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番外編
ハコ入りオメガの結婚【番外編①】
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【報告】
白壁に囲まれた日当たりのいい大きな部屋。
清潔に整えられて、大きな窓からは近くの公園の緑がよく見えた。
柔らかな日差しに照らされて、優しい微笑みを見せてくれた人の顔を思い出しながら、俺は長い廊下を歩いていた。
緊張から解放されて、安堵しているはずなのに、少し寂しくなってしまった。
「どうしたんですか? 泣きそうな顔をして」
足が止まってしまった俺に気がついた佳純が、振り返って心配そうな目をして話しかけてきた。
なんと言っていいか分からない。
ついさっきまでいた部屋を振り返って見た後、足が動かなくなってしまった。
「あの……私は、ちゃんと……上手くできたでしょうか。お祖母様を心配や不安にさせたりしてしまったら……」
穏やかな顔になって笑った佳純が近づいてきて、俺の髪をふわりと撫でた。
「大丈夫です。あんなに嬉しそうに笑っている祖母の顔は久しぶりです。それに、私が小さい頃はいつも目を吊り上げて部下に指示を出していて、鬼社長なんて言われた人ですよ。歳を取ったとはいえ、気に入らなかったら、ハッキリと言っていたはずです」
始終穏やかに笑っていた佳純の祖母であり、現君塚家の当主である珠代に、鬼の雰囲気などかけらもなかった。
佳純が本家から別宅であるこちらに戻ってきて、俺の両親と玲香を交えての会食が終わり、俺と佳純は無事入籍を済ませた。
お互い会社の関係もあるのでお披露目パーティーを予定しているが、スケジュールの都合でまだ先の話になる。
今日はまず入籍の報告にと、君塚の当主である珠代が入院している病院を佳純と一緒に訪ねた。
もちろん結婚については事前に佳純から話が入っていて、緊張しながら病室を訪ねた俺を、珠代は明るい笑顔で歓迎してくれた。
しばらくは二人の出会いの話をして、和やかに過ごした。
落ち着いた頃に、仕事の電話が入って佳純は席を外した。
遠くなった病室のドアを見つめながら、その時のことを、思い出してしまった。
「あの子は優しいでしょう?」
二人きりになって沈黙が部屋を包んだ時、珠代はそう言って微笑を浮かべた。
「ええ、良くしていただいています」
「私が教えたのよ。人には優しくするようにって」
「それは、とてもいいことですね。佳純さんはみんなに慕われています」
経営者としては優しいだけではいけないと思うが、佳純はその辺り上手く使い分けていて、厳しいところは厳しくしているので見ていていつも凄いなと感心していた。
良いところの話をしていたはずが、珠代の方は力なく笑った後、悲しそうな目になった。
「……あの子の両親は仲が悪くてね。私が口を挟むのはよくないと、何も言わなかったのだけど、気が付いた時には、あの子は笑うことを忘れてしまっていたの」
「え………」
「母親が出て行って、ほとんど人と話すこともできなくなって、いつも沈んだ顔をしていたわ。ある日、私の元にやって来て、人に優しくされるにはどうしたらいいかって聞いてきたの。だから、私は、優しくしてもらいたいなら、まずは自分から優しくしなさいって教えたの。きっと、息子に、あの子の父親に優しくしてもらいたかったのだと思うわ」
佳純とはまだお互いの境遇を詳しく話すような機会がなかった。父親との関係についてもほとんど話題にも出たことがなかった。
「息子は仕事人間で不器用な子だったから……。あの子なりに佳純を愛していたけど、伝わらなかったのね。口には出さずとも佳純は寂しかったんだと思う。あの子は一生懸命、父親に優しく話しかけていたけど、息子は結局事故で……。私の一言が、あの子を苦しめてしまったんじゃないかって今でも後悔しているの」
「優しく……がですか?」
「無理に強要してしまったんじゃないかって……、結局息子とは上手くいかなかったし、あの子が自分が悪かったんだなんて思ってしまったら……」
家族であっても、一緒に暮らしていても、人とは分かり合えないことがある。
お互いがお互いを思っていたとしても、ボタンを掛け違えたように、上手く通じ合えないことも。
悲しいけれど、よくあることだ。
「確かに、佳純さんからお父様のお話を聞いたことはありません。仰る通り複雑な心境があって、気軽に話題にすることを避けているのかもしれません」
やはり、という顔で珠代は悲しそうに目を伏せた。
佳純は祖父に似ていると聞いていたが、儚げな横顔は珠代と重なって見えた。
「初めて会った時、私は佳純さんにとても失礼だったと思います。一途で繊細な人に、会社としての利益のために結婚して欲しいと頼んだのです」
「まあ……」
「最初はそのつもりで門を叩いたのは事実ですが、佳純さんの人柄に触れて、惹かれてしまうのに時間はかからなかったです。佳純さんは迷惑ばかりかけてしまう私に、ちゃんと向き合って包み込んでくれました。一緒にいた時間で、無理して人に合わせて苦しんでいるようには見えなかったです。むしろ、お祖母様の伝えられた気持ちが、しっかり佳純さんの中で育って、周囲の人を温かい気持ちにさせる、そんな素晴らしい方になったのではないかなと思います」
「諒さん……」
「佳純さんといると驚かされることばかりです。臆病で、何かのせいにして踏み出すことができずに、いつも諦めてばかりいた私を、あれもしたい、これもしたいと思えるように変えてしまいました。自分の欲に驚かされる毎日です。私の世界を変えてくれた。佳純さんは本当に素晴らしい方です」
最後の方は恥ずかしくなるくらい、胸に手を当てて熱弁してしまった。
佳純の良さなんて、祖母の珠代は分かっているとは思うが、家族以外の人間にどう映っているのか、後悔なんてして欲しくなくて必死になって話してしまった。
そんな俺の姿を見て、珠代は目元に薄っすら涙を浮かべて嬉しそうに笑っていた。
「諒さん、あの子をよろしくね。表には出さないけど、とっても寂しがり屋だから」
俺は分かりましたと、珠代の目を真っ直ぐに見て答えた。
「……また、会いに来てもいいでしょうか」
「ええ、もちろん。祖母も喜びます」
佳純の手が伸びてきて、俺の手を握ってくれた。
床にぺったりとくっ付いて、離れなかった足がやっと動くようになった。
病室のドアから出る時、佳純は寂しそうな目をしていた。
