた。
これは酔っているなと、頭の中で冷静な自分が止めようとするが、もういいですと口にする前にまたコップ注がれてしまった。
勧められたものはとりあえず全部飲んだ。
とにかく買って終わりにしようとカップに残った酒をぐっと飲み干した。
「あの……、さっきのピンクのやつと、今年の新酒を買い……ます」
「へい、毎度あり。新婚さん祝いで、三本入りをサービスしておくよ。お兄ちゃん、だいぶご機嫌さんみたいだから、後で担当が部屋に届けるからね」
店員のおじさんは、部屋番号を聞いたらさっと伝票に記入して受付の女性に渡した。
やっと解放されると気が抜けたら、ふわふわな感じが高まって、なんだか面白くなってきてしまった。
「ふふふっ……、とっても美味しかったです。ありがとうございますー」
「大丈夫かい? ちょっと飲ませすぎちゃったかな」
フラフラしながら、ロビーの柱に体を預けたら、そこに視察から帰ってきた佳純の姿が見えた。
担当者の人と話しながら、開いたドアから颯爽と現れた。
お酒の勢いもあって、ドキドキしながら佳純の姿を眺めてしまった。
向こうも仕事が終わったのか、受付の前でお辞儀して解散している様子で佳純は一人になった。
腕時計を見ながらくるっと、向きを変えた佳純に向かって声をかけた。
「かすみさーん。お帰りなさい」
「わっ、諒さん!?」
「ほぅ、あの綺麗な兄ちゃんがもしかして……」
驚いた顔になった佳純が、顔を赤くして大きく手を振っている俺を見て、慌てた様子になって近づいてきた。
そこで店員のおじさんが、身を乗り出して話に入ってきたので、ふわふわになっている俺は胸を張って佳純を紹介することにした。
「そうですー、私のダーリンです」
近づいてきた佳純にぎゅっと抱きついた俺は、嬉しくてたまらなくて、佳純の胸に頭を擦り付けた。
「りょ……諒さん。酔って……」
「うーん、ちょっとだけ。かすみー俺のこと置いていってー、寂しかったんだからぁ」
「諒さっ……」
佳純の唇をトントン指で叩いて遊んでいると、店員のおじさんに、熱いねーお幸せにと言われてしまった。
「諒さん、とりあえず、部屋に行きましょう」
足元がフラつくので、佳純に支えられてそのまま部屋に戻ることになった。
いつもみたいに喋りたいのに、酔いで頭が回らなくなって、とにかく話したいことだけポンポンと口から出てきた。
「俺ね、お酒買ったの。帰ったら、佳純と二人で飲むんだ」
「それは嬉しいです。でも、もう外で飲むのはだめですよ。日本酒の試飲でこんなに酔うなんて……」
「……佳純、怒ってる?」
老舗ホテルらしい使い込まれたチンという音が鳴って、エレベーターのドアが開いた。
中には誰も入っておらず、二人でさっと乗り込むと佳純は部屋の階のボタンを押した。
「怒ってます……諒さんが、可愛すぎるから」
そう言った佳純は、いつもより強引に俺を壁に押し付けて唇を奪ってきた。
いつもの柔和な佳純とは違う、荒っぽい男を感じる勢いが嬉しくて、酔いに煽られて一気に興奮した俺は、夢中でその口付けに応えた。
⭐︎
「少し甘い匂いがしていますよ。中もトロトロになってます。発情期が近いですね」
「んっっ……あっ……熱い」
「ここから見える色づいた景色よりも、諒さんが一番赤いですね」
「ああっあ……んんっ!」
「こら、ここは個室ですけど、声が響きますから、少し抑えないとだめですよ」
快感に耐えきれず、奥に感じる佳純をぎゅっと締めるようにして声を上げると、掠れた声になった佳純にだめだと言われてしまった。
そう言われても、こんなに熱くて気持ちいいのだから仕方がない。
そしてこの開放感のある空間に、すっかり酔いは飛んでいったが、いっそう大胆な気持ちになっていた。
部屋に戻ったら、エレベーターでの興奮そのままで、お互いの服を脱がし合って裸になった後、佳純は部屋の奥の障子を開けた。
