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朝はやはり、寝坊気味だった。
前日の夜、目覚ましをかけた時間は朝の八時。惣一郎の携帯だけでは不安だと言った詩音のために、詩音の携帯も目覚ましをかけた。
「詩音、起きろ」
「ん~まだ、もう少し…」
布団の中からくぐもった声は、まだ眠いと訴えかけている。
携帯の目覚ましは意外にも大きい。しかも、二台ともなると、耳をつんざくほどだ。なのに、詩音はまだ、眠りの世界にいる。
仕方ない。と、惣一郎は当分、眠りの世界から現実へは戻ってこないだろう詩音のために、朝食の支度を始めた。
今日の朝食は、軽く。昨日、詩音が作ってくれたとろろ昆布の味噌汁、白米、ほうれん草の胡麻和え、それから納豆。
カフェに行くとなるといつも、詩音はスイーツを食べるからだ。コーヒーと一緒に食べるスイーツが格別だと言っていた。
詩音がカフェを選ぶ基準は、コーヒーが美味しいか。その一択だ。
あらかじめ、インターネットでレビューを見たり、店のホームページで使われている豆をチェックしたり。そういう細かなことを詩音はよくする。
その他にも詩音がこだわるのは、店の雰囲気。がやがやと学生が集まるカフェも、仕事で行き詰った時なんかはパワーをくれるそうで、時には好んで行くらしい。が、基本的には静かで賑やかすぎない場所が好きだ。
いわゆる、年配の女性たちが集うような、そんなところが詩音は好きなのだ。
そしてこれは付き合ってから気が付いたのだが、詩音は甘党の割に甘くないスイーツがある店を選んでくれている。
きっと、甘いものが苦手な惣一郎のためだ。
買い物に行くと詩音は甘いチョコレート菓子をよく買う。子どもの頃、よく家にあったような原色が使われている、いかにも子どもが好きそうなパッケージの菓子。
詩音曰く、身体が甘いものを欲しがるから仕方ないのだそう。
一方、惣一郎の好みは甘くなく、さっぱりとしたスイーツだ。
スイーツそのものが好きか、と言われれば好きではない、と答える。が、食べられないわけでもなく、その中でも一番好きなのはチーズケーキだ。
詩音にそのことを話したのは、学生の頃。付き合ってまだ、日が浅かった。なのに、詩音はその一言を覚えてくれていたようで、出かけるカフェには必ず、チーズケーキが置いてある。
朝食が出来た時間は午前八時半。食べることに時間が掛かる詩音のため、そろそろ起こさなければとまた、声を掛けた。
しかし、変わらず、詩音はまだ眠りの世界だ。
もう起こさなければいけないのに、つい、その寝顔を見てしまう。そっと布団を捲り、寝顔を見ると、眼球が左右に動いている。夢を見ているようだ。
口元を見れば仄かにほほ笑みを浮かべている。
どんな夢を見ているのだろう。
もしかしたら昨日、寝る前に話したカフェの夢だろうか。
『惣、明日行きたいカフェなんだけど、ちょっと遠い場所でもいい?』
『いいけど。行ったことあるのか?』
『うん、ある。とにかく景色が凄く綺麗で、惣にも見せたいんだ』
それか、映画の夢だろうか。
『本当に明日の映画、僕の好きな映画でいいの?』
『いいよ。詩音の好きな映画、見よう』
願わくばその夢に、自分がいればいい。
最近、詩音の寝顔を見るとそんなロマンチックなことを思ってしまう気がする。
このまま、寝顔を眺めていると不埒な熱が高まりそうで、惣一郎は気持ちよさそうに眠っている詩音に声を掛けることにした。
前日の夜、目覚ましをかけた時間は朝の八時。惣一郎の携帯だけでは不安だと言った詩音のために、詩音の携帯も目覚ましをかけた。
「詩音、起きろ」
「ん~まだ、もう少し…」
布団の中からくぐもった声は、まだ眠いと訴えかけている。
携帯の目覚ましは意外にも大きい。しかも、二台ともなると、耳をつんざくほどだ。なのに、詩音はまだ、眠りの世界にいる。
仕方ない。と、惣一郎は当分、眠りの世界から現実へは戻ってこないだろう詩音のために、朝食の支度を始めた。
今日の朝食は、軽く。昨日、詩音が作ってくれたとろろ昆布の味噌汁、白米、ほうれん草の胡麻和え、それから納豆。
カフェに行くとなるといつも、詩音はスイーツを食べるからだ。コーヒーと一緒に食べるスイーツが格別だと言っていた。
詩音がカフェを選ぶ基準は、コーヒーが美味しいか。その一択だ。
あらかじめ、インターネットでレビューを見たり、店のホームページで使われている豆をチェックしたり。そういう細かなことを詩音はよくする。
その他にも詩音がこだわるのは、店の雰囲気。がやがやと学生が集まるカフェも、仕事で行き詰った時なんかはパワーをくれるそうで、時には好んで行くらしい。が、基本的には静かで賑やかすぎない場所が好きだ。
いわゆる、年配の女性たちが集うような、そんなところが詩音は好きなのだ。
そしてこれは付き合ってから気が付いたのだが、詩音は甘党の割に甘くないスイーツがある店を選んでくれている。
きっと、甘いものが苦手な惣一郎のためだ。
買い物に行くと詩音は甘いチョコレート菓子をよく買う。子どもの頃、よく家にあったような原色が使われている、いかにも子どもが好きそうなパッケージの菓子。
詩音曰く、身体が甘いものを欲しがるから仕方ないのだそう。
一方、惣一郎の好みは甘くなく、さっぱりとしたスイーツだ。
スイーツそのものが好きか、と言われれば好きではない、と答える。が、食べられないわけでもなく、その中でも一番好きなのはチーズケーキだ。
詩音にそのことを話したのは、学生の頃。付き合ってまだ、日が浅かった。なのに、詩音はその一言を覚えてくれていたようで、出かけるカフェには必ず、チーズケーキが置いてある。
朝食が出来た時間は午前八時半。食べることに時間が掛かる詩音のため、そろそろ起こさなければとまた、声を掛けた。
しかし、変わらず、詩音はまだ眠りの世界だ。
もう起こさなければいけないのに、つい、その寝顔を見てしまう。そっと布団を捲り、寝顔を見ると、眼球が左右に動いている。夢を見ているようだ。
口元を見れば仄かにほほ笑みを浮かべている。
どんな夢を見ているのだろう。
もしかしたら昨日、寝る前に話したカフェの夢だろうか。
『惣、明日行きたいカフェなんだけど、ちょっと遠い場所でもいい?』
『いいけど。行ったことあるのか?』
『うん、ある。とにかく景色が凄く綺麗で、惣にも見せたいんだ』
それか、映画の夢だろうか。
『本当に明日の映画、僕の好きな映画でいいの?』
『いいよ。詩音の好きな映画、見よう』
願わくばその夢に、自分がいればいい。
最近、詩音の寝顔を見るとそんなロマンチックなことを思ってしまう気がする。
このまま、寝顔を眺めていると不埒な熱が高まりそうで、惣一郎は気持ちよさそうに眠っている詩音に声を掛けることにした。
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