言葉には出さずとも、祖母を思う気持ちが痛いほど伝わって来た。
近いうちにまた来よう。
心に決めて、佳純と並んで病院の廊下を歩き出した。
□□□
【番う】
「電気も水道も大丈夫だって。……うん、それもちゃんと佳純さんが手配してくれてるから。何もないって、大丈夫だから。……うん、またね」
これではまるで上京して初めての一人暮らしを始めるみたいだ。
朝から心配した母からの、あれはどうしたこれはどうしたという電話攻撃に苦笑してしまった。
今まで箱入り息子だったのに、いきなり家を出て暮らすのだから確かに心配なのだろう。
俺と婚約者だった佳純は、無事入籍して夫婦となった。
すぐに一緒に暮らしたいと言われて、いつ手配していたのか新居まで用意されていた。
実家や職場から程近い場所で、大きな公園やショッピングモールもある人気のエリアに、君塚が所有していたマンションがあった。
その最上階のスペースがもともと空いていたとかで、そこをいつの間にか居住用にリホームして、新居として二人で住むことになった。
もちろん電気や水道なんて、最初から完璧に使えるように準備されていた。
だが、両親からしたら、何も知らなすぎる息子に育ててしまったので、まともに生活するというところが想像できなかったらしい。
昨日引っ越しを済ませたが、心配の電話が何回もかかってきていた。
引っ越しに関しても業者から、何から何まで完璧に手配済みで、俺はただ何もできず突っ立ったまま終わってしまった。
佳純は地方の工場の視察があって、立ち会うことができなかったので、昨日今日と早速一人暮らしのようになっているが、なんの不便もなかった。
寂しいかなと思っていたが、親元を離れての生活というのが、ものすごい解放された気がして、楽しくて仕方がない。
昨日は深夜まで海外ドラマを見まくって、お菓子を食べながらソファーに転がって寝てしまった。
こんなこと、実家でやったものなら母親が雷を落としてくる事態になるので、この自由さに羽を伸ばしまくりになっていた。
このままだとソファーに体がくっ付いて離れなくなってしまう。
これではいけないとソファーから立ち上がって気合を入れていたら、出来ましたーと明るい声が聞こえてきた。
しまった、すっかり忘れていたと俺は声の聞こえてきた部屋に向かった。
「ごめんなさい、槙田くん。任せきりにしてしまって……」
「あー、大丈夫ッス。もう終わりましたから、どうですか? だいぶ配線がスッキリしましたでしょ?」
ツナギ姿でPC机の下からヌッと出てきたのは、佳純の第二秘書の槙田だ。
見た目は明るい髪が目立つ気のいいお兄さんといった感じで、スーツで武装でもしているような、ガチガチの秘書である藤野とは何もかも正反対だ。
初対面で尻尾を振った犬のような人懐っこい態度で、警戒する俺の懐にあっという間に入ってきてしまった。
椎崎とはまた違った距離の近いタイプであるが、見た目がとにかく明るいので誰からも好かれる人だと思う。
佳純がこちらにいない間に引っ越しが重なったこともあり、槙田が業者の手配や、当日の手伝いまで細かくやってくれた。俺とは年齢も近くて、この二日ですっかり仲良くなった。
茶髪にピアスという秘書というには似つかわしくない槙田だが、どうも君塚家の遠縁にあたるらしい。
本人も自分は縁故なんで、秘書という名の雑用係なんですと言って笑っていた。
とはいえ、佳純の側で働いているのだから、何でもないと言いながら、かなり優秀なのではないかなと俺は見ている。
実際PCの接続が上手くいかず、修理を頼んだら、昨日今日とかけて直して、ごちゃごちゃしていた配線までスッキリ収納してくれた。
「本当に助かりました。急に次々と壊れてしまって、連絡したら工事は一週間待ちだっていうから、どうしようかと思っていたんです」
「槙田工務店にお任せくださいー。頭はユルいですけど手先は器用なんです。社長と奥様の諒さんのご用命なら喜んでやります」
「お……奥様。そっ、そうですよね。すみません、まだ慣れてなくて……、そうだっ。お茶飲みませんか? 今用意しますね」
そんな呼び方をされるなんてと、まだ戸惑ってしまう。どんな反応をするのが正解なのかまだよく分からなかった。
恥ずかしさをごまかすように立ち上がってキッチンに向かった。
お茶の淹れ方は佳純に教えてもらった。
まだまだ上手く出来ないけれど、思い出しながら用意していると、カウンターから槙田が覗いてきた。
まるでおやつを待つ犬のようだ。
「いーな、いーなぁ。社長が羨ましい。毎日、諒さんみたいな綺麗な奥さんにお茶を淹れてもらえるなんてー」
「……言っておきますけど、練習台ですよ。味の保証はできないです」
「えー、全然いいッス。俺舌もバカなもんで、だいたい美味しく頂けちゃいますから」
うちは妹だったが、弟がいたらこんな感じだったのかなと思いながら、槙田の前に出来上がったお茶を置いた。
どうも佳純が淹れたものとは色が違う気がする。槙田はうまいうまいと言って飲んでくれたが勉強が必要だなと頭をかいた。
「俺、反抗期がひどくて親に迷惑かけたんです」
お茶を飲み終わった槙田がポツリと言葉をこぼした。明るい彼にしては珍しく、明るくない話だった。
急に話し始めたのは少し驚いたが、聞いて欲しかったのかもしれない。
誰にだって過去はある。良い時も悪い時も。
「暴力とか振るって手がつけられなくて、それで、社長の家に預けられたんです。今考えたら、そんなことで、みたいなのでイラついていましたけど、その時はいっぱいいっぱいでした。みんなから厄介者扱いされて……そんな俺にも社長は優しくしてくれたんです。社長は根気よく社会人として生きていくことを教えてくれました」
話に聞くだけで佳純の懐の広さを感じで、嬉しくて震えてしまった。
ただ優しいだけじゃない。
ちゃんと面倒を見続けている、なんて良い人なんだとますます好きになってしまう。
「感謝しきれないくらいなんで、幸せになって欲しかったんです。だから、社長のことすごく心配していたんですよ」
「え? 心配?」
「モテるのに、浮いた話も噂もないし、もしかしたら変な趣味でもあって誰とも付き合わないつもりなのかと……」
「は…はははっ、変な趣味って」
「でも、良かったです。まさか、こんな美人さんをゲットするために貫いてきたんだとは思いませんでした。確かに、うんうん、諒さんがお嫁さんになるなら、我慢もしますよね」
「いやいや、本当にダメなんです。そんなにいいものじゃないですよ。この歳で包丁すら握ったことがなくて、もう本当に申し訳なくなるばかりなんです」
佳純は好きなことをしていいと言ってくれるが、いくらなんでも実家にいたころのようにはいかない。
一緒に家庭を作っていくのだから、俺だって佳純を支えていきたいし、力になりたいのだ。
しかし、料理をすればフライパンごと焦がすし、指どころか手まで切るし、家電は次々と壊してしまうし、自分の不甲斐なさに落ち込む日々だった。
「無理しないで、お金で解決できることは頼っちゃえばいいじゃないですか。あの人たくさん持ってるし、プロに任せてすんなり上手くいくならその方が平和ですよ」
「槙田くん……、ずいぶんと達観してるというか……豪快だね」
「だいたい、男は……、諒さんも分かると思いますけど、好きなヤツに頼られるの好きなんです。もっと甘えちゃってください、その方が社長喜びますから」
「君……本当に年下? 有能すぎる……」
「ははっ、もっと言ってください」
槙田と笑いながらお菓子をつまんだ。
まったりとした平和な時間だったが、茶碗を洗おうと立ち上がった時、クラっと眩暈がして片手でお腹を押さえて椅子に手をついた。
ピリピリと肌が痺れる感覚がして、背中に冷たい汗が流れる感覚がした。
「諒さん? 腹痛っスか? もしかして、発情期とか? はははっまさか……」
「そう……だと思う」
「うええっっ!! まままマジっすか!?」
薬を軽いものに変えたので、今までと周期が変わってしまった。
前回、君塚の本家で発情してからずっと来なかったが、やっとその兆しを感じた。
「どどど、どうしたらいいっスか!? 冷やす? 氷? な、なにか、必要なものを!!」
人間自分より慌てている人がいると意外と冷静になるものだ。
一瞬緊張してしまったが、青い顔をして冷蔵庫を開け始めた槙田を見たら笑ってしまった。
「大丈夫、病気じゃないし、急なヒートじゃないから、徐々に強くなると思う。佳純さんに連絡したいんだけど、今は……会議中かな?」
「は、はい。自分、ベータなんで、全然分かんなくてスミマセン! 重役の会議ですけど、連絡してみます」
ポケットからスマホを取り出した槙田はジャグリングでもしているかのように、スマホを手から落としながら電話をかけ始めた。
「はい、はい! 部屋の前でですね! はいっ、虫一匹入らないように見張っています!」
槙田は電話をしながら佳純から指示を受けているらしい。慌てて靴を履いて外へ行ってしまった。
結婚してから初めての発情。
次は番になりましょうと約束していたので、いよいよなんだと思うと、胸が高鳴ってきた。
「はぁ……佳純さん、はやく……会いたい」
この時間なら視察を終えて本社に戻った頃だろう。
マンションまで距離はないが、会議中ならすぐには来られないはずだ。
大丈夫、ずっと待ってるからと思いながら、俺はベッドに体を横たえた。
徐々に集まってくる熱を感じながら、熱い息を吐いた時、玄関の扉がバァァンっと開く音がして飛び起きた。
「諒! どこにいますか!!」
ひどく慌てた様子の声に、急いでドアに向かって走った。
さっきの電話から五分と経っていない。
幻聴が聞こえてきたのかと思いながら、ドアに手をかけようとしたら、ドアがぐわっと力強く開いて、焦った様子の佳純が飛び込んできた。
「ああ、良かった。こんな時に、一人にしてしまい申し訳ございません」
佳純は俺の姿を目に入れたら、すぐにガバッと強く抱きしめてきた。
「か……佳純さん、本物? 早すぎないですか? お仕事は……?」
「最優先事項だと伝えているので大丈夫です。この時のためにちゃんと回せるように体制を整えていますから」
「佳純さん、すみません。頼ってしまって……」
「何を言っているんですか。これは私だけの特別な時間です。誰にも渡さないし、邪魔はさせません」
力強く抱きしめてくれる佳純に、安心して全てを委ねようと力を抜いた。
どくどくと血が流れるように、覚えのある熱が身体中を覆っていくのがわかった。
今まで待っていたかのように、俺の中の鎖が外れる。
オメガとしての本能が花開いていくのを感じた。
理性と本能が入り混じって、俺を染めていく。
「う……れし、嬉しい、佳純さん。来てくれて嬉しいです」
シャツのボタンを自ら外して、指で佳純の唇をなぞった。ゾクゾクするような快感はすでに体を這い回り、自然に潤ったソコが、早くアルファが欲しいと疼き始めた。
ごくりと唾を飲み込む音がして、佳純の息が乱れていくのが分かる。
ビシッと整った佳純のスーツの下半身が、めきめきと盛り上がって雄の匂いを漂わせてきた。
最高のアルファを前にして、オメガの本能が開花する。体中から濃厚なフェロモンがぶわっと飛び出したのが自分でも分かるほどだった。
それを全身で浴びた佳純は、一瞬顔を伏せて苦しそうなうめき声を上げた後、俺の腕を掴んできた。
「り……りょ……りょう、欲しい……」
ゆっくりと顔を上げた佳純に、いつもの柔和で優しい面影はなかった。
目は獰猛に光っていて、大きく開いた瞳孔は燃え上がる炎のような色をしていた。
口元には発達した犬歯が覗き、涎がたらりと溢れた。
ああ、これだ。
俺の求めていたアルファ。
はやく俺を………
「噛んで、佳純」
ギラリ。
佳純の目がいっそう光った瞬間、俺はベッドにうつ伏せにされて押し倒された。
あっという間にズボンと下着をずり下ろされて、後ろに灼熱となった佳純の雄をあてられた。
まるで獣に変わってしまった佳純は、荒い息をしながら何も言わずに自身を押し挿れてきた。
俺のソコは発情によってとろとろに溶けていて、佳純の大きなモノをいとも簡単に飲み込んでいく。
「っっあああぃぃ、いいっ、……かすみ、いい」
獣と化した佳純は容赦がない。
挿入したらすぐにガンガンと腰をぶつける勢いでピストンを始めた。
いつもの濃厚なセックスとは違い、お互い着衣のままでほとんど脱ぐことなく即挿入という、動物的な行為が今はとてつもなく興奮する。
「んっ…ぁぁっ、……おく……ついて、あっ、あっ、アッ、いいっ……あっんんっ」
「ハァハァ……っっ………りょう……」
後ろから俺の上半身を抱えてきた佳純は、今度はガンガンと突き上げるように打ち付けてきた。
中を擦られる角度が変わって、強すぎる快感に悲鳴のような声を上げて喘いだ。
全身の血が沸騰している。
早くあの鋭いモノで貫かれたくてたまらない。
「かすみぃ……かすみ……あっっ、うっ……ほしい」
「諒、これで、私達は……永遠にひとつです」