そこは、檜で作られた部屋用の露天風呂になっていて、俺を抱っこした佳純はそのまま外へ出て風呂の中でキスを再開した。
佳純に触れられてすっかり興奮した俺は、軽い発情期の影響もあり、湯船の中で佳純の上に乗って、自ら後ろ熱くなったモノを挿入した。
動く度に、お湯が入ってくる感覚がたまらない。
目を細めて佳純も気持ち良さそうな顔をしている。
佳純の熱い息を感じたら、もっと興奮してしまい、唇を吸って喘ぎながら腰を揺らした。
「んっ……、はぁ、お酒が入った諒さん……エロ過ぎます。クセになりそうだから、あんまり飲まないでください」
佳純の前で飲むことはあったが、いつも口をつける程度だったなというのを思い出して、俺はふふっと笑ってしまった。
「だいじょうぶ、熱くなるの……佳純の前だけ……んっ、はぁはぁ……」
「そうでいてくれると、助かるのですが……。諒さんは、どんどん魅力的になるので、私の心配は尽きません」
眉をへの字に曲げた佳純は、そう言いながら俺の腰を持って、中をぐりぐりと擦るように揺らしてきた。
「んーーっっ、あっ、あ、そこぉっっ」
「ああ、ここですよね。諒さんの好きなところは、ほら、きゅっと締まった」
「ぜんぶ……すき、かすみぃ、あっ……いっぱい……こすって」
「ふふふっ、やっぱり。可愛すぎてたまらない」
耐えるような顔で笑った佳純は、今まで大人しくしていたのが嘘のように、バシャバシャとお湯の音を立てながら、下から突き上げて俺の良いところをガンガン擦ってくれた。
そんな風に愛されたらたまらない。
俺は嬌声を上げて佳純にしがみついて、ビクビクと腰を揺らした。
「ああああ……ああっああ、い……いく……」
「ええ、私も……はぁ……諒……んんっ」
最後はお互い唇を重ねながら、抱き合って達した。ドクドクと長い佳純の放流を尻の奥に感じると、俺はその度に放ってしまったが、抱き合ったまま離れることなく熱を感じ続けた。
「レストランの方が落ち着いたら、長い休みをとって旅行に行きましょうか。海外でもいいですね。英語は多少話せますから、ガイドはなしで二人きりで行きたいです」
お風呂ですっかりのぼせた俺は、佳純の膝に頭を乗せて寝転んでいた。
お互い旅館の浴衣姿だが、紅葉を見ながら風情を楽しむ場合ではなく、フラフラになった俺は水を大量に飲んだ後、佳純に団扇であおいでもらっている状態だった。
「会社の方は大丈夫ですけど……」
長い休みをとって海外旅行、とっても魅力的な誘いだが、日本を離れて大丈夫なのか心配になってしまった。
「祖母のことですか? 状態は安定していますし、祖母にも自分ことで、制限したり無理に何かをしようなんて考えないで、二人達の生活を楽しみなさいとピシャリと言われてしまいましたから」
「それは……その、に、妊娠のことも……」
「そうです。変な気を回して、諒さんに無理をさせることなんてしたら、社長から降りてもらうと怒られてしまいました」
「珠代さん……そんなことを……」
「私も結婚の条件の時に、早く孫の顔をなどと言って焦らせてしまったので反省しています。ゆっくり、私達のペースで生きていきましょう。私は諒さんがいてくれたら、それだけで十分すぎるほど幸せです」
優しく風を送りながら、俺を見下ろしている佳純は柔らかく微笑んだ。
ずっと胸につかえていた物が、ようやく取れたような気持ちになった。
「実は……、前に飲んでいた薬の影響が強く残っていて、なかなかすぐには難しいかもって……時間がかかるみたい」
「諒さんの体が第一です。それに、一人で抱え込まないでください。今度は病院に私も付き添いますから、一緒に話を聞かせてもらってもいいですか?」
「佳純さ……、も、もちろん」
「よかった。頼りないからダメ! なんて言われたらどうしようかと思っていました」
悪戯っぽく笑った佳純を見て、俺もおかしくなって笑ってしまった。
「ねぇ、諒さん」
「は、はい」
「もう一回、ダーリンって呼んでくれませんか?」
「へ? な、なんの話……」
「あれ? 忘れちゃったんですか? あのロビーで甘えた声と顔で私を見て言ってくれたじゃないですか。あれは……キタ、腰が砕けるかと思いました」
「え……ええっ、そんなことを言いましたっけ?」
酔っていた時の記憶が曖昧で、ロビーでそんな出来事があったなんて覚えていなかった。
ニコニコと微笑んだ佳純が、期待を込めた目で俺を見つめてきた。
酔って迷惑をかけたと思った俺は、佳純の膝から頭を離してむくりと起き上がった。
恥ずかしいので小さい声でしか言えない。
佳純の耳元に口を寄せて、小さく声を上げた。
「ダーリン、もう一回……」
「ううっっ」
よほど嬉しかったのか、顔を手で押さえた佳純は唸るような声を上げた。
「諒さん……それ、意味合いが……」
「えっ、さっきと違いました?」
あっという間に畳に押し倒された俺は、興奮した目つきになった佳純に、唇ごと奪われてしまった。
「………今ので、もう一回、シタくなっちゃいました」
「ええっ!?」
今度はお湯の中ではないが、またのぼせてしまいそうだなと思いながら、深くなる口付けに頭が熱で染まっていくのを感じていた。
◇
帰りの新幹線に乗る前に、駅の売店でお弁当を買おうとしていたら、佳純がアッと声を上げた。
普段大きな声を上げて慌てることなどない人なので、忘れ物でもしたのかと心配になってしまった。
「こ……これは、この表紙は……」
見ると佳純は売店で売られていた雑誌を手に取っていた。
そういえば、先日撮影があった雑誌が今日発売だったことを思い出した。
旅行の準備もあって、最終的なチェックは父に任せていたのだ。
佳純の横に並んで手元を覗き込んでみると、そこには佳純と俺が見つめ合いながら笑っているツーショットがデカデカと表紙になっていた。
今すぐ行きたい! 見ているだけで幸せになっちゃうイケメンのいる店、というキャッチコピーが横に添えられていた。
「あれ……表紙には載らないって聞いていたのに、変わったのかな。ビックリだけど、なかなかよく撮れてる。さすがだなぁ……あれ? 佳純さん?」
出版社の方で気に入ってくれたのか、父がゴリ押ししたのか分からないが、二人で写っているものが表紙なんて記念だなと嬉しくなった。
佳純が無言なので顔を覗き込むと、口をへの字にしてプルプルと顔を震わせていた。
「諒さんの……諒さんの可愛い顔が……全国に……、小さく載るって言ってたのにぃぃぃーーー、私だけの諒さんがぁぁぁーーー!!」
「ちょっ、佳純さん、声が大きい」
佳純はイケメンの顔をくしゃくしゃにして、大きな声を上げて嘆き始めたので、周りの視線を一気に集めてしまった。
丸めてしまいそうな勢いで雑誌を掴んでいるので、とりあえずその雑誌を会計して、佳純の手を引いて売店を後にした。
近くのベンチに二人で座って、雑誌のインタビューのページを確認することにしたが、二人で写っているのは表紙の一枚だけだった。
「佳純さん、私の顔が出たとしても何も変わりませんよ。少しでも客足が増えてくれたらいいなと思うくらいで、逆に足を引っ張ってしまったらって、心配なくらいです」
「足を引っ張るなんて、絶対にないです。むしろ、ファンが押しかけてこないか心配です」
「ふふふっ、ファンなら、佳純さん目当てのお客様が、すでにたくさんいるじゃないですか。今さら写真を見て来た人がいても、変わらないですよ。美味しい食事と楽しい時間を過ごしてもらえばいいじゃないですか」
佳純がどんな想像をしているのか分からないが、宣伝のためなのだから、お客様が増えてくれるのは嬉しいことだと言って笑った。
そんな俺の顔を、佳純はまだ心配でたまらないという目で見ていた。
落ち着いているようで、時々子供のような独占欲を見せてくる佳純が可愛くてしょうがない。
ぽんぽんと頭を撫であげたら、佳純は俺の肩に頭を乗せてきた。
「落ち込んでいます?」
「ちょっとだけ。でも、大人になろうとしています」
誰にも見せたくないなんて、たっぷり愛されたら、ドキドキして嬉しくなってしまう。
大人になれないのは、俺の方だなと思った。
「元気を出して、ダーリン」
ふざけて佳純の鼻を指でツンツンしてみると、ニヤッと笑った佳純は俺の耳に息を吹きかけてきた。
「元気出たよ、ハニー愛してる」
佳純の美声でそんなことを言われたら、ビリビリと肌が痺れて顔が熱くなってしまった。
よく見たら佳純も自分で言ったくせに、照れていて真っ赤になっていた。
二人で目を合わせたら、おかしくなって笑ってしまった。
まもなく訪れる本格的な冬の寒さも、佳純と手を繋いでいれば少しも寒くないと思った。
雪が溶けて、やがて春になるころ
新しい喜びの種が芽吹くまで……
後もう少し……
◆おわり◆
ふぅっと吐き出すと白く変わるので、それが楽しくて紅葉を見ながら一人で遊んでしまった。
自然が豊かなところに来るのは、君塚の本家を訪ねて以来で、やっぱり落ち着くなと思った。
俺は一人、老舗ホテル自慢の紅葉が楽しめる庭に用意された椅子に座っている。
誰もいないと思うと気が緩んで足をぶらぶらさせてしまったが、履いていた草履が飛んでいって、何をやっているんだと笑ってしまった。
いいのだ。
旅行というのは、気持ちが大きくなっているから、こんな失敗くらい何でもないと思える。
都会だと気を張り詰めている時間が多いので、たっぷり楽しんで帰るつもりだ。
久々のぽっかり空いた休み、佳純の地方出張に一緒に付いて行き、早朝新幹線乗って温泉で有名な観光地にやってきた。
温泉街で一番の老舗ホテルで、君塚陶器の展示会が行われることになり、佳純はその打ち合わせと現地確認でやって来た。
佳純は到着するなり、すぐに担当者に囲まれて、町の公民館に行ってしまった。
ゆっくりしていてくださいと言われたので、その通り、早速温泉に入って、ホテルの庭を散策してちょっと一休みしているところだ。
付いてきた身なので、佳純の仕事が終わるまでは大人しく待っていようと思っているが、都会の喧騒から離れて、一人でのんびりしていると色々と考えてしまう。
仕事は順調だし、佳純は優しすぎるくらいで、毎日幸せに包まれている。
それでも、日々の忙しさに身を置いていて、考えないようにしていることがある。
「あと少しで、発情期か……」
佳純と結婚してからすでに何度か発情期を迎えた。番を得たことで俺の発情期は安定して、日常生活で苦労することはなくなった。
それはいいことなのだが、ひとつ問題があった。
もともと結婚の条件として、佳純は早く子供が欲しいと言っていた。
それは、前当主で、現在施設で暮らしている佳純の祖母である、珠代氏のためだ。
一時期は危ないと言われていたが、今は体調が安定して、以前より元気になったようにも見える。
寝たきりだったのが、散歩できるくらいに回復した。
しかし時間が限られていることには変わりない。
結婚してからもバタバタしていて、その辺りのことをちゃんと話し合ってはいなかった。
俺は先日、オメガの定期検診で病院を訪れた時のことを思い出していた。
子供のことを医師に確認すると、血液検査でまだ前に飲んでいた薬の成分が残っていると聞かされた。
頻繁に熱を出すほど体調を崩しやすかった俺は、強い抑制剤でないと効果がでなかった。
長い間、強い抑制剤に慣れた体は、薬をやめて自然に発情をしても子供ができる状態には戻っていなかった。
