上 下
32 / 52
第四章 仲良し大作戦編

②新たな目覚め。※

しおりを挟む
「これから会議が入りまくりで、今日は付いてやれないんだ。悪いが終わったら戸締りして帰ってくれないか? 印の記録は取ったから、後は任せる」

「は…はい、分かりました」

 力を直接込めてもらう例のやつは、週一から始まって、今は月一回まで間隔が伸びた。
 俺だけ先に来て、ファビアン先生に今の状態を診てもらったが、ファビアン先生はすぐに忙しそうに資料を抱えて部屋を出て行ってしまった。
 もう手順は分かっているから、チェックする必要もないのだろう。イグニスと付き合いだしたことも話してあるので気を遣ってくれたのかもしれない。

 誰が誰と付き合うなんてことは、前の世界では噂程度で聞いて想像していたものだったが、この世界では関係をハッキリさせたいのか、みんなそういう情報を詳しく知っている。
 俺がイグニスと付き合いだしたということも、翌週にはクラス中、学院中の人間が知っていた。どこかに掲示でもしてあるのかと思うほどだ。
 下位の貴族の俺からしたら、ラッキーなことであるからだろう。どこへ行っても、おめでとうなんて声が掛けられて恥ずかしくなった。

 現状としては、おめでとうなんて状態と言っていいのか分からない。
 お友達からお付き合いにステップアップして、すぐに壁に突き当たってしまった気分だ。

 分かっている。
 俺は焦っていた。
 後数ヶ月で学年が上がり新入生が入ってくる。
 という事は、主人公が入学してきて、いよいよゲームのスタートとなるのだ。
 主人公はラギアゾフ兄弟と付き合うように使命を受けているので、出会いのイベントがあり兄弟達にそれぞれ接近する。
 主人公の目的は、次期当主になる男を自分のモノにすること。
 つまりゲームの設定上のルート選択がある。
 現状、学院内ではディセルを支持する者がほとんどで、本人達は何も言わないがそういう流れが予想されている。
 主人公はディセルに近づくだろうと俺も勝手に予想しているが、何があるか分からない。
 もし、イグニスに興味を持ってしまったら……。
 俺はそれを恐れている。
 何しろ主人公パワーだ。黒いものを白く、白いものを黒くしてしまう、唯一無二の存在。
 運命的に惹かれ、求め合う流れになっている。
 俺がどこまでそれに逆らって、イグニスの気持ちが離れないように留めておけるか。
 不安でたまらなかった。

 それに俺はイグニスの心の内にまだそこまで触れていないような気がしていた。
 イグニスのことをもっと知りたい。
 俺のことももっと知ってもらいたい。
 焦る気持ちばかりが募っていたが、そういう交流が大事なのではないかと思い始めていた。

 ガタンと音がして、椅子に座っていた俺は小さく体をビクつかせた。
 ガラガラとドアが開けられて入ってきたのはイグニスだった。

「悪い、遅れた。ファビアンは会議らしいな、途中で会った。俺は学院内に魔物が出て、討伐隊と一緒に戦ってきた」

「だ…大丈夫? 怪我は?」

 学院にはラギアゾフ兄弟達に引き寄せられて出てくる魔物を倒すための討伐部隊がいる。
 オーディンの力が込められた武器を使用していて、低級の魔物なら彼らがサクッと片付けてしまうが、イグニスは自分達のことだからとよくそこに参加していた。
 パタパタと駆け寄って、イグニスの体を確認したら、イグニスにクスリと笑われた。

「俺にそんな心配をするのはテラだけだ。分かっているだろう、傷ついても自然に治癒するから……」

「……それでも、痛いのは痛いんだろう。イグニスが辛い思いをした時、何もできないかもしれないけど、側にいたい」

「テラ……」

 いつも抱きつかれるのは俺の方なので、今日は俺からイグニスに抱きついた。
 首筋の匂いを嗅いだらほんの少し汗の香りがした。イグニスのオーディンの力の匂いとはどういうものなのだろう。俺だけ分からないなんて、ちょっと悔しく思ってしまった。

「ああ……テラ……」

 イグニスも抱き返してくれた。俺より力強くてすっぽりと抱き締められると安心感に包まれる。
 難しいことばかり考えてしまうが、こうやって肌を触れ合うことが一番の解決方法かもしれない。
 温かくて気持ちいい。
 ずっとこうしていたい。

「テラ……、力を……」

「あ、そうだね。じゃあベッドに……」

「いや、このままでいい」

 いつもベッドにうつ伏せになって力を入れてもらうが、今日はファビアン先生がいないからか、イグニスは立ったまま俺のズボンのベルトを外してきた。
 抱き合った状態でイグニスは下着の中に手を入れて、直接尻の印がある場所に手を這わせた。
 そのままぐりぐりと尻を揉まれて、いつものように熱い感覚が広がってきた。

「はぁぁ……ん、イグニス……」

「ははっ…こうやってしたら、テラの気持ち良さそうな顔が丸見えだ」

「んんっ…恥ずかし…」

「もっと見せてくれ…テラ、可愛い」

「んっ、はぁぁ!!」

 急にぐわっと尻を強く掴まれて、濃い力が流れ込んできた。
 どくどくと血の流れとともに、身体中に熱が行き渡っていく。

「ああ…だめ……イグニス……んんっ」

 あまりの快感に耐えきれなくて顔を上げたら、イグニスは唇を重ねてきた。
 口内に入り込んできた舌が、俺の舌をぐりぐりと愛撫して口の中も快感で熱くなっていく。上も下も気持ちよくておかしくなりそうだ。
 当然アソコは急速に硬度が増して、めきめきと勃ってしまった。
 イグニスのソコも反応していて、硬くなった下半身を押し付けられたら、お互いのモノが擦れて、ぴりぴりと痺れる快感に体を震わせた。

 イグニスは片方の手で俺の尻に力を入れながら、片方は俺の前に手を入れてきて、直接アソコを掴まれてしまった。
 こんな快感なんて経験したことがない。
 前を少し擦られただけで、もうイキたくなってしまった。

「あっ…あ、あ、イイっ…やっ……だっ…すぐに…イちゃう……」

「いいぞテラ…、テラがイク時の顔、見たい」

「イグニス……あっ…あンっ…いっ…イク……あっ…っぁぁーーーーー!!」

 ガシガシと擦られたら、気持ち良過ぎて目の前がチカチカした。我慢なんて出来ずにぎゅっと目をつぶったまま腰を揺らしながら達してしまった。
 イったばかりの敏感なペニスをイグニスはまだ擦ってくるので、射精がとまらない。
 何度もびゅうっと勢いよく飛ばして、イグニスの服まで飛び散ってしまった。

「テラ…、可愛い…テラ」

 達した後の気だるい俺の顔に、イグニスがキスの雨を降らせていく。眼鏡までベロリと舐められた。その光景がエロ過ぎて心臓のどきどきが止まらない。

「服……汚れちゃった…」

「あーいーよ、そんなの。テラのだからそのままでいいくらいだ」

「なっ…ばか、何言ってんの?」

 ぐったりと力が抜けてしまった俺を抱えて、イグニスはベッドまで移動した。
 いつもそれほど時間はかからないので、印に力を入れるのは終わったらしい。

 ベッドに寝かされたら、イグニスは俺の服を直してきた。きっと前回のことがあって無理はさせたくないと思ってくれているのだろう。
 だるさを感じたが、このまま終わりたくなくて俺はむくりと起き上がった。
 すでに天を向いているイグニスの起立に触れると、イグニスの体がわずかに揺れた。

「ね、見ていい?」

「テラ…、この前……」

 今度は俺がベルトを外しながら、イグニスを見上げた。

「ごめんね、前回気絶しちゃって」

「いや…、あれは俺が無理をさせたから…」

 やっぱりそう考えていたのだとクスリと笑ってしまった。

「違うって…、イグニスのが…その、すごくエロくて…興奮し過ぎたんだ。鼻血出たんだし、そういうことだろう」

「テラ……お前、たまにとんでもないな…」

「今日は大丈夫、ちゃんと見るから…」

 イグニスの下着をくつろげると、中からボロンと大きな陰茎が飛び出してきた。
 そびえ立つ剛直を目の前に息を呑んだが、ぷっくりと膨らんだ亀頭が可愛らしく思えて指のはらでつんと触れてみた。