耳元でそう囁いた佳純は、躊躇うことなく俺のうなじに歯を立てた。
普段のセックスで噛んでもらったことはあるが、あんなのはただの真似事だと思うくらい、佳純は躊躇いなく一気に噛みついてきた。
「ああ……ああああああっっ、いっ……いい……」
痛みなどは少しも感じなかった。
うなじから甘い痺れが全身を駆け巡り、強烈な快感に震えて、何度も達してしまった。
射精感が止まらない。
噛まれている間、ずっと絶頂の状態が続いていて、気が狂いそうになった。
腹の奥で佳純のモノがどくどくと放っているのを感じる。
俺もイキっぱなしで、締め付けているので、ちっとも終わりがみえない。
そこで一度歯を引き抜いた佳純は、今度は別の場所を容赦なくガブリと噛んできた。
完全に捕食されている俺は、もう身動きひとつ取ることができない。
あの長い射精の状態に入っていて、とにかく狂いそうな快感がずっと続いていた。
「うれし……かすみ、すき……」
「諒、私も……愛しています。……貴方だけを……これからもずっと……」
再びズブリと歯が立てられて、噛まれる感覚がした。
イキすぎて限界を迎えた俺の意識は体と同じくトロトロに溶けていき、ありがとうと口にしてから深い眠りの海に沈んでいった。
眩しい朝日を感じて俺は目を覚ました。
体が重くて全身が筋肉痛みたいな状態だ。
しかし、今までに感じたことがないくらいの安心感が体を包んでいる。
今回はどれくらい時間が経っているのか、ゆっくりと体を起こすと、隣にスヤスヤと眠っている佳純の寝顔を見つけた。
いつもは彫刻のように完璧な美を誇っているが、寝顔は少し幼い感じがして天使のように可愛らしい。
クスリと笑ってから、頬を撫でてキスをした。
ふぅと小さく息を吐いてから、うなじに手を当てた。
やはり手触りが違うことが分かって、本当に番になれたのだと実感した。
起こしたら可哀想だからと、そっと床に降りて、裸足でバスルームに向かった。
途中、リビングに置いていたスマホの画面を確認して、発情から三日が過ぎているのが分かった。
番になれたからか、今までみたいに全部記憶がないわけではなく、ところどころ何があったのか覚えている。
この三日間、乱れに乱れて佳純を求めてしまった。
カッと顔が熱くなるのを感じながらバスルームに着いた俺は、鏡を見て絶句してしまった。
「嘘……でしょう……」
うなじだけだと思っていた噛み痕は、背中全体、お尻にまであった。
よく見たら腕や脚にまで付いていて、クラリと眩暈がしてしまった。
確かに噛んでくれとは言ったが、これは噛み過ぎではないだろうか。
素っ裸で唖然としながら鏡の前で立ち尽くしていたら、ガタンと音がして佳純が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
どこか寂しげな声にハッとした俺は急いでバスルームから出た。
「諒さん、……良かった。どこかへ行ってしまったような気がして……」
リビングに立っていた佳純に近づいた俺は、ぎゅっと抱きしめた。
なぜだか、佳純が迷子の子供のように見えてしまった。
「私達、番になったんですよ。どこにも行くわけないじゃないですか」
「……そうですね。すみません、久しぶりに父の夢を見てしまいまして……」
儚げな美しさのある人だが、いつもよりずっと小さく見えた。
発情期も治まったので、一旦着替えて食事を取ることにした。
「取り乱してすみませんでした。普段父を思い出すことは少ないのですが、時々夢に見てしまうことがあって……せっかくの記念の日に申し訳ありません」
佳純が手際よく作ってくれた朝食を二人で食べてから、少し落ち着いたところで佳純は俺に謝ってきた。
「いえ、そんな……。もしよかったら、お父様のこと、私に話してくれませんか?」
「実は多くを話せるほど、父とは交流がありませんでした。仕事人間で無口な人で、子供が好き、というタイプではなかったのだと思います。私が近づくといつもどうしていいか分からない、という困った顔をしていたのを覚えています。母がいなくなってから、私は食べるのをやめられなくなって……、その頃から険悪な関係になってしまいました。父は必死に私を元に戻そうとしていたのだと思いますが、結局お互いに傷つくばかりで距離が縮まることはなかったです」
珠代の病室を訪ねた時のことを思い出した。
父親との関係が上手くいかなかったことを、佳純は自分のせいだと思っているのではないか。
珠代はそのことを心配していた。
「諒さんとも行ったお祭りに、昔、父と一度だけ一緒に行ったことがあるんです。いつも厳しい人が、その日は優しくて……とても楽しかったのを覚えています。その時のことを夢に見るんです。それで目が覚めると、あれは本当だったのかなと考えてしまうんです。あの時、私の手を握ってくれたのは……本当に父だったのかと……」
「お祖母様から、少しだけお父様のお話を聞きました。不器用な人だったけど、佳純さんのことを愛していたと仰っていました」
「祖母が……ですか?」
「愛していたけど、上手く伝わらなかったと。私はお父様に実際にお会いしたことはありませんので本当のところは分かりません。でも、真っ直ぐで純粋で、面倒見も良くて……、佳純さんといると温かい心になります。きっとお父様も言葉には出さずとも、同じ気持ちだったと思います。お祭りの思い出は、お父様にとっても……楽しいものだったと、私はそう思います」
「……諒さん」
佳純は手を伸ばして、机の上にあった俺の手に重ねてきた。
少しだけ震えていたので見ると、アーモンド色の美しい目からポロリと涙がこぼれていた。
その涙は心が洗われるくらい、美しかった。
「諒さんと番になれて、本当によかった……」
何年、何十年経っても、この時の気持ちを忘れずに、お互いの温もりを感じながら一緒に生きていきたい。
寂しい時も楽しい時も、こうやって手を繋いで……
「でも、体中噛むのは、ちょっと噛みすぎかと……」
「ふふふ……諒さん相手だと、好きすぎて我慢が効かないんです」
いちおうこれは言っておかないとと、訴えてみたら、妖しく微笑んだ佳純は俺の手を取って口元に引き寄せてから、小指を甘噛みしてきた。
「どうしても、だめでしょうか?」
「ううっ……」
噛んだところを今度はペロリと舐められて、俺は赤くなって悶絶するしかなかった。
槙田は甘えてみろと言っていたが、甘えることに関してこの人に勝てるか気がしない。
「す……少しだけなら……」
佳純は嬉しそうに笑って、俺の手に頬を擦り寄せてきた。
アルファでも我慢ができる特性だと聞いていた。
それが好きな人には我慢ができないと言われてしまったら、もう頷くしかない。
こんなに好きなのだから仕方がない。
全部可愛いワガママだと思えて、嬉しいと思ってしまった。
二人だけの特別な繋がりができた日。
消えることのない愛の証。
これから長い人生を共に歩む人と、一日中笑い合って幸せな時間を過ごした。
□終□
白壁に囲まれた日当たりのいい大きな部屋。
清潔に整えられて、大きな窓からは近くの公園の緑がよく見えた。
柔らかな日差しに照らされて、優しい微笑みを見せてくれた人の顔を思い出しながら、俺は長い廊下を歩いていた。
緊張から解放されて、安堵しているはずなのに、少し寂しくなってしまった。
「どうしたんですか? 泣きそうな顔をして」
足が止まってしまった俺に気がついた佳純が、振り返って心配そうな目をして話しかけてきた。
なんと言っていいか分からない。
ついさっきまでいた部屋を振り返って見た後、足が動かなくなってしまった。
「あの……私は、ちゃんと……上手くできたでしょうか。お祖母様を心配や不安にさせたりしてしまったら……」
穏やかな顔になって笑った佳純が近づいてきて、俺の髪をふわりと撫でた。
「大丈夫です。あんなに嬉しそうに笑っている祖母の顔は久しぶりです。それに、私が小さい頃はいつも目を吊り上げて部下に指示を出していて、鬼社長なんて言われた人ですよ。歳を取ったとはいえ、気に入らなかったら、ハッキリと言っていたはずです」
始終穏やかに笑っていた佳純の祖母であり、現君塚家の当主である珠代に、鬼の雰囲気などかけらもなかった。
佳純が本家から別宅であるこちらに戻ってきて、俺の両親と玲香を交えての会食が終わり、俺と佳純は無事入籍を済ませた。
お互い会社の関係もあるのでお披露目パーティーを予定しているが、スケジュールの都合でまだ先の話になる。
今日はまず入籍の報告にと、君塚の当主である珠代が入院している病院を佳純と一緒に訪ねた。
もちろん結婚については事前に佳純から話が入っていて、緊張しながら病室を訪ねた俺を、珠代は明るい笑顔で歓迎してくれた。
しばらくは二人の出会いの話をして、和やかに過ごした。
落ち着いた頃に、仕事の電話が入って佳純は席を外した。
遠くなった病室のドアを見つめながら、その時のことを、思い出してしまった。
「あの子は優しいでしょう?」
二人きりになって沈黙が部屋を包んだ時、珠代はそう言って微笑を浮かべた。
「ええ、良くしていただいています」
「私が教えたのよ。人には優しくするようにって」
「それは、とてもいいことですね。佳純さんはみんなに慕われています」
経営者としては優しいだけではいけないと思うが、佳純はその辺り上手く使い分けていて、厳しいところは厳しくしているので見ていていつも凄いなと感心していた。
良いところの話をしていたはずが、珠代の方は力なく笑った後、悲しそうな目になった。
「……あの子の両親は仲が悪くてね。私が口を挟むのはよくないと、何も言わなかったのだけど、気が付いた時には、あの子は笑うことを忘れてしまっていたの」
「え………」
「母親が出て行って、ほとんど人と話すこともできなくなって、いつも沈んだ顔をしていたわ。ある日、私の元にやって来て、人に優しくされるにはどうしたらいいかって聞いてきたの。だから、私は、優しくしてもらいたいなら、まずは自分から優しくしなさいって教えたの。きっと、息子に、あの子の父親に優しくしてもらいたかったのだと思うわ」
佳純とはまだお互いの境遇を詳しく話すような機会がなかった。父親との関係についてもほとんど話題にも出たことがなかった。
「息子は仕事人間で不器用な子だったから……。あの子なりに佳純を愛していたけど、伝わらなかったのね。口には出さずとも佳純は寂しかったんだと思う。あの子は一生懸命、父親に優しく話しかけていたけど、息子は結局事故で……。私の一言が、あの子を苦しめてしまったんじゃないかって今でも後悔しているの」
「優しく……がですか?」
「無理に強要してしまったんじゃないかって……、結局息子とは上手くいかなかったし、あの子が自分が悪かったんだなんて思ってしまったら……」
家族であっても、一緒に暮らしていても、人とは分かり合えないことがある。
お互いがお互いを思っていたとしても、ボタンを掛け違えたように、上手く通じ合えないことも。
悲しいけれど、よくあることだ。
「確かに、佳純さんからお父様のお話を聞いたことはありません。仰る通り複雑な心境があって、気軽に話題にすることを避けているのかもしれません」
やはり、という顔で珠代は悲しそうに目を伏せた。
佳純は祖父に似ていると聞いていたが、儚げな横顔は珠代と重なって見えた。
「初めて会った時、私は佳純さんにとても失礼だったと思います。一途で繊細な人に、会社としての利益のために結婚して欲しいと頼んだのです」
「まあ……」
「最初はそのつもりで門を叩いたのは事実ですが、佳純さんの人柄に触れて、惹かれてしまうのに時間はかからなかったです。佳純さんは迷惑ばかりかけてしまう私に、ちゃんと向き合って包み込んでくれました。一緒にいた時間で、無理して人に合わせて苦しんでいるようには見えなかったです。むしろ、お祖母様の伝えられた気持ちが、しっかり佳純さんの中で育って、周囲の人を温かい気持ちにさせる、そんな素晴らしい方になったのではないかなと思います」
「諒さん……」
「佳純さんといると驚かされることばかりです。臆病で、何かのせいにして踏み出すことができずに、いつも諦めてばかりいた私を、あれもしたい、これもしたいと思えるように変えてしまいました。自分の欲に驚かされる毎日です。私の世界を変えてくれた。佳純さんは本当に素晴らしい方です」
最後の方は恥ずかしくなるくらい、胸に手を当てて熱弁してしまった。
佳純の良さなんて、祖母の珠代は分かっているとは思うが、家族以外の人間にどう映っているのか、後悔なんてして欲しくなくて必死になって話してしまった。
そんな俺の姿を見て、珠代は目元に薄っすら涙を浮かべて嬉しそうに笑っていた。
「諒さん、あの子をよろしくね。表には出さないけど、とっても寂しがり屋だから」
俺は分かりましたと、珠代の目を真っ直ぐに見て答えた。
「……また、会いに来てもいいでしょうか」
「ええ、もちろん。祖母も喜びます」
佳純の手が伸びてきて、俺の手を握ってくれた。
床にぺったりとくっ付いて、離れなかった足がやっと動くようになった。
病室のドアから出る時、佳純は寂しそうな目をしていた。
言葉には出さずとも、祖母を思う気持ちが痛いほど伝わって来た。
近いうちにまた来よう。
心に決めて、佳純と並んで病院の廊下を歩き出した。
□□□
【番う】
「電気も水道も大丈夫だって。……うん、それもちゃんと佳純さんが手配してくれてるから。何もないって、大丈夫だから。……うん、またね」
これではまるで上京して初めての一人暮らしを始めるみたいだ。
朝から心配した母からの、あれはどうしたこれはどうしたという電話攻撃に苦笑してしまった。
今まで箱入り息子だったのに、いきなり家を出て暮らすのだから確かに心配なのだろう。
俺と婚約者だった佳純は、無事入籍して夫婦となった。
すぐに一緒に暮らしたいと言われて、いつ手配していたのか新居まで用意されていた。
実家や職場から程近い場所で、大きな公園やショッピングモールもある人気のエリアに、君塚が所有していたマンションがあった。
その最上階のスペースがもともと空いていたとかで、そこをいつの間にか居住用にリホームして、新居として二人で住むことになった。
もちろん電気や水道なんて、最初から完璧に使えるように準備されていた。
だが、両親からしたら、何も知らなすぎる息子に育ててしまったので、まともに生活するというところが想像できなかったらしい。
昨日引っ越しを済ませたが、心配の電話が何回もかかってきていた。
引っ越しに関しても業者から、何から何まで完璧に手配済みで、俺はただ何もできず突っ立ったまま終わってしまった。
佳純は地方の工場の視察があって、立ち会うことができなかったので、昨日今日と早速一人暮らしのようになっているが、なんの不便もなかった。
寂しいかなと思っていたが、親元を離れての生活というのが、ものすごい解放された気がして、楽しくて仕方がない。
昨日は深夜まで海外ドラマを見まくって、お菓子を食べながらソファーに転がって寝てしまった。
こんなこと、実家でやったものなら母親が雷を落としてくる事態になるので、この自由さに羽を伸ばしまくりになっていた。
このままだとソファーに体がくっ付いて離れなくなってしまう。
これではいけないとソファーから立ち上がって気合を入れていたら、出来ましたーと明るい声が聞こえてきた。
しまった、すっかり忘れていたと俺は声の聞こえてきた部屋に向かった。
「ごめんなさい、槙田くん。任せきりにしてしまって……」
「あー、大丈夫ッス。もう終わりましたから、どうですか? だいぶ配線がスッキリしましたでしょ?」
ツナギ姿でPC机の下からヌッと出てきたのは、佳純の第二秘書の槙田だ。
見た目は明るい髪が目立つ気のいいお兄さんといった感じで、スーツで武装でもしているような、ガチガチの秘書である藤野とは何もかも正反対だ。
初対面で尻尾を振った犬のような人懐っこい態度で、警戒する俺の懐にあっという間に入ってきてしまった。
椎崎とはまた違った距離の近いタイプであるが、見た目がとにかく明るいので誰からも好かれる人だと思う。
佳純がこちらにいない間に引っ越しが重なったこともあり、槙田が業者の手配や、当日の手伝いまで細かくやってくれた。俺とは年齢も近くて、この二日ですっかり仲良くなった。
茶髪にピアスという秘書というには似つかわしくない槙田だが、どうも君塚家の遠縁にあたるらしい。
本人も自分は縁故なんで、秘書という名の雑用係なんですと言って笑っていた。
とはいえ、佳純の側で働いているのだから、何でもないと言いながら、かなり優秀なのではないかなと俺は見ている。
実際PCの接続が上手くいかず、修理を頼んだら、昨日今日とかけて直して、ごちゃごちゃしていた配線までスッキリ収納してくれた。
「本当に助かりました。急に次々と壊れてしまって、連絡したら工事は一週間待ちだっていうから、どうしようかと思っていたんです」
「槙田工務店にお任せくださいー。頭はユルいですけど手先は器用なんです。社長と奥様の諒さんのご用命なら喜んでやります」
「お……奥様。そっ、そうですよね。すみません、まだ慣れてなくて……、そうだっ。お茶飲みませんか? 今用意しますね」
そんな呼び方をされるなんてと、まだ戸惑ってしまう。どんな反応をするのが正解なのかまだよく分からなかった。
恥ずかしさをごまかすように立ち上がってキッチンに向かった。
お茶の淹れ方は佳純に教えてもらった。
まだまだ上手く出来ないけれど、思い出しながら用意していると、カウンターから槙田が覗いてきた。
まるでおやつを待つ犬のようだ。
「いーな、いーなぁ。社長が羨ましい。毎日、諒さんみたいな綺麗な奥さんにお茶を淹れてもらえるなんてー」
「……言っておきますけど、練習台ですよ。味の保証はできないです」
「えー、全然いいッス。俺舌もバカなもんで、だいたい美味しく頂けちゃいますから」
うちは妹だったが、弟がいたらこんな感じだったのかなと思いながら、槙田の前に出来上がったお茶を置いた。
どうも佳純が淹れたものとは色が違う気がする。槙田はうまいうまいと言って飲んでくれたが勉強が必要だなと頭をかいた。
「俺、反抗期がひどくて親に迷惑かけたんです」
お茶を飲み終わった槙田がポツリと言葉をこぼした。明るい彼にしては珍しく、明るくない話だった。
急に話し始めたのは少し驚いたが、聞いて欲しかったのかもしれない。
誰にだって過去はある。良い時も悪い時も。
「暴力とか振るって手がつけられなくて、それで、社長の家に預けられたんです。今考えたら、そんなことで、みたいなのでイラついていましたけど、その時はいっぱいいっぱいでした。みんなから厄介者扱いされて……そんな俺にも社長は優しくしてくれたんです。社長は根気よく社会人として生きていくことを教えてくれました」
話に聞くだけで佳純の懐の広さを感じで、嬉しくて震えてしまった。
ただ優しいだけじゃない。
ちゃんと面倒を見続けている、なんて良い人なんだとますます好きになってしまう。
「感謝しきれないくらいなんで、幸せになって欲しかったんです。だから、社長のことすごく心配していたんですよ」
「え? 心配?」
「モテるのに、浮いた話も噂もないし、もしかしたら変な趣味でもあって誰とも付き合わないつもりなのかと……」
「は…はははっ、変な趣味って」
「でも、良かったです。まさか、こんな美人さんをゲットするために貫いてきたんだとは思いませんでした。確かに、うんうん、諒さんがお嫁さんになるなら、我慢もしますよね」
「いやいや、本当にダメなんです。そんなにいいものじゃないですよ。この歳で包丁すら握ったことがなくて、もう本当に申し訳なくなるばかりなんです」
佳純は好きなことをしていいと言ってくれるが、いくらなんでも実家にいたころのようにはいかない。
一緒に家庭を作っていくのだから、俺だって佳純を支えていきたいし、力になりたいのだ。
しかし、料理をすればフライパンごと焦がすし、指どころか手まで切るし、家電は次々と壊してしまうし、自分の不甲斐なさに落ち込む日々だった。
「無理しないで、お金で解決できることは頼っちゃえばいいじゃないですか。あの人たくさん持ってるし、プロに任せてすんなり上手くいくならその方が平和ですよ」
「槙田くん……、ずいぶんと達観してるというか……豪快だね」
「だいたい、男は……、諒さんも分かると思いますけど、好きなヤツに頼られるの好きなんです。もっと甘えちゃってください、その方が社長喜びますから」
「君……本当に年下? 有能すぎる……」
「ははっ、もっと言ってください」
槙田と笑いながらお菓子をつまんだ。
まったりとした平和な時間だったが、茶碗を洗おうと立ち上がった時、クラっと眩暈がして片手でお腹を押さえて椅子に手をついた。
ピリピリと肌が痺れる感覚がして、背中に冷たい汗が流れる感覚がした。
「諒さん? 腹痛っスか? もしかして、発情期とか? はははっまさか……」
「そう……だと思う」
「うええっっ!! まままマジっすか!?」
薬を軽いものに変えたので、今までと周期が変わってしまった。
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「どどど、どうしたらいいっスか!? 冷やす? 氷? な、なにか、必要なものを!!」
人間自分より慌てている人がいると意外と冷静になるものだ。
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「は、はい。自分、ベータなんで、全然分かんなくてスミマセン! 重役の会議ですけど、連絡してみます」
ポケットからスマホを取り出した槙田はジャグリングでもしているかのように、スマホを手から落としながら電話をかけ始めた。
「はい、はい! 部屋の前でですね! はいっ、虫一匹入らないように見張っています!」
槙田は電話をしながら佳純から指示を受けているらしい。慌てて靴を履いて外へ行ってしまった。
結婚してから初めての発情。
次は番になりましょうと約束していたので、いよいよなんだと思うと、胸が高鳴ってきた。
「はぁ……佳純さん、はやく……会いたい」
この時間なら視察を終えて本社に戻った頃だろう。
マンションまで距離はないが、会議中ならすぐには来られないはずだ。
大丈夫、ずっと待ってるからと思いながら、俺はベッドに体を横たえた。
徐々に集まってくる熱を感じながら、熱い息を吐いた時、玄関の扉がバァァンっと開く音がして飛び起きた。
「諒! どこにいますか!!」
ひどく慌てた様子の声に、急いでドアに向かって走った。
さっきの電話から五分と経っていない。
幻聴が聞こえてきたのかと思いながら、ドアに手をかけようとしたら、ドアがぐわっと力強く開いて、焦った様子の佳純が飛び込んできた。
「ああ、良かった。こんな時に、一人にしてしまい申し訳ございません」
佳純は俺の姿を目に入れたら、すぐにガバッと強く抱きしめてきた。
「か……佳純さん、本物? 早すぎないですか? お仕事は……?」
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「佳純さん、すみません。頼ってしまって……」
「何を言っているんですか。これは私だけの特別な時間です。誰にも渡さないし、邪魔はさせません」
力強く抱きしめてくれる佳純に、安心して全てを委ねようと力を抜いた。
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今まで待っていたかのように、俺の中の鎖が外れる。
オメガとしての本能が花開いていくのを感じた。
理性と本能が入り混じって、俺を染めていく。
「う……れし、嬉しい、佳純さん。来てくれて嬉しいです」
シャツのボタンを自ら外して、指で佳純の唇をなぞった。ゾクゾクするような快感はすでに体を這い回り、自然に潤ったソコが、早くアルファが欲しいと疼き始めた。
ごくりと唾を飲み込む音がして、佳純の息が乱れていくのが分かる。
ビシッと整った佳純のスーツの下半身が、めきめきと盛り上がって雄の匂いを漂わせてきた。
最高のアルファを前にして、オメガの本能が開花する。体中から濃厚なフェロモンがぶわっと飛び出したのが自分でも分かるほどだった。
それを全身で浴びた佳純は、一瞬顔を伏せて苦しそうなうめき声を上げた後、俺の腕を掴んできた。
「り……りょ……りょう、欲しい……」
ゆっくりと顔を上げた佳純に、いつもの柔和で優しい面影はなかった。
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ああ、これだ。
俺の求めていたアルファ。
はやく俺を………
「噛んで、佳純」
ギラリ。
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「んっ…ぁぁっ、……おく……ついて、あっ、あっ、アッ、いいっ……あっんんっ」
「ハァハァ……っっ………りょう……」
後ろから俺の上半身を抱えてきた佳純は、今度はガンガンと突き上げるように打ち付けてきた。
中を擦られる角度が変わって、強すぎる快感に悲鳴のような声を上げて喘いだ。
全身の血が沸騰している。
早くあの鋭いモノで貫かれたくてたまらない。
「かすみぃ……かすみ……あっっ、うっ……ほしい」
「諒、これで、私達は……永遠にひとつです」
耳元でそう囁いた佳純は、躊躇うことなく俺のうなじに歯を立てた。
普段のセックスで噛んでもらったことはあるが、あんなのはただの真似事だと思うくらい、佳純は躊躇いなく一気に噛みついてきた。
「ああ……ああああああっっ、いっ……いい……」
痛みなどは少しも感じなかった。
うなじから甘い痺れが全身を駆け巡り、強烈な快感に震えて、何度も達してしまった。
射精感が止まらない。
噛まれている間、ずっと絶頂の状態が続いていて、気が狂いそうになった。
腹の奥で佳純のモノがどくどくと放っているのを感じる。
