34 / 105
俺の彼氏のお友達
(3)-1
しおりを挟む
それからの毎日は流れるように過ぎていった。
俺はと言えば、カフェの準備と部活には入っていなかったが、あれよこれよという内に漫画研究会で作る制作物の手伝い要員として、参加していた。
「うわ~終わる気しなーい!」
心の声を口にしたのはまさかの部長、三浦さんだ。
三浦さんとはあれ以来、斉藤さんと吉井さん経由で仲良くさせてもらっており、最近では本格的に漫画研究会に入らないかと誘われている。
「部長がそれ言っちゃダメですよ!」
「大丈夫ですよ、榊くんも手伝ってくれてるし。ね?」
斉藤さんの言葉に吉井さんが俺に振る。正直、力になれているか定かではないが、そう言ってくれるならと与えられた仕事に取り掛かる。
しかしながら文化祭というものを少々舐めていた、と目の前にずらっと並べられたイラストを見る。
高校の文化祭はとにかく規模が大きい。クラス、部活、有志にと見るもには困らないがその分、準備が大変でもある。
聞けば生徒主体だとのことで、当日は他校の生徒や町の人たちまで自由に参加できるシステムになっているそう。
俺が手伝っている漫画研究会も、そのうちの一つだ。
今年は大人気アニメのキャラクターを模造紙を何枚も繋げて描くことをメインにしたと、三浦さん始め部員はみんなあくせくしながらそれでも楽しそうに作業に取り組んでいた。
かくいう俺も、アクリルキーホルダー係としてプラ板に指定されたイラストを写している。とは言え、枚数総数は何十枚にも及ぶもので、心底部員の皆さんを尊敬するばかりだ。
「そういえば、これ。当日の当番表できたから帰りに持っていってね~」
会議用テーブルをいくつも繋げた真ん中にどんと三浦さんが置いた紙を、斉藤さんが一枚取り俺に渡してくれた。
どうやら、文化祭当日は部員同士で交代制で回すようで、時間と各々の名前が記されている。
「げ、私、午後イチ!」
「私は15時から」
「いいなぁ、彩綾。私と代わらない?」
「はい、ダメー。原則、当番の交代は認められません!」
「午後イチになにかあるのか?」
俺には理解できない話かと思いつつ、それでも斉藤さんがしつこい食い付く理由が気になり、つい聞いていた。
「実はね、有志のライブがあるの!」
「あかりは雪くんの歌が聴きたいんだよね?」
吉井さんが言うには、南沢の参加する有志パフォーマンスチームが歌う順番が午後イチなのだそう。
そういえば先週も、文化祭準備の息抜きと称してボーリングに行った時、先輩から誘われた有志パフォーマンスの練習をしてきたと言っていたが、これだったのか。
南沢の性格上、断りきれないだろうなと思うと妙に納得してしまう。
しかし、部長を始めとする部員のくすくす笑いはどういうことなのだろうか。
先ほど、斉藤さんが「まあね、私たち友達だし?」と言ってから部室に響き渡る女子特有のくすくす声は。
仲間外れ、とまではいかないが、会話についていけていない疎外感を否めずにいると、吉井さんに肩を叩かれた。
「あのね、榊くん。あかりね、雪くんのこと…あれなんだ」
「…すまない。あれってなんだろう」
「つまり…まあ、気になってる?みたいなことだよ」
こそこそと吉井さんの肩まで身を屈めながら聞く。
吉井さんも斉藤さんの気持ちを他人に話すのは心苦しいのか、躊躇うようにそう言った。
俺はと言えば、カフェの準備と部活には入っていなかったが、あれよこれよという内に漫画研究会で作る制作物の手伝い要員として、参加していた。
「うわ~終わる気しなーい!」
心の声を口にしたのはまさかの部長、三浦さんだ。
三浦さんとはあれ以来、斉藤さんと吉井さん経由で仲良くさせてもらっており、最近では本格的に漫画研究会に入らないかと誘われている。
「部長がそれ言っちゃダメですよ!」
「大丈夫ですよ、榊くんも手伝ってくれてるし。ね?」
斉藤さんの言葉に吉井さんが俺に振る。正直、力になれているか定かではないが、そう言ってくれるならと与えられた仕事に取り掛かる。
しかしながら文化祭というものを少々舐めていた、と目の前にずらっと並べられたイラストを見る。
高校の文化祭はとにかく規模が大きい。クラス、部活、有志にと見るもには困らないがその分、準備が大変でもある。
聞けば生徒主体だとのことで、当日は他校の生徒や町の人たちまで自由に参加できるシステムになっているそう。
俺が手伝っている漫画研究会も、そのうちの一つだ。
今年は大人気アニメのキャラクターを模造紙を何枚も繋げて描くことをメインにしたと、三浦さん始め部員はみんなあくせくしながらそれでも楽しそうに作業に取り組んでいた。
かくいう俺も、アクリルキーホルダー係としてプラ板に指定されたイラストを写している。とは言え、枚数総数は何十枚にも及ぶもので、心底部員の皆さんを尊敬するばかりだ。
「そういえば、これ。当日の当番表できたから帰りに持っていってね~」
会議用テーブルをいくつも繋げた真ん中にどんと三浦さんが置いた紙を、斉藤さんが一枚取り俺に渡してくれた。
どうやら、文化祭当日は部員同士で交代制で回すようで、時間と各々の名前が記されている。
「げ、私、午後イチ!」
「私は15時から」
「いいなぁ、彩綾。私と代わらない?」
「はい、ダメー。原則、当番の交代は認められません!」
「午後イチになにかあるのか?」
俺には理解できない話かと思いつつ、それでも斉藤さんがしつこい食い付く理由が気になり、つい聞いていた。
「実はね、有志のライブがあるの!」
「あかりは雪くんの歌が聴きたいんだよね?」
吉井さんが言うには、南沢の参加する有志パフォーマンスチームが歌う順番が午後イチなのだそう。
そういえば先週も、文化祭準備の息抜きと称してボーリングに行った時、先輩から誘われた有志パフォーマンスの練習をしてきたと言っていたが、これだったのか。
南沢の性格上、断りきれないだろうなと思うと妙に納得してしまう。
しかし、部長を始めとする部員のくすくす笑いはどういうことなのだろうか。
先ほど、斉藤さんが「まあね、私たち友達だし?」と言ってから部室に響き渡る女子特有のくすくす声は。
仲間外れ、とまではいかないが、会話についていけていない疎外感を否めずにいると、吉井さんに肩を叩かれた。
「あのね、榊くん。あかりね、雪くんのこと…あれなんだ」
「…すまない。あれってなんだろう」
「つまり…まあ、気になってる?みたいなことだよ」
こそこそと吉井さんの肩まで身を屈めながら聞く。
吉井さんも斉藤さんの気持ちを他人に話すのは心苦しいのか、躊躇うようにそう言った。
1
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
あなたと交わす、未来の約束
由佐さつき
BL
日向秋久は近道をしようと旧校舎の脇を通り、喫煙所へと差し掛かる。人気のないそこはいつも錆びた灰皿だけがぼんやりと佇んでいるだけであったが、今日は様子が違っていた。誰もいないと思っていた其処には、細い体に黒を纏った彼がいた。
日向の通う文学部には、芸能人なんかよりもずっと有名な男がいた。誰であるのかは明らかにされていないが、どの授業にも出ているのだと噂されている。
煙草を挟んだ指は女性的なまでに細く、白く、銀杏色を透かした陽射しが真っ直ぐに染み込んでいた。伏せた睫毛の長さと、白い肌を飾り付ける銀色のアクセサリーが不可思議な彼には酷く似合っていて、日向は視線を外せなかった。
須賀千秋と名乗った彼と言葉を交わし、ひっそりと隣り合っている時間が幸せだった。彼に笑っていてほしい、彼の隣にいたい。その気持ちだけを胸に告げた言葉は、彼に受け入れられることはなかった。
*****
怖いものは怖い。だけど君となら歩いていけるかもしれない。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
人生やり直ししたと思ったらいじめっ子からの好感度が高くて困惑しています
だいふく丸
BL
念願の魔法学校に入学できたと思ったらまさかのいじめの日々。
そんな毎日に耐え切れなくなった主人公は校舎の屋上から飛び降り自殺を決行。
再び目を覚ましてみればまさかの入学式に戻っていた!
今度こそ平穏無事に…せめて卒業までは頑張るぞ!
と意気込んでいたら入学式早々にいじめっ子達に絡まれてしまい…。
主人公の学園生活はどうなるのか!
どこかがふつうと違うベータだった僕の話
mie
BL
ふつうのベータと思ってのは自分だけで、そうではなかったらしい。ベータだけど、溺愛される話
作品自体は完結しています。
番外編を思い付いたら書くスタイルなので、不定期更新になります。
ここから先に妊娠表現が出てくるので、タグ付けを追加しました。苦手な方はご注意下さい。
初のBLでオメガバースを書きます。温かい目で読んで下さい
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
倫理的恋愛未満
雨水林檎
BL
少し変わった留年生と病弱摂食障害(拒食)の男子高校生の創作一次日常ブロマンス(BL寄り)小説。
体調不良描写を含みます、ご注意ください。
基本各話完結なので単体でお楽しみいただけます。全年齢向け。
記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで
橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。
婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、
不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。
---
記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘!
次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。
---
記憶は戻りますが、パッピーエンドです!
⚠︎固定カプです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる