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ep3 雲ケ畑糸緒莉①
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翌朝。
彼は眠い目をこすりながらやかましく鳴るアラームを消し、むくりと起き上がってスマホをひらくと「!」となった。
(しおりさんからのメッセージの通知が!)
ちなみに、アプリ内において〔個別通知のON/OFF〕機能があり、特定の相手のみ通知オンに設定することができる。
特に女性ユーザーなどの場合、これをやっておかないと通知鳴りっぱなしとなる可能性があるのだ。
女でもなければモテるわけでもない山田和も、個別通知の設定は行っていた。
彼なりに、ハマりすぎないようにするための工夫らしい。
もはや言わずもがなだが、〔しおり〕からの通知はONにしていた。
では、肝心の〔しおり〕からのメッセージの内容はというと......
(あっちから日程候補を送ってくれて......これ、かなりイイ感じじゃね??)
予想外に良好だった。
まだ早かったのかなぁ。
誘いかたが悪かったのかなぁ。
そもそもアウトオブ眼中だった!?
なにコイツ誘ってきてんのキモ!とか思われた??
などなど、ひたすら自分の中だけで悶々とネガティブフレーズを積み重ねていただけに、
「ヤバい。テンション上がってきた~!!」
山田和の喜びはひとしおだった。
かくも人間とは不思議なもの。
こうなると、今度は逆にすべてを自分に都合よく解釈しはじめる。
(俺との関係を大事に思ってくれてるからこそ、しっかりとスケジュールを確認した上で、翌日に返信してくれたんだな。
でも、あまり返事が遅くなるのは良くないからと、朝イチで返してくれた......って感じか!
ヤバい!めちゃくちゃイイ子だ!!)
みなさん。
こういう人間がそばにいるときは、そっと見守っていてあげよう。
真実はどうあれ、本人はシアワセなのだから......。
ついに山田和は〔しおり〕とのデートの日どりを決めると、当日にいたるまで、彼女とのメッセージのやりとりをやめなかった。
本人いわく、マーケティングでいうところの「ナーチャリング(顧客育成)」らしい。
彼の仕事はウェブマーケティング会社の営業。
それも今年で三年目。
彼はこの数年間の業務で得た知識と経験を、マッチングアプリにフル活用していた。
そしてデート当日......。
週末金曜日の仕事上がり、待ち合わせ場所の駅前で、わくわくドキドキしながらたたずむ山田和。
彼は緊張の面持ちで、人混みの中、想いびとがいつ現れるかと辺りを見まわしていた。
そんな彼へ、いつの間にか横から近づいてきた女性が声をかけた。
「あの、すみません。ひょっとして、山田ナゴムさんですか?」
「えっ」
彼はパッと振り向いた。
その目に映ったのは......
「あっ!えっと、はい!僕は山田ナゴムです!その......しおりさんですか??」
「はい。しおりです」
〔しおり〕その人だった。
山田ナゴムは思わず、ピタッとかたまってしまった。
実物の彼女の、そのうるわしい姿に。
(えっ、こ、これが本物のしおりさん?まるで女優さんみたいだ......)
うららかな夜風になびく見事な美しい長髪。
気品がありながら可憐さをまとう小さい顔。
ダークグレーのジャケット&スカートのスーツ姿にスタイルの良い身体は、実際の身長よりも高く見える。
しおりは、その優しそうだが芯に強さを秘めたような瞳をほそめ、おだやかに微笑んだ。
山田和は、なかば放心状態だったが、すぐに思い出したようにハッとする。
(ち、ちゃんとしなきゃ!)
すでに奪われかけてフワフワしていた心を強引にひきもどし、
「じゃあ早速、お店に移動しましょうか!こちらです!」
おぼつかなさを垣間見せつつも、彼女をエスコートしていった。
彼は眠い目をこすりながらやかましく鳴るアラームを消し、むくりと起き上がってスマホをひらくと「!」となった。
(しおりさんからのメッセージの通知が!)
ちなみに、アプリ内において〔個別通知のON/OFF〕機能があり、特定の相手のみ通知オンに設定することができる。
特に女性ユーザーなどの場合、これをやっておかないと通知鳴りっぱなしとなる可能性があるのだ。
女でもなければモテるわけでもない山田和も、個別通知の設定は行っていた。
彼なりに、ハマりすぎないようにするための工夫らしい。
もはや言わずもがなだが、〔しおり〕からの通知はONにしていた。
では、肝心の〔しおり〕からのメッセージの内容はというと......
(あっちから日程候補を送ってくれて......これ、かなりイイ感じじゃね??)
予想外に良好だった。
まだ早かったのかなぁ。
誘いかたが悪かったのかなぁ。
そもそもアウトオブ眼中だった!?
なにコイツ誘ってきてんのキモ!とか思われた??
などなど、ひたすら自分の中だけで悶々とネガティブフレーズを積み重ねていただけに、
「ヤバい。テンション上がってきた~!!」
山田和の喜びはひとしおだった。
かくも人間とは不思議なもの。
こうなると、今度は逆にすべてを自分に都合よく解釈しはじめる。
(俺との関係を大事に思ってくれてるからこそ、しっかりとスケジュールを確認した上で、翌日に返信してくれたんだな。
でも、あまり返事が遅くなるのは良くないからと、朝イチで返してくれた......って感じか!
ヤバい!めちゃくちゃイイ子だ!!)
みなさん。
こういう人間がそばにいるときは、そっと見守っていてあげよう。
真実はどうあれ、本人はシアワセなのだから......。
ついに山田和は〔しおり〕とのデートの日どりを決めると、当日にいたるまで、彼女とのメッセージのやりとりをやめなかった。
本人いわく、マーケティングでいうところの「ナーチャリング(顧客育成)」らしい。
彼の仕事はウェブマーケティング会社の営業。
それも今年で三年目。
彼はこの数年間の業務で得た知識と経験を、マッチングアプリにフル活用していた。
そしてデート当日......。
週末金曜日の仕事上がり、待ち合わせ場所の駅前で、わくわくドキドキしながらたたずむ山田和。
彼は緊張の面持ちで、人混みの中、想いびとがいつ現れるかと辺りを見まわしていた。
そんな彼へ、いつの間にか横から近づいてきた女性が声をかけた。
「あの、すみません。ひょっとして、山田ナゴムさんですか?」
「えっ」
彼はパッと振り向いた。
その目に映ったのは......
「あっ!えっと、はい!僕は山田ナゴムです!その......しおりさんですか??」
「はい。しおりです」
〔しおり〕その人だった。
山田ナゴムは思わず、ピタッとかたまってしまった。
実物の彼女の、そのうるわしい姿に。
(えっ、こ、これが本物のしおりさん?まるで女優さんみたいだ......)
うららかな夜風になびく見事な美しい長髪。
気品がありながら可憐さをまとう小さい顔。
ダークグレーのジャケット&スカートのスーツ姿にスタイルの良い身体は、実際の身長よりも高く見える。
しおりは、その優しそうだが芯に強さを秘めたような瞳をほそめ、おだやかに微笑んだ。
山田和は、なかば放心状態だったが、すぐに思い出したようにハッとする。
(ち、ちゃんとしなきゃ!)
すでに奪われかけてフワフワしていた心を強引にひきもどし、
「じゃあ早速、お店に移動しましょうか!こちらです!」
おぼつかなさを垣間見せつつも、彼女をエスコートしていった。
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