今の状態について、佳純に悲しい顔をさせたらと思うと怖くて話せずにいた。
医師には、いつかは戻ると思うので、ゆっくりと体調を整えていきましょうと言われたが、焦る気持ちだけ残ってしまった。
珠代のことを考えたら、のんびりなんてしていられないのに、自分の体が追いついてこない。
佳純は溢れるくらいの愛情で満たしてくれる。
もちろん、子供のことだけで俺を選んでくれたのではないというのは分かっている。
好きだからこそ応えたい。
仕事の忙しさで気を紛らわせていたが、時々ふと考えてしまい、気持ちばかり焦る日々が続いていた。
「……だめだな。一人で悩んでいないで、ちゃんと子供のこと話してみよう。この旅行がいい機会かもしれない」
よしっと、膝を叩いて立ち上がった。
ずっと飲んでいた薬の影響から抜けられなくて、まだ少し時間がかかるかもしれない。
どうか待っていて欲しい。
この言葉をどうにか伝えて、佳純の気持ちを確かめたい。
砂利道をホテルの草履で踏みしめながら、散歩を終えてロビーへ戻ると、出かける時にはなかったお土産の出店が出ていた。
ちょっと覗いていこうかなと近寄っていくと、店員のおじさんとバチっと目が合ってしまった。
「そこのお兄ちゃん、今日は特別なの揃えているよー」
「これは……地酒ですか?」
「そうそう、全部ここの酒造で作ったもので、数が少なくて市場には出回ってないの。こっちで試飲もできるから、ぜひ試していってよ」
「あ……あの、お酒は……」
飲めないわけではないが、飲むとすぐ赤くなるし酔ってしまう。
断ろうかと思ったが、店員のおじさんの奥に、ホテルの関係者の人達がいて、にこにこと笑いながら頭を下げられてしまった。
ホテルに着いた時に、佳純と一緒に挨拶したので、結構ですと断ってしまったら、印象が悪いかもしれないと考えてしまった。
「少しだけなら……」
「いいねぇ! じゃあこっちに! たくさん用意しているから」
暇そうにしていたので、いいお客が見つかったと、おじさんのエンジンがかかってしまったようだ。
背中を押されて、試飲コーナーに連れて行かれてしまった。
「へぇ、お兄ちゃん、新婚さんなんだね。じゃあ、お祝い。これもどうぞ」
「ありがとうございます。……んっ、甘くて美味しい」
「それは飲みやすくてお勧め。それでこっちは辛口だけど、フルーティーで……」
話し上手なおじさんのおかげで、コップに次々と日本酒を注がれてしまい、少量だけでも飲み続けたら体が熱くなって意識がフワフワし始めた。
これは酔っているなと、頭の中で冷静な自分が止めようとするが、もういいですと口にする前にまたコップ注がれてしまった。
勧められたものはとりあえず全部飲んだ。
とにかく買って終わりにしようとカップに残った酒をぐっと飲み干した。
「あの……、さっきのピンクのやつと、今年の新酒を買い……ます」
「へい、毎度あり。新婚さん祝いで、三本入りをサービスしておくよ。お兄ちゃん、だいぶご機嫌さんみたいだから、後で担当が部屋に届けるからね」
店員のおじさんは、部屋番号を聞いたらさっと伝票に記入して受付の女性に渡した。
やっと解放されると気が抜けたら、ふわふわな感じが高まって、なんだか面白くなってきてしまった。
「ふふふっ……、とっても美味しかったです。ありがとうございますー」
「大丈夫かい? ちょっと飲ませすぎちゃったかな」
フラフラしながら、ロビーの柱に体を預けたら、そこに視察から帰ってきた佳純の姿が見えた。
担当者の人と話しながら、開いたドアから颯爽と現れた。
お酒の勢いもあって、ドキドキしながら佳純の姿を眺めてしまった。
向こうも仕事が終わったのか、受付の前でお辞儀して解散している様子で佳純は一人になった。
腕時計を見ながらくるっと、向きを変えた佳純に向かって声をかけた。
