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【第二章・叛 逆 の 双 星】
Ж-43 炎 劾 双 劫 ~W・Tyrant Fifth Flare~ ④
しおりを挟む「フゥ――」
安堵したら膝の力抜けた。 初めての魔導で流石に魔氣消費し過ぎたか。
素早く傍に寄ったカリムにオレを担ぐよう命令し、
取り敢えず火から逃げる体で深淵のギルドとやらに行くよう指示する。
「で、 でも、 ソコも燃えちまったらどーすんだよ!?
集落まで届いたらその途中にあるギルドだってよ!」
だぁ~から、 ソレはもう大丈夫なんだって、
やっぱ説明しなきゃダメか?
どーでもいーけどおまえもうちょっと 「担ぎ方」 ってのがあるだろ?
右腕で肩の上にって、 これじゃ完全に “拐わし” じゃねーかこの体勢。
「火は、 何で燃えるか知ってる?」
担がれたお腹に振動を感じながら緩慢に問う。
「はぁ? 火は火じゃねーか。 最初っから燃えてるモンだろ?」
そっからかよ、 こりゃ言っても解んねーかもな。
「何かの文献で読んだ事あるけれど、 もしかして、 空気?」
はい正解。 GJだと担がれながらセリナをビシッと指差す。
「その通り。 だから大規模火災の場合半端に水撒いたりすると、
却って蒸発した酸素が増えて余計に被害が拡大するコトがある。
そーゆー時にはその元を絶っちまうのが一番手っ取り早い。
だから消火したい火災の 『反対側』 から同様の火を熾して、
災害同士空気の共喰いさせてやるんだよ。
オレらの世界じゃ “バック・ファイア” って呼んでる」
「そういえば、 なんか火の勢いが弱まった気が……
ハッ! 両方の炎が動きを止めて膠着してるわ!」
一飛びで木の枝に乗ったセリナが驚きの声をあげている。
異能の時は声出すなっつってんのに、 後で説教だな。
「無風なのが幸運だったな。
後は放っときゃあ勝手に鎮火すんだろ。
ここより先に進まなきゃあ後はどーでもいい」
「どういう意味だよ?」
やがて速度を落とし歩き始めたカリムが疲れた様子もなく訊く。
「オレがブッ放した火球十発。
何の被害も無かったと想うか?
もし生み出した火流の先に冒険者がいたら死んだだろうし、
その逃げ道も塞いだコトになる。
一応魔那の気配は探ったけど燃焼圏内全域をカヴァー出来るワケじゃない。
生きたまま炎に巻かれて焼死か、 空気の無い真空状態で窒息死か、
いずれにせよロクな死に方じゃねー。
でもオレはそれで構わないという気持ちで魔導を撃った。
他に方法なんて無かったからな」
沈黙と緊張。
流石に引いたか? でもオレはそーゆーヤツだよ。
自分に関係の在る奴と無い奴なら、
オレは躊躇いなく前者を取る。
結果後者が犠牲になろうとも、 ソレしか手段が無いのなら。
非道と責めるなら勝手にしろ、
キレイゴトに囚われて何も護れないよりずっと良い。
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