上 下
1 / 1

因果は巡るよどこまでも

しおりを挟む
140字SS お題『見逃すつもりもないけれど』

 いた! 今日もかわいいDKの背後でよからぬことをやっている。見逃すつもりもないけれど、突き出すつもりもない。
 にやける顔を隠しつつ、男の背後を取る。まずは手の甲で肉付きを確認。うん、いい尻だ。DKで興奮した前の硬さもいい。
 俺は震え出した男のジッパーの間へ、手を差し入れた。

(診断メーカー「140文字SSのお題」 https://shindanmaker.com/587150 より)


------------------------------


 退屈な朝の出勤電車は今日もそこそこ混んでいる。都会の缶詰のような状態にならないのは救いか。ただ一駅一駅の間隔が長いのは田舎の証だ。窓の外には住宅だけでなく、田んぼも見えたりする。

 気がついたのはいつだろう。
 男子高校生のようすがおかしい。何かに耐えているかのように顔を赤らめ、唇を引き結んでいる。その唇が徐々に開かれ、目が閉ざされた。かすかにまなじりに光るものがある。
 まるでセックスしているようだ。
 そう思ったとき、少年の背後の男に目が行った。
 薄ら笑いを浮かべ、少年にピタリと身を寄せている。

 ああ、痴漢か。
 少年の反応からすると、結構えげつない行為に及んでいるようだ。
 位置を少し変えて、男の顔を見た。
 脂下がっているのはいただけないが、俺が想像する痴漢よりはずっと若くてイケメンだ。スーツを着ているところを見ると会社員の朝の運動か?

 少年が顔を引きつらせて、何か声を漏らしたのがわかった。次に絶望の表情を浮かべたのも。それに対し男は満足そうに愉悦の表情を浮かべ、体を震わせている。

 おもしろい。
 俺に少年趣味はないが、スーツ男は好物だ。
 逃げられない電車の中、他人の目が向くかもしれない中で行為に及ぶとは、さぞ興奮するのだろう。
 いたいけな青少年にそういうことをするなら、自分がされる覚悟もあるよね。
 俺はその男をマークすることにした。

 最初の二日で乗車区間を把握した。その後の一週間で乗る電車と車両を把握した。
 狙う少年はだいたい決まっている。曜日は決まっていない。その日の気分らしい。
 事に及ぶのは、少年を追い詰めた右側ドアが開かない区間。右側ドアが開くと降りて逃げる。
 必要なことはこのくらいか?


 その朝、俺はグレーのスーツを着た。男からは無害なモブに見えるように。意思のないその他大勢だ。ビジネスバッグにはショルダーベルトを取り付け肩にかける。
 さあ、出勤だ。

 早めについたホームで男を捜す。
 いた。
 紺色ブレザーの少年の後ろに並んでいる。あれは確か四駅くらい先の私立高校の制服だ。狙い目の学校というわけか。
 ホームに電車が滑り込んできた。俺は行動を開始した。

 男は慣れたものだった。少年を二駅開かないドア側へ追い込み、やんわり体で押さえると、さっそくブレザーの下の胸と股間に手を差し入れてる。
 少年は嫌がって身をよじるが、男には誘っているようにしか見えてないだろう。
 じゃ、こっちも行かせてもらいましょうか。今日は主役に仕立ててあげるよ。

 カーブでよろけた振りをして、男の後ろにつく。バッグで手を隠しながら、手の甲で尻を確かめる。
 おお、いい弾力だ。無駄がない。
 男はびくりとしたが、まだ少年に意識も手も向いている。
 こぼれそうになる笑いをかみ殺して、右手で男の尻肉を掴んだ。
 ビクンと男の体が跳ねた。それを上着の裾から忍び込ませた左腕を巻き付けて押さえる。指先はもちろん乳首だ。ワイシャツの上からカリカリと掻いてやると、面白いように硬く尖った。
 相当に一人遊びしてきたのかな。
 尻肉から割れ目に指を押し込み、後孔のあたりを指先で弄りながら肉を揉んでやる。男の腰が揺れだす。息が上がり始め、首筋が紅潮してきた。
 興奮してきたね。

 少年が男の異常に気がついたようだ。手の動きが止まったからだろう。肩越しに俺と目が合った。
 少年は一瞬で状況を察したようだ、立場が入れ替わったことに。
 俺は少年がこの場から逃げ出すと思っていた。
 ところが少年はにたりと笑った。

 一駅めに着いたところで、男を少年のいた隅に追い込んだ。
 尻から会陰、乳首を執拗に責める俺を、少年は隠すようにドアに寄りかかって読書を始める。
 俺は遠慮なく、右手を男のスラックスの前に移し、ファスナーを下ろした。ワイシャツの前裾も引き出してしまおう。
 男が体をうごめかして逃げようとするので、思いきり乳首を抓り上げる。
「んっ」
 抑えた声が可愛いじゃないか。耳に心地いい。
 俺はすっかり硬くなった自分の股間を、男の尻の割れ目にこすりつける。腰のあたりを自分の背に回したビジネスバッグで隠しながら。

 手に触れた男の下着は張りつめてぐっしょり濡れていた。
 このままでは気の毒だ。抜いてやらないと。
 前の開きの中へ手を差し入れる。
 すっかり熱を持った雄は長さも太さもなかなかのもんだ。自慢の逸物だろうな。外へ出して自由にさせてやろう。
 ぬるぬるの鈴口をくりくりと撫でてやりながら、同じように乳首もくりくりと捻ってやる。ビクビクと震える雄をゆっくりと扱く。