「かすみさーん。お帰りなさい」
「わっ、諒さん!?」
「ほぅ、あの綺麗な兄ちゃんがもしかして……」
驚いた顔になった佳純が、顔を赤くして大きく手を振っている俺を見て、慌てた様子になって近づいてきた。
そこで店員のおじさんが、身を乗り出して話に入ってきたので、ふわふわになっている俺は胸を張って佳純を紹介することにした。
「そうですー、私のダーリンです」
近づいてきた佳純にぎゅっと抱きついた俺は、嬉しくてたまらなくて、佳純の胸に頭を擦り付けた。
「りょ……諒さん。酔って……」
「うーん、ちょっとだけ。かすみー俺のこと置いていってー、寂しかったんだからぁ」
「諒さっ……」
佳純の唇をトントン指で叩いて遊んでいると、店員のおじさんに、熱いねーお幸せにと言われてしまった。
「諒さん、とりあえず、部屋に行きましょう」
足元がフラつくので、佳純に支えられてそのまま部屋に戻ることになった。
いつもみたいに喋りたいのに、酔いで頭が回らなくなって、とにかく話したいことだけポンポンと口から出てきた。
「俺ね、お酒買ったの。帰ったら、佳純と二人で飲むんだ」
「それは嬉しいです。でも、もう外で飲むのはだめですよ。日本酒の試飲でこんなに酔うなんて……」
「……佳純、怒ってる?」
老舗ホテルらしい使い込まれたチンという音が鳴って、エレベーターのドアが開いた。
中には誰も入っておらず、二人でさっと乗り込むと佳純は部屋の階のボタンを押した。
「怒ってます……諒さんが、可愛すぎるから」
そう言った佳純は、いつもより強引に俺を壁に押し付けて唇を奪ってきた。
いつもの柔和な佳純とは違う、荒っぽい男を感じる勢いが嬉しくて、酔いに煽られて一気に興奮した俺は、夢中でその口付けに応えた。
⭐︎
「少し甘い匂いがしていますよ。中もトロトロになってます。発情期が近いですね」
「んっっ……あっ……熱い」
「ここから見える色づいた景色よりも、諒さんが一番赤いですね」
「ああっあ……んんっ!」
「こら、ここは個室ですけど、声が響きますから、少し抑えないとだめですよ」
快感に耐えきれず、奥に感じる佳純をぎゅっと締めるようにして声を上げると、掠れた声になった佳純にだめだと言われてしまった。
そう言われても、こんなに熱くて気持ちいいのだから仕方がない。
そしてこの開放感のある空間に、すっかり酔いは飛んでいったが、いっそう大胆な気持ちになっていた。
部屋に戻ったら、エレベーターでの興奮そのままで、お互いの服を脱がし合って裸になった後、佳純は部屋の奥の障子を開けた。
そこは、檜で作られた部屋用の露天風呂になっていて、俺を抱っこした佳純はそのまま外へ出て風呂の中でキスを再開した。
佳純に触れられてすっかり興奮した俺は、軽い発情期の影響もあり、湯船の中で佳純の上に乗って、自ら後ろ熱くなったモノを挿入した。
動く度に、お湯が入ってくる感覚がたまらない。
目を細めて佳純も気持ち良さそうな顔をしている。
佳純の熱い息を感じたら、もっと興奮してしまい、唇を吸って喘ぎながら腰を揺らした。
「んっ……、はぁ、お酒が入った諒さん……エロ過ぎます。クセになりそうだから、あんまり飲まないでください」
佳純の前で飲むことはあったが、いつも口をつける程度だったなというのを思い出して、俺はふふっと笑ってしまった。
「だいじょうぶ、熱くなるの……佳純の前だけ……んっ、はぁはぁ……」
「そうでいてくれると、助かるのですが……。諒さんは、どんどん魅力的になるので、私の心配は尽きません」
眉をへの字に曲げた佳純は、そう言いながら俺の腰を持って、中をぐりぐりと擦るように揺らしてきた。
「んーーっっ、あっ、あ、そこぉっっ」
「ああ、ここですよね。諒さんの好きなところは、ほら、きゅっと締まった」
「ぜんぶ……すき、かすみぃ、あっ……いっぱい……こすって」
「ふふふっ、やっぱり。可愛すぎてたまらない」
耐えるような顔で笑った佳純は、今まで大人しくしていたのが嘘のように、バシャバシャとお湯の音を立てながら、下から突き上げて俺の良いところをガンガン擦ってくれた。
そんな風に愛されたらたまらない。
俺は嬌声を上げて佳純にしがみついて、ビクビクと腰を揺らした。
「ああああ……ああっああ、い……いく……」
「ええ、私も……はぁ……諒……んんっ」
最後はお互い唇を重ねながら、抱き合って達した。ドクドクと長い佳純の放流を尻の奥に感じると、俺はその度に放ってしまったが、抱き合ったまま離れることなく熱を感じ続けた。
「レストランの方が落ち着いたら、長い休みをとって旅行に行きましょうか。海外でもいいですね。英語は多少話せますから、ガイドはなしで二人きりで行きたいです」
お風呂ですっかりのぼせた俺は、佳純の膝に頭を乗せて寝転んでいた。
お互い旅館の浴衣姿だが、紅葉を見ながら風情を楽しむ場合ではなく、フラフラになった俺は水を大量に飲んだ後、佳純に団扇であおいでもらっている状態だった。
「会社の方は大丈夫ですけど……」
長い休みをとって海外旅行、とっても魅力的な誘いだが、日本を離れて大丈夫なのか心配になってしまった。
「祖母のことですか? 状態は安定していますし、祖母にも自分ことで、制限したり無理に何かをしようなんて考えないで、二人達の生活を楽しみなさいとピシャリと言われてしまいましたから」
「それは……その、に、妊娠のことも……」
「そうです。変な気を回して、諒さんに無理をさせることなんてしたら、社長から降りてもらうと怒られてしまいました」
「珠代さん……そんなことを……」
「私も結婚の条件の時に、早く孫の顔をなどと言って焦らせてしまったので反省しています。ゆっくり、私達のペースで生きていきましょう。私は諒さんがいてくれたら、それだけで十分すぎるほど幸せです」
優しく風を送りながら、俺を見下ろしている佳純は柔らかく微笑んだ。
ずっと胸につかえていた物が、ようやく取れたような気持ちになった。
「実は……、前に飲んでいた薬の影響が強く残っていて、なかなかすぐには難しいかもって……時間がかかるみたい」
「諒さんの体が第一です。それに、一人で抱え込まないでください。今度は病院に私も付き添いますから、一緒に話を聞かせてもらってもいいですか?」
「佳純さ……、も、もちろん」
「よかった。頼りないからダメ! なんて言われたらどうしようかと思っていました」
悪戯っぽく笑った佳純を見て、俺もおかしくなって笑ってしまった。
「ねぇ、諒さん」
「は、はい」
「もう一回、ダーリンって呼んでくれませんか?」
「へ? な、なんの話……」
「あれ? 忘れちゃったんですか? あのロビーで甘えた声と顔で私を見て言ってくれたじゃないですか。あれは……キタ、腰が砕けるかと思いました」
「え……ええっ、そんなことを言いましたっけ?」
酔っていた時の記憶が曖昧で、ロビーでそんな出来事があったなんて覚えていなかった。
ニコニコと微笑んだ佳純が、期待を込めた目で俺を見つめてきた。
酔って迷惑をかけたと思った俺は、佳純の膝から頭を離してむくりと起き上がった。
恥ずかしいので小さい声でしか言えない。
佳純の耳元に口を寄せて、小さく声を上げた。
「ダーリン、もう一回……」
「ううっっ」
よほど嬉しかったのか、顔を手で押さえた佳純は唸るような声を上げた。
「諒さん……それ、意味合いが……」
「えっ、さっきと違いました?」
あっという間に畳に押し倒された俺は、興奮した目つきになった佳純に、唇ごと奪われてしまった。
「………今ので、もう一回、シタくなっちゃいました」
「ええっ!?」
今度はお湯の中ではないが、またのぼせてしまいそうだなと思いながら、深くなる口付けに頭が熱で染まっていくのを感じていた。
◇
帰りの新幹線に乗る前に、駅の売店でお弁当を買おうとしていたら、佳純がアッと声を上げた。
普段大きな声を上げて慌てることなどない人なので、忘れ物でもしたのかと心配になってしまった。
「こ……これは、この表紙は……」
見ると佳純は売店で売られていた雑誌を手に取っていた。
そういえば、先日撮影があった雑誌が今日発売だったことを思い出した。
旅行の準備もあって、最終的なチェックは父に任せていたのだ。
佳純の横に並んで手元を覗き込んでみると、そこには佳純と俺が見つめ合いながら笑っているツーショットがデカデカと表紙になっていた。
今すぐ行きたい! 見ているだけで幸せになっちゃうイケメンのいる店、というキャッチコピーが横に添えられていた。
「あれ……表紙には載らないって聞いていたのに、変わったのかな。ビックリだけど、なかなかよく撮れてる。さすがだなぁ……あれ? 佳純さん?」
出版社の方で気に入ってくれたのか、父がゴリ押ししたのか分からないが、二人で写っているものが表紙なんて記念だなと嬉しくなった。
佳純が無言なので顔を覗き込むと、口をへの字にしてプルプルと顔を震わせていた。
「諒さんの……諒さんの可愛い顔が……全国に……、小さく載るって言ってたのにぃぃぃーーー、私だけの諒さんがぁぁぁーーー!!」
「ちょっ、佳純さん、声が大きい」
佳純はイケメンの顔をくしゃくしゃにして、大きな声を上げて嘆き始めたので、周りの視線を一気に集めてしまった。
丸めてしまいそうな勢いで雑誌を掴んでいるので、とりあえずその雑誌を会計して、佳純の手を引いて売店を後にした。
近くのベンチに二人で座って、雑誌のインタビューのページを確認することにしたが、二人で写っているのは表紙の一枚だけだった。
「佳純さん、私の顔が出たとしても何も変わりませんよ。少しでも客足が増えてくれたらいいなと思うくらいで、逆に足を引っ張ってしまったらって、心配なくらいです」
「足を引っ張るなんて、絶対にないです。むしろ、ファンが押しかけてこないか心配です」
「ふふふっ、ファンなら、佳純さん目当てのお客様が、すでにたくさんいるじゃないですか。今さら写真を見て来た人がいても、変わらないですよ。美味しい食事と楽しい時間を過ごしてもらえばいいじゃないですか」
佳純がどんな想像をしているのか分からないが、宣伝のためなのだから、お客様が増えてくれるのは嬉しいことだと言って笑った。
そんな俺の顔を、佳純はまだ心配でたまらないという目で見ていた。
落ち着いているようで、時々子供のような独占欲を見せてくる佳純が可愛くてしょうがない。
ぽんぽんと頭を撫であげたら、佳純は俺の肩に頭を乗せてきた。
「落ち込んでいます?」
「ちょっとだけ。でも、大人になろうとしています」
誰にも見せたくないなんて、たっぷり愛されたら、ドキドキして嬉しくなってしまう。
大人になれないのは、俺の方だなと思った。
「元気を出して、ダーリン」
ふざけて佳純の鼻を指でツンツンしてみると、ニヤッと笑った佳純は俺の耳に息を吹きかけてきた。
「元気出たよ、ハニー愛してる」
佳純の美声でそんなことを言われたら、ビリビリと肌が痺れて顔が熱くなってしまった。
よく見たら佳純も自分で言ったくせに、照れていて真っ赤になっていた。
二人で目を合わせたら、おかしくなって笑ってしまった。
まもなく訪れる本格的な冬の寒さも、佳純と手を繋いでいれば少しも寒くないと思った。
雪が溶けて、やがて春になるころ
新しい喜びの種が芽吹くまで……
後もう少し……
◆おわり◆
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