取得霊感

富士

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ロッカン

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日曜の早朝に着信がなる。

『おはよう!ヨネスケ。今日空いているか?』

ミライさんからだった。


『おはようございます。空いていますけど何かありました?』

『それはよかった。位置情報を送るから12時までそこにきてくれ。』

『わかりました。』

急な呼びかけだったけれど特に用事のない俺は送られた位置情報に向たことにした。

『ちょっと出かけてくるけど留守番よろしくなコメ』

玄関のドアを開けようとしたが開かない。
鍵はしまってないのにおかしいな。
しばらくドアノブをガチャガチャし押したり引いたりしていた。
5分ぐらいそれをやっているとようやく開いた。
ドア枠が歪んでいるのか?
事故物件というより欠陥じゃないかこれ。

そう思い現地に向かった。

車で2時間そこは田舎の山だった。

『よく来てくれた。今日はここで取得霊感の授業をするぞ。』


ハマサキ、カトウ、ササキも来ていた。


『おい!ミライさん!あの事故物件なんなんだ。睡眠の邪魔しかされないぞ。』

『僕も怖すぎてつらいです。』

『私もみんな同じ人に見えて嫌です。あの建物。』

来て早々みんなはミライに対して文句を言い出していた。

うちは特に怪奇的な事はないが毎日悪夢を見るようになり睡眠不足になっていた。

『事故物件なんだからそんくらいなきゃ困るくらいだ。そのうち対処できるようになるさ。』

気に入らない表情の者達。

『今日はこの山にある滝に行き、ただそこの滝に打たれるって簡単な研修だ。』


『着替え持ってきてませんよ。』

『この死装束を着てやってもらうから大丈夫だぞ!』

そして俺たちは滝に向かった。

『君たち!ニャンコに名前をつけたか?』

『ちゃんとつけましたよ。』

『なんか意味があんのかミライさんよ!アレルギーがつらいんだが』

『そのニャンコ達が君達に特別な力をあたえてくれるから大事に育てるんだぞ!』

『っち。ホントかよ』

そしてミライさんのいう滝に到着した。

『ここは鬼達磨の滝。特別な力がある滝だ。今日は2時間うたれてもらうぞ。』

俺達はただひたすら冷たい滝に2時間うたれていた。


『あいつら寒そうだなー!』

座っているミライ。

ミライには生徒たちとは別に滝に飛び込む物がみえていた。

2時間滝をくらい休んでいるとササキが話しかけてきた。

『ヨネダさん。僕むいてないかも。
毎日こわくてしょうがない。』

怯えている様子のササキ

『ミライさんが言うように霊感取得はそういうの乗り越えなきゃ得られないんじゃない?ササキ君はどうして霊感を取得したいんだい?』

『僕は霊がホントに苦手で万が一でくわしたら自分で戦える力がほしいんだ。』

『それなら霊感を取得しなきゃ見えないんだし取得しないほうがいいんじゃないかな?』

『もう霊の存在を知っちゃったからそういうわけにはいかないよ。』

『そういうもんなのかなぁ』

『私も怖い。』

ハマサキも話しに入ってきた。

『私の家系はみんな霊が見えていてお母さんがそれなら人の役に立つビジネスできたらいいねって言われてきたんだけど』

みんな滝に打たれる寒さよりも今の事故物件での生活にメンタルがやられていた。

『君たちだいぶ今の生活にメンタルがやられているようだが。』

『…』



『触感は痛い
視覚は眩しい
味覚はまずい
聴覚はうるさい
嗅覚はくさい
そして霊感は怖い

痛いから体のピンチがわかる
眩しいけど必要な光 
味で体に毒だとわかる
うるさいけど聞こえてくる情報
匂いでわかる危険
恐怖だけれども確かにそこに存在している。』