「っ……」

 イグニスから息を漏らす音が聞こえると俺のテンションもぐっと上がる。
 手でしっかりと掴んで顔を近づけた。

「…ん? あれ、これ傷?」

 前回はちゃんと見ることができなかったが、陰茎の裏筋の辺りにアザのような黒いモノが見えて何だろう指で擦ってしまった。

「ああ、それが印だ。オーディン神の炎を表す形になっている。……普段はよく分からないんだ」

「なっ…なんてところに……!」

 おいおい遊び過ぎだろうという位置に印が刻まれていた。
 大きくなった状態でないと確認できないなんて、俺がノリで見せてくれなんて言っても。それはみんな無言になって部屋を出ていくわけだ。

「すご…確かに、よく見たら火が燃えてるみたいなマークだ。へぇ…デザインはカッコいい。でもこれじゃノーベンとディセルのは見られないな」

「っっ、当たり前だ。俺以外のやつのなんて…」

「ふふっ、俺はこれが見れたから十分だ」

 何もかもが愛おしく思えて、俺がそこにキスをしたら、イグニスが濃い息をはいた。
 キスだけじゃ足りない…、もっと、全部俺のものにしたい。

 ぱっくりと口を開けた俺は、イグニスのモノにかぶりついた。

「て…テラ…」

「ふ…で……か…ひ……」

 さすがに全部俺の口には入らない。
 先端部分から奥まで頑張って頬張っても、半分くらいがやっとだった。

「ああ…テラが……俺のを……やばい」

 恋人同士のエトセトラで読んだ知識を総動員して、ぺろぺろとキャンディみたいに舐めてみたり、掃除機みたいに吸い込んだり、手を使って擦りながら亀頭に吸い付いたりしてイグニスに気持ちよくなってもらおうと頑張った。
 イグニスは小さく息を漏らしていたが、俺が必死になって頬張る姿を見て興奮してくれたみたいで、硬度はどんどん増して俺の頭を掴みながら腰が揺れ始めた。

「くっ……テラ……、そろそろ……」

「んっ…だ……して」

 俺の下手くそな口淫でイグニスが気持ちよくなってくれているのがたまらなく嬉しい。
 夢中になっていたので、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだったが、このまま離したくないといっそう唇に力を込めて吸い付いたまま頭を動かした。

「ハァ…ハ……ァ……、て……ら、離して…くれ」

「んん………まま……して」

「テラ……くっっ……っっ!」

 外に出そうとするイグニスと、口の中に出して欲しい俺でお互い譲らなかった。
 イグニスが引き抜いた勢いで爆ぜて、勢いよく飛び出した白濁は俺の顔にぶち撒けられた。

「ハァハァ…ァ…てっっ、テラすまない! 顔に……!!」

 ほぼ顔全体にかかった。
 顔に出されるなんて屈辱的な行為にも思えるが、イグニスのモノを浴びた瞬間、全てを享受したみたいでたまらなく興奮してしまった。
 眼鏡についたモノがぬるりと滑っていき、ぽたぽたと口元に落ちていく。
 それが何ともエロく思えて、心臓が壊れそうなくらい揺れている。
 生温かくぬるついたソレを指ですくってペロリと舐めてみた。

「ううぅ…にがっ……」

「ばっ…ばか、舐めるなんて……。待ってろ今拭くものを……」

 イグニスは慌ててベッドサイドに置かれていたタオルを取って俺の顔をゴシゴシ拭いてきた。眼鏡を取るのも忘れているのでよほど慌てているに違いない。

「ああっ……もったいない」

「テラ、お前な……」

 どうしよう。
 どきどきが止まらない。
 今の快感が忘れられそうになくて、俺はイグニスの手を掴んだ。

「イグニス…今のすごい良かった…、お願い、もう一回」

「は? テラ……なっ……」

 イグニスの目は驚きで見開かれていた。
 だってそうだ。
 アレを顔にかけられた瞬間、俺も達していたから……。
 シーツの上には俺が放ったモノが水溜りのようになっていた。

 何だか思ったのと違う方向で、目覚めてしまったような気がした。








 □□□
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます

syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね??? ※設定はゆるゆるです。 ※主人公は流されやすいです。 ※R15は念のため ※不定期更新です。 ※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?

秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。 蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。 絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された 「僕と手を組まない?」 その手をとったことがすべての始まり。 気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。 王子×大学生 ――――――――― ※男性も妊娠できる世界となっています

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? ※エロあり。モブレなし。

処理中です...