2 / 43
ep2 運命の日
しおりを挟む
遡ること三ヶ月前。
若干二十代で営業部長に昇進し、将来の出世を約束されていたと言っていい徳富大成は、会社を退職する。
独立し、起業するためだ。
親の影響で、元々は法律家を目指して法学部で学んでいた彼だったが、その道は中途で諦めていた。
司法試験合格のために何年も勉強ばかりしていられないと思ったからだ。
勉強自体は嫌いではなかったが、早く社会に出て成長したい気持ちを抑えることができなかった。
その後、彼はウェブマーケティング会社に営業として就職する。
創業十年にも満たない若い会社だ。
最初の一年目は、慣れないことや知らないことばかりで、中々成果を上げることができなかった。
だが二年目。
早くも秘めたる才能が開花する。
持ち前の論理的思考と本人の努力の甲斐も相まって、驚異的な業績を上げた。
そこからはまさしく破竹の勢い。
やがて徳富大成は、まだ二十代後半にして、誰もが認める若き営業部長になったのである。
そして......運命のあの日を迎える。
同僚たちとの送別会を終え、将来の成功を胸に誓い、熱い想いで帰り道を歩いている時だった。
「危ない!!」
青信号の横断歩道に、勢いよくトラックが突っ込んできたのだ。
歩行者たちは慌てて歩道へ退いていった。
ところが、一人の足の悪い女性が、バランスを崩してその場にへたり込んでしまう。
轢かれる!
誰もがそう思った時。
ドン!と何者かが彼女を突き飛ばして、トラックの軌道上から逸らした。
それは結果的に、身代わりとなる行為だった。
身代わりとなったのは、徳富大成。
「あ、俺、死んだ......」
目前に迫りくるトラックのライトに照らされ、心の中で呟いた時。
不思議なことが起こる。
「......あれ?」
生きている?
なぜだ?トラックに轢かれたんじゃないのか?
いや、これは死後の世界ってやつか?
上下左右、白いだけの空間。
そうか。
俺は天国に来たんだな。
地獄じゃなくて良かった......。
などと考えているところに、その者は現れた。
「ようこそ。徳富大成様」
ハッとして振り向いた先に、その者は立っていた。
といっても、地に足を着けて立っていたのかどうかは定かではない。
「あ、貴女は、女神様??」
思わずそう口走ったのは、自然なことだった。
状況もそうだが、何よりその者自身が、そういう風貌を備えていたから。
神々しく、神秘的で、美しい。
「私は、転生女神テレサ。ここへ貴方を招いたのは私です」
美しき女神は微笑した。
「てんせい......めがみ??」
阿呆みたいに鸚鵡返しする徳富大成。
まるで理解が追いついていない。
「今から貴方に、説明しておかなければならないことがございます」
「は、はあ」
「まず、貴方自身のことです」
「俺自身のこと?」
「結論から言います。徳富大成様。貴方は生きています」
「うん......えっ??」
「あちらの世界での、最後の記憶は何ですか?」
「あちらの世界?現世ってこと?」
「違いますよ。貴方は生きていると言ったでしょう。地球という星の日本という意味です」
「そ、そんな、子どもに説明するみたいに言わないでくれよ。要するに、ここに来る直前の記憶ってことだろ?もちろん覚えてるよ。送別会で飲んだ後、帰り道でトラックに......て、あれ??生きてるってことは、俺......あの状況から助かったのか?一体どうやって...」
「私が貴方をこちらに招いたからです」
「......そ、そもそも、ここはどこなんだ?」
「ここは世界の狭間。すべてに繋がる場所です」
若干二十代で営業部長に昇進し、将来の出世を約束されていたと言っていい徳富大成は、会社を退職する。
独立し、起業するためだ。
親の影響で、元々は法律家を目指して法学部で学んでいた彼だったが、その道は中途で諦めていた。
司法試験合格のために何年も勉強ばかりしていられないと思ったからだ。
勉強自体は嫌いではなかったが、早く社会に出て成長したい気持ちを抑えることができなかった。
その後、彼はウェブマーケティング会社に営業として就職する。
創業十年にも満たない若い会社だ。
最初の一年目は、慣れないことや知らないことばかりで、中々成果を上げることができなかった。
だが二年目。
早くも秘めたる才能が開花する。
持ち前の論理的思考と本人の努力の甲斐も相まって、驚異的な業績を上げた。
そこからはまさしく破竹の勢い。
やがて徳富大成は、まだ二十代後半にして、誰もが認める若き営業部長になったのである。
そして......運命のあの日を迎える。
同僚たちとの送別会を終え、将来の成功を胸に誓い、熱い想いで帰り道を歩いている時だった。
「危ない!!」
青信号の横断歩道に、勢いよくトラックが突っ込んできたのだ。
歩行者たちは慌てて歩道へ退いていった。
ところが、一人の足の悪い女性が、バランスを崩してその場にへたり込んでしまう。
轢かれる!