『6感を鍛えて取得霊感をしプロになることは誇らしい事だ。誰にでもできるビジネスではない。』

『これからも私が呼びかけて訓練をしていくぞ!君達がレベル2になるまでは』


『あのどれくらいでレベル1になれますか?ヨネダさんとハマサキさんはレベル1みたいなのですが僕と何が違うのでしょうか』

『ハマちゃんは生まれもっての才能だね。ヨネスケは経験がレベル1にしているな。』

『経験ですか?』

俺は何か特別な経験をしたのだろうか。



しているな。

妻、子供が殺されるなんて普通の人はそうそう経験することがないだろう。



それから俺達は頻繁にミライさんからの呼び出しで訓練を受けていった。

ある時は夜中に呼び出され廃棄の肝試し

寺に呼び出され何時間も座禅

虫の鳴き声を聞き比べる

ミックスされたジュースに何が使われているかテスト

呪いのDVDというみたら1週間で死ぬという映像も見せられた。



俺は家でコメと遊んでいた。
寝ても未だに慣れない悪夢を見るのであまり寝なかった。

なにか寒気を感じた。

すると

『あんたが寝ないと仕事できないじゃない。』

中年の女性が俺の前に急にあらわれた。

『うわぁぁ』

いきなりの事で驚いた俺は家からでて逃げようとしたが玄関のドアが開かない。

『くそ!開かない。開かない!』

『ドアを開かなくしてるのは私じゃないわぁ。ふふふ。』

そう不気味に笑う中年女性

『しかしダメじゃない。いくら怖いからってコメちゃんを置いて逃げるのは。ミライちゃん悲しむわよ。』

俺は落ち着きをとりもどし

『あんた霊か。俺が見えるって事はレベル3か。』

ミライのレベル3をみても反応するなという言葉を思い出す。

(しまった。)

『あら大丈夫よ。私は協会の専属霊、ヨルヅメ。危険ではないわ。でもこういう事しちゃ恐怖心が弱くなるってミライちゃんに怒られるわね。』

『キタマクラみたいなものか。』

『あんた全然寝ないし。私は悪夢を見せる能力なの。ずっと暇だったしーあんたもすでにレベル1みたいだからお話しでもしましょうよ。』



ハマサキ宅

『呪いのDVDって変なもの見せられたけど私達7日後に死ぬのかしら。ミライさん何考えてるかよくわかんないなー。クロちゃんをくれたのは嬉しいけど。』

クロちゃんと遊びながらテレビをみているハマサキ。


するとテレビに出ている出演者の顔がだんだん変わる。

あっというまに出前のおじさんの顔になった。

『テレビまでこのおっさんになるのか。ちくしょう!』

だんだん恐怖になれてきて怒りにかわってきたハマサキだった。

すると抱いていたクロちゃんの顔もおっさんに変わっていった。

『ぎゃあああ』


カトウ宅

カトウは霊など気にせずトラと仲良くなっていた。

キタマクラにテレビを壊され睡眠も邪魔をされ暇を潰すにはトラと遊ぶくらいしかなかった。



ササキ宅


ガチャガチャ

ガチャ

ガチャガチャ

『これで今日の仕事は終了。なんで霊が働かなきゃいけないんだ。』

勤務を終えて帰るキタマクラ。



『こわいなぁ。せめてシャワーが急にでるのはやめてほしいな。止めにいくのが怖い。』


キタマクラはササキ宅ではドアノブをガチャガチャっとやるだけだった。
しかしキタマクラとは別の霊の仕業なのかシャワーが勝手にでていた。
それが別の霊仕業という事はササキはしるよしもない。


ザーっという音が聞こえ風呂場に向かうササキ


『またか。こわいなあ。』

風呂場の鏡に髪の長い女がうつっていたがササキは気付かなかった。

ササキが寝ていると顔に長い髪の毛が垂れてくる。

『うわぁ。』

起きて顔払うササキだがそこには何もいなかった。

ザーっと風呂場からまたシャワーの音が聞こえる。


『またか。』

シャワーをとめに行くササキ。

ベッドに戻ると布団が明らかにこんもりしていた。


(あれ?これって)

明らかにそこには人が寝ている気配があった。

ミライの忠告を思い出す。

君達が見える霊はレベル3かレベル4だ。

見えても極力その霊に対して反応をするな。
死ぬぞ!

(僕は霊感レベル1になったのか。見えるって言う事はそうだよな。)

この布団をめくればその正解がわかる。

鼓動が高鳴るササキ

(めくりたい。たしかめたい。でもみえたらその霊の呪感レベルは3だ。)


恐怖心でおかしくなりそうなササキだか自分の訓練の成果を確かめたく布団をめくる。

ばさっ!


勢いよく布団をめくるとそこには仰向けで目を見開いている女性がいた。

『!?』
驚くササキ

しかし自分はレベル1になれたと実感できた。


『いいかげんにしてよぉおお!』

急に女が狂気的な顔でササキにむかって襲いかかってきた。

『ひいぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!』


やばいやばい。

『いいかげんにしてよぉおおお!』


ササキは振り払おうとしたが女のほうから離れ台所に向かって歩いていった。

『ひぃぃ!ごめんなさい。成仏してください。ごめんなさい。』

ササキを背にして女は台所で何かをとろうとしている。

そして振り返り

『いいかげんにしてよぉおお!』

包丁を手にしてササキに襲いかかる。

『いやー!!』




















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