 また駅に止まった。背後で人々が出入りするざわざわとした気配がある。そのせいで男の気がそれた。またあがこうと腰を捻る。
 駄目だよ、気を散らしちゃ。それに雄丸出しで人に助けを求められるのかい?
 意識をカリカリと乳首を掻くことで引き戻す。
「や、め……て……」
 微かな声は震えていた。喧噪の中では俺と少年にしか聞こえなかっただろう。
 俺は耳の後ろでふふっと笑い、再び男を扱きだした。少年の目は笑みの形に弓なりだった。
 さあ、声を上げてみてくれよ。どんな風に啼くか、ぜひ聞きたい。

 俺は尖った乳首にチクチクと爪を立てながら、一気に扱き上げ始めた。
 手の中で硬度が一気に増す。
 男はついに、あっあっと声を漏らし始めた。脚もガクガクしてきたようだ。
 お行儀が悪いので、胸を抓って、息をのませる。が、その効果もわずかの間のこと。
 はっはっと切迫した息づかいに限界が来るのがわかった。
 真っ赤に染まった耳に熱く吹き込む。
「イけ」
 扱く速度を上げ、思いきり胸を抓ると、男が身を仰け反らせて、びくんびくんと全身と雄を震わせた。

 手についている白濁を、男のワイシャツになすりつける。
 男の肩が震えていた。すすり泣いているらしい。
 俺は笑った。
 少年も本の陰で低く笑っているようだ。
 閉まりっぱなしだったドアが左右に開いた。俺と少年は即座に降りる。
 乗り降りする人の影で、男が隅にしゃがみ込むのがちらっと見えた。
 いい思いをさせてやったのに、不満だったのだろうか?
 ドアが閉まり電車は走り出した。
「あの……」
 少年の声だ。俺は唇の前に人差し指を立てる。少年は頷き、頭を下げると身を翻した。


 俺はトイレの個室に直行した。
 なんせ男をイかせてやっただけで、俺自身の熱は発散できてない。
 俺は犯した罪の一部始終を思い出しながら、息を荒くしながら扱いた。
 こわばった男の体、震える声、イく時の痙攣。
 人を支配した背徳感、見られるかもしれないギリギリのスリル。
 本当は誰かに気づかれていたかもしれない。そう思うだけで得も言われぬ興奮が押し寄せる。
「んっ」
 どくどくと白濁がとんだ。最高だ。

 きちんと便器を拭いて、と。
 さて、家に帰るか。
 今日はこのお楽しみのためだけに、有給休暇を取ってドブネズミスーツを着たのだ。
 個室のドアを開けてはっとした。
 そこに、にやにや笑う男が一人が立っていたのだ。


「駄目じゃないですか、あんな面白そうなこと、何の相談もなしに」
 俺は舌打ちをした。後輩の榊原だ。
「お前、仕事は?」
「有休の連絡入れました。あんなの見せつけられちゃ、仕事する気になりませんよ」
 俺はビジネスバッグを肩にかけ直す。
「盛ってんじゃねぇよ」
 グレーのスーツの袖口を引っ張られる。
「行きましょう、信田しのださん」
 どこへかって?
 決まってる。
 ラブホだ。


おしまい


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

kkl
2020.06.05 kkl

これはロシアのマトリョーシカを思い出させます

夏生青波(なついあおば)
2020.06.06 夏生青波(なついあおば)

面白い発想ありがとうございます!
確かにそうかもしれません!!

解除

あなたにおすすめの小説

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

痴漢に触られてーif もしもあの時こうしてたらー

ユタエンシス
BL
 少年はある日痴漢に遭う。 ちょっとずつ触れられるたびになんだかよく分からない気持ちになる。  そんな中でほんの少し好奇心に負けてしまったーーーー。  そんな少年の行動の先にあるifの物語です。 ✳︎痴漢、ダメ絶対!  …ですが今の所、電車プレイではないです。 ✳︎本編からの流用が多いです。ちょっとの違いで転がり落ちてきます。 ✳︎エッチ度高め。無理矢理が多くなるのでお気をつけ下さい。 ✳︎不定期更新です。

アホエロまとめ

あたか
BL
色んなシチュエーションのアホエロ話詰め。 先生×生徒、リーマン、執事×坊っちゃん、保健医。トイレで……。などなど モロ語、乳首責め。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

満員電車

安積
BL
おじさん×美形 満員電車内で痴漢されちゃう美形のお話。 ただのアホエロです。 頭空っぽのまま読めます!

魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される

日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。 そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。 HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

癖になる刺激~痴漢に溺れる学園生は淫らに犯される~

あいだ啓壱(渡辺河童)
BL
サラリーマン(痴漢)×少年。BL官能小説です。ある日、学園生である純は、学校帰りに痴漢に遭ってしまう。しかし、その痴漢は陰嚢を揉み、勃ってもぎゅっと握って乳首を弄るだけで、肝心の陰茎を扱いてもらえない…。しかし純は、自分が少し腰を揺らせば快感が得られると知ってしまい…? ※R-18作品です。 モブ攻め/快楽堕ち/乳首責め/陰嚢責め/陰茎責め/アナル責め/言葉責め/鈴口責め/拘束/媚薬/3P、等の表現がございます。ご注意ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。