俺もイキっぱなしで、締め付けているので、ちっとも終わりがみえない。
そこで一度歯を引き抜いた佳純は、今度は別の場所を容赦なくガブリと噛んできた。
完全に捕食されている俺は、もう身動きひとつ取ることができない。
あの長い射精の状態に入っていて、とにかく狂いそうな快感がずっと続いていた。
「うれし……かすみ、すき……」
「諒、私も……愛しています。……貴方だけを……これからもずっと……」
再びズブリと歯が立てられて、噛まれる感覚がした。
イキすぎて限界を迎えた俺の意識は体と同じくトロトロに溶けていき、ありがとうと口にしてから深い眠りの海に沈んでいった。
眩しい朝日を感じて俺は目を覚ました。
体が重くて全身が筋肉痛みたいな状態だ。
しかし、今までに感じたことがないくらいの安心感が体を包んでいる。
今回はどれくらい時間が経っているのか、ゆっくりと体を起こすと、隣にスヤスヤと眠っている佳純の寝顔を見つけた。
いつもは彫刻のように完璧な美を誇っているが、寝顔は少し幼い感じがして天使のように可愛らしい。
クスリと笑ってから、頬を撫でてキスをした。
ふぅと小さく息を吐いてから、うなじに手を当てた。
やはり手触りが違うことが分かって、本当に番になれたのだと実感した。
起こしたら可哀想だからと、そっと床に降りて、裸足でバスルームに向かった。
途中、リビングに置いていたスマホの画面を確認して、発情から三日が過ぎているのが分かった。
番になれたからか、今までみたいに全部記憶がないわけではなく、ところどころ何があったのか覚えている。
この三日間、乱れに乱れて佳純を求めてしまった。
カッと顔が熱くなるのを感じながらバスルームに着いた俺は、鏡を見て絶句してしまった。
「嘘……でしょう……」
うなじだけだと思っていた噛み痕は、背中全体、お尻にまであった。
よく見たら腕や脚にまで付いていて、クラリと眩暈がしてしまった。
確かに噛んでくれとは言ったが、これは噛み過ぎではないだろうか。
素っ裸で唖然としながら鏡の前で立ち尽くしていたら、ガタンと音がして佳純が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
どこか寂しげな声にハッとした俺は急いでバスルームから出た。
「諒さん、……良かった。どこかへ行ってしまったような気がして……」
リビングに立っていた佳純に近づいた俺は、ぎゅっと抱きしめた。
なぜだか、佳純が迷子の子供のように見えてしまった。
「私達、番になったんですよ。どこにも行くわけないじゃないですか」
「……そうですね。すみません、久しぶりに父の夢を見てしまいまして……」
儚げな美しさのある人だが、いつもよりずっと小さく見えた。
発情期も治まったので、一旦着替えて食事を取ることにした。
「取り乱してすみませんでした。普段父を思い出すことは少ないのですが、時々夢に見てしまうことがあって……せっかくの記念の日に申し訳ありません」
佳純が手際よく作ってくれた朝食を二人で食べてから、少し落ち着いたところで佳純は俺に謝ってきた。
「いえ、そんな……。もしよかったら、お父様のこと、私に話してくれませんか?」
「実は多くを話せるほど、父とは交流がありませんでした。仕事人間で無口な人で、子供が好き、というタイプではなかったのだと思います。私が近づくといつもどうしていいか分からない、という困った顔をしていたのを覚えています。母がいなくなってから、私は食べるのをやめられなくなって……、その頃から険悪な関係になってしまいました。父は必死に私を元に戻そうとしていたのだと思いますが、結局お互いに傷つくばかりで距離が縮まることはなかったです」
珠代の病室を訪ねた時のことを思い出した。
父親との関係が上手くいかなかったことを、佳純は自分のせいだと思っているのではないか。
珠代はそのことを心配していた。
「諒さんとも行ったお祭りに、昔、父と一度だけ一緒に行ったことがあるんです。いつも厳しい人が、その日は優しくて……とても楽しかったのを覚えています。その時のことを夢に見るんです。それで目が覚めると、あれは本当だったのかなと考えてしまうんです。あの時、私の手を握ってくれたのは……本当に父だったのかと……」
「お祖母様から、少しだけお父様のお話を聞きました。不器用な人だったけど、佳純さんのことを愛していたと仰っていました」
「祖母が……ですか?」
「愛していたけど、上手く伝わらなかったと。私はお父様に実際にお会いしたことはありませんので本当のところは分かりません。でも、真っ直ぐで純粋で、面倒見も良くて……、佳純さんといると温かい心になります。きっとお父様も言葉には出さずとも、同じ気持ちだったと思います。お祭りの思い出は、お父様にとっても……楽しいものだったと、私はそう思います」
「……諒さん」
佳純は手を伸ばして、机の上にあった俺の手に重ねてきた。
少しだけ震えていたので見ると、アーモンド色の美しい目からポロリと涙がこぼれていた。
その涙は心が洗われるくらい、美しかった。
「諒さんと番になれて、本当によかった……」
何年、何十年経っても、この時の気持ちを忘れずに、お互いの温もりを感じながら一緒に生きていきたい。
寂しい時も楽しい時も、こうやって手を繋いで……
「でも、体中噛むのは、ちょっと噛みすぎかと……」
「ふふふ……諒さん相手だと、好きすぎて我慢が効かないんです」
いちおうこれは言っておかないとと、訴えてみたら、妖しく微笑んだ佳純は俺の手を取って口元に引き寄せてから、小指を甘噛みしてきた。
「どうしても、だめでしょうか?」
「ううっ……」
噛んだところを今度はペロリと舐められて、俺は赤くなって悶絶するしかなかった。
槙田は甘えてみろと言っていたが、甘えることに関してこの人に勝てるか気がしない。
「す……少しだけなら……」
佳純は嬉しそうに笑って、俺の手に頬を擦り寄せてきた。
アルファでも我慢ができる特性だと聞いていた。
それが好きな人には我慢ができないと言われてしまったら、もう頷くしかない。
こんなに好きなのだから仕方がない。
全部可愛いワガママだと思えて、嬉しいと思ってしまった。
二人だけの特別な繋がりができた日。
消えることのない愛の証。
これから長い人生を共に歩む人と、一日中笑い合って幸せな時間を過ごした。
□終□
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