誰もがそう思った時。
ドン!と何者かが彼女を突き飛ばして、トラックの軌道上から逸らした。
それは結果的に、身代わりとなる行為だった。
身代わりとなったのは、徳富大成。
「あ、俺、死んだ......」
目前に迫りくるトラックのライトに照らされ、心の中で呟いた時。
不思議なことが起こる。
「......あれ?」
生きている?
なぜだ?トラックに轢かれたんじゃないのか?
いや、これは死後の世界ってやつか?
上下左右、白いだけの空間。
そうか。
俺は天国に来たんだな。
地獄じゃなくて良かった......。
などと考えているところに、その者は現れた。
「ようこそ。徳富大成様」
ハッとして振り向いた先に、その者は立っていた。
といっても、地に足を着けて立っていたのかどうかは定かではない。
「あ、貴女は、女神様??」
思わずそう口走ったのは、自然なことだった。
状況もそうだが、何よりその者自身が、そういう風貌を備えていたから。
神々しく、神秘的で、美しい。
「私は、転生女神テレサ。ここへ貴方を招いたのは私です」
美しき女神は微笑した。
「てんせい......めがみ??」
阿呆みたいに鸚鵡返しする徳富大成。
まるで理解が追いついていない。
「今から貴方に、説明しておかなければならないことがございます」
「は、はあ」
「まず、貴方自身のことです」
「俺自身のこと?」
「結論から言います。徳富大成様。貴方は生きています」
「うん......えっ??」
「あちらの世界での、最後の記憶は何ですか?」
「あちらの世界?現世ってこと?」
「違いますよ。貴方は生きていると言ったでしょう。地球という星の日本という意味です」
「そ、そんな、子どもに説明するみたいに言わないでくれよ。要するに、ここに来る直前の記憶ってことだろ?もちろん覚えてるよ。送別会で飲んだ後、帰り道でトラックに......て、あれ??生きてるってことは、俺......あの状況から助かったのか?一体どうやって...」
「私が貴方をこちらに招いたからです」
「......そ、そもそも、ここはどこなんだ?」
「ここは世界の狭間。すべてに繋がる場所です」
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
怠惰生活希望の第六王子~悪徳領主を目指してるのに、なぜか名君呼ばわりされているんですが~
服田 晃和
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた男──久岡達夫は、同僚の尻拭いによる三十連勤に体が耐え切れず、その短い人生を過労死という形で終えることとなった。
最悪な人生を送った彼に、神が与えてくれた二度目の人生。
今度は自由気ままな生活をしようと決意するも、彼が生まれ変わった先は一国の第六王子──アルス・ドステニアだった。当初は魔法と剣のファンタジー世界に転生した事に興奮し、何でも思い通りに出来る王子という立場も気に入っていた。
しかし年が経つにつれて、激化していく兄達の跡目争いに巻き込まれそうになる。
どうにか政戦から逃れようにも、王子という立場がそれを許さない。
また俺は辛い人生を送る羽目になるのかと頭を抱えた時、アルスの頭に一つの名案が思い浮かんだのだ。
『使えない存在になれば良いのだ。兄様達から邪魔者だと思われるようなそんな存在になろう!』
こうしてアルスは一つの存在を目指すことにした。兄達からだけではなく国民からも嫌われる存在。
『ちょい悪徳領主』になってやると。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる