俺の彼氏

ゆきの(リンドウ)

文字の大きさ
上 下
98 / 105
俺の彼氏が家出した

(4)-2

しおりを挟む
「哲太、今日は帰り遅かったな」

 玄関を開けてただいまと言うと、叔父からそう言われた。
 時刻は午後の八時だ。

「連絡、見なかった?」
「見たよ?ただ、哲太にしては珍しいなと思ってな」
 彼女?と聞かれ、首を振る。

「南沢と遊んでたんだ」
「ねえ、雪くんと?」

 もう、名前呼びか。と、やはり陽キャ族の凄さを感じずにはいられない。

「で?何して遊ぶんだ?今どきの高校生は」
「別に普通だよ。映画行ってゲームセンター行って、公園ぶらぶらして」
 正直に言うと叔父は「それが普通か?」と言う。

「家に呼べば良かったんじゃないか?」
「いや、それは」
「部屋が汚いの見られたくないとか?」
 ニヤニヤしながら問いかけられ、けれど否定する。榊は部屋に無駄なものを置かない習慣がある。

「仲いいんだな、本当に」
「…そうなのかな」

 つい、ポツリと呟いていた。叔父に促され、ソファに腰を下ろす。

「悩みか?哲太」
「悩みってほどじゃないけど」
「ほどじゃないうちに話すと後々、楽になるぞ」

 たしかに、と納得する。叔父はいつも、ヘラヘラしているように見えるが実のところ、いつも的を得た発言をしてくれる。

「南沢と友達なんだけど最近、友達に抱かない感情を抱いているような気がするんだ」
「友達に抱かない感情?」
「今日もそうだった。俺、他の友達といても夕方には家に帰るようにしてる」

 それは榊なりのルールだった。言われたわけでもないがただ、なんとなく、夕飯前には帰った方がいいという感覚がしていた。

「でも今日は帰りたくないなって思った。南沢のこと、帰したくないって思ったんだ」
「ほお。それはどうしてだ?」
「…多分、まだ一緒にいたかったからだと思う。最近、南沢といるとそうやって思うことが多い。俺、変なんだよ」

 すらすらと言葉が出てくる。一度、封を切ると戻せない袋のように中身がぽろぽろと零れていく。

「哲太、それはちっとも変なんかじゃないよ」
「え?」
「誰かと一緒にいたいって、そういう気持ちになれたことに俺は感動してる」
「感動って、大袈裟じゃない?」
「…哲太を小さい頃から見てきた。哲太の母親が辛い時もお前は強かった。けど、俺はその強さが心配だったんだ」
「心配ってなんで?」

「強い人は時に弱い自分をさらけ出せなくなるんだ。弱い自分を認めるのが怖くなる。そう思ったこと、ないか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

倫理的恋愛未満

雨水林檎
BL
少し変わった留年生と病弱摂食障害(拒食)の男子高校生の創作一次日常ブロマンス(BL寄り)小説。 体調不良描写を含みます、ご注意ください。 基本各話完結なので単体でお楽しみいただけます。全年齢向け。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

ポケットのなかの空

三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】 大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。 取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。 十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。 目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……? 重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。 *-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-* ・性描写のある回には「※」マークが付きます。 ・水元視点の番外編もあり。 *-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-* ※番外編はこちら 『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182

足立と七瀬。 オレのこと好き?イケメンからの告白は、カーテンに煽られ消えた

あさぎ いろ
BL
夏休み初日の出来事。 学校No.1美麗男子の足立は、密かに想いを寄せている相手、七瀬が自分の机に伏せて寝ているのを発見する。 声をかけてしまう、もしかして、オレの事好き? その問いかけは、風とカーテンに阻まれ、消えていく。 そこから、2人の日常が重なり始める。 淡く、苦い、恋愛へと発展していく。

あなたと交わす、未来の約束

由佐さつき
BL
日向秋久は近道をしようと旧校舎の脇を通り、喫煙所へと差し掛かる。人気のないそこはいつも錆びた灰皿だけがぼんやりと佇んでいるだけであったが、今日は様子が違っていた。誰もいないと思っていた其処には、細い体に黒を纏った彼がいた。 日向の通う文学部には、芸能人なんかよりもずっと有名な男がいた。誰であるのかは明らかにされていないが、どの授業にも出ているのだと噂されている。 煙草を挟んだ指は女性的なまでに細く、白く、銀杏色を透かした陽射しが真っ直ぐに染み込んでいた。伏せた睫毛の長さと、白い肌を飾り付ける銀色のアクセサリーが不可思議な彼には酷く似合っていて、日向は視線を外せなかった。 須賀千秋と名乗った彼と言葉を交わし、ひっそりと隣り合っている時間が幸せだった。彼に笑っていてほしい、彼の隣にいたい。その気持ちだけを胸に告げた言葉は、彼に受け入れられることはなかった。 ***** 怖いものは怖い。だけど君となら歩いていけるかもしれない。

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

人生やり直ししたと思ったらいじめっ子からの好感度が高くて困惑しています

だいふく丸
BL
念願の魔法学校に入学できたと思ったらまさかのいじめの日々。 そんな毎日に耐え切れなくなった主人公は校舎の屋上から飛び降り自殺を決行。 再び目を覚ましてみればまさかの入学式に戻っていた! 今度こそ平穏無事に…せめて卒業までは頑張るぞ! と意気込んでいたら入学式早々にいじめっ子達に絡まれてしまい…。 主人公の学園生活はどうなるのか!

ネクタイで絞めて

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙* 題字&イラスト:さや いんげん 様 ( Twitter → @sayaingenmaru ) ※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください (拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!) 真駒摘紀(まこまつみき) はクールビズ期間が嫌いだ。周りは薄着になり、無防備に晒された首筋を見ないよう俯き、自身の首を掻きむしる。それをいつも心配してくれるのは、直属の上司である 椎葉依弦(しいばいづる) だ。優しさを向けられ、微笑む彼の顔を真駒はよく憶えていなかった。 ――真駒が見ているのは、椎葉の首筋だけだから。 fujossy様で2019/8/31迄開催『「オフィスラブ」BL小説コンテスト』用短編小説です!! ちょっと変わった性癖を持つ上司と、ちょっと変わった性癖を持つ部下の恋物語です!! fujossy様のTwitter公式アカウントにて、書評をいただきました!! ありがとうございました!! ( 書評が投稿されたツイートはこちらです!! → https://twitter.com/FujossyJP/status/1197001308651184130?s=20 ) ※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!!

処理中です...