86 / 102
恋じゃなくて、多分、愛じゃない
(7)
しおりを挟む
ふいに藤原さんの言葉がまた脳裏をよぎった。
付き纏ったり脅迫したり。まさか。
もし、ここに隠れていることを悟られれば一体、何をされるのだろう。
警察沙汰寸前、というとやはり、暴力沙汰ということだろうか。だが、それなら男性である俺の方がまだ彼女を傷つけずに事を終えられる可能性はある。
咄嗟に何故、隠れたのか。自分でもわからなかったが、隠れてしまったことはもう取り返しようのない事実だ。
ならばここから潔く出ようか。むしろ彼女が興奮していない今、姿を現した方が得策ではないのだろうか。
「戸崎先生~?いるのはわかってるんですよ?私、ただ先生とお話したいだけですから、そんなに怯えないでください~」
…怯えているのか、俺は。
そう見えているらしい自分がどこか滑稽だと思った。よく考えてもみれば、悪いことをしたのは自分ではないはずだ。
なんだか酷く理不尽な気持ちで満たされた。何故、俺が、どうして。
克巳ほどではなくとも一般的にはそれなりにデカい図体を丸め、クローゼットに縮こまっている自分が惨めで情けなく、そうさせた扉の向こうにいる彼女に激しい怒りを覚えた。
…俺だって、やられっぱなしじゃいられない。
「戸崎先生~?そろそろいいんじゃないですか~?出てきてくれても!」
甲高く刺激する声はクローゼットの扉越しからはっきりと聞こえる。
震えそうになる手をクローゼットの扉に掛けた。
だが、その手は自然と離れていく。扉がスーッと開いたのだ。
「かくれんぼ、ですか?戸崎先生」
まるでそこにいたことがわかっていたかのように、不気味な笑みを浮かべながらそう言った彼女は側から見てもきっと気味が悪かっただろう。
クローゼットの中に身を縮まらせている自分も自分だけれども。
恐怖のあまり気道が狭くなり、ヒッと鳴りそうになった喉を寸前のところで堪え、言う。
「し、東雲先生。こんなところで、どうしたんですか?」
「どうしたって戸崎先生、本気で言ってます?だとしたらかなり、お馬鹿さんですよねぇ?」
足を出した方がいいだろう。が、出せない、というか全身がまるで石にされたかのように固まってしまっている。
部屋の中を意味もなく、彼女はゆっくり歩き回る。
付き纏ったり脅迫したり。まさか。
もし、ここに隠れていることを悟られれば一体、何をされるのだろう。
警察沙汰寸前、というとやはり、暴力沙汰ということだろうか。だが、それなら男性である俺の方がまだ彼女を傷つけずに事を終えられる可能性はある。
咄嗟に何故、隠れたのか。自分でもわからなかったが、隠れてしまったことはもう取り返しようのない事実だ。
ならばここから潔く出ようか。むしろ彼女が興奮していない今、姿を現した方が得策ではないのだろうか。
「戸崎先生~?いるのはわかってるんですよ?私、ただ先生とお話したいだけですから、そんなに怯えないでください~」
…怯えているのか、俺は。
そう見えているらしい自分がどこか滑稽だと思った。よく考えてもみれば、悪いことをしたのは自分ではないはずだ。
なんだか酷く理不尽な気持ちで満たされた。何故、俺が、どうして。
克巳ほどではなくとも一般的にはそれなりにデカい図体を丸め、クローゼットに縮こまっている自分が惨めで情けなく、そうさせた扉の向こうにいる彼女に激しい怒りを覚えた。
…俺だって、やられっぱなしじゃいられない。
「戸崎先生~?そろそろいいんじゃないですか~?出てきてくれても!」
甲高く刺激する声はクローゼットの扉越しからはっきりと聞こえる。
震えそうになる手をクローゼットの扉に掛けた。
だが、その手は自然と離れていく。扉がスーッと開いたのだ。
「かくれんぼ、ですか?戸崎先生」
まるでそこにいたことがわかっていたかのように、不気味な笑みを浮かべながらそう言った彼女は側から見てもきっと気味が悪かっただろう。
クローゼットの中に身を縮まらせている自分も自分だけれども。
恐怖のあまり気道が狭くなり、ヒッと鳴りそうになった喉を寸前のところで堪え、言う。
「し、東雲先生。こんなところで、どうしたんですか?」
「どうしたって戸崎先生、本気で言ってます?だとしたらかなり、お馬鹿さんですよねぇ?」
足を出した方がいいだろう。が、出せない、というか全身がまるで石にされたかのように固まってしまっている。
部屋の中を意味もなく、彼女はゆっくり歩き回る。
2
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
キスから始める恋の話
紫紺(紗子)
BL
「退屈だし、キスが下手」
ある日、僕は付き合い始めたばかりの彼女にフラれてしまった。
「仕方ないなあ。俺が教えてやるよ」
泣きついた先は大学時代の先輩。ネクタイごと胸ぐらをつかまれた僕は、長くて深いキスを食らってしまう。
その日から、先輩との微妙な距離と力関係が始まった……。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる