上 下
139 / 167
魔剣使いの闘い~狂戦士編

ep139 キラース

しおりを挟む
 *

「で、なんでこんな所なんだ」

「私に聞くな」

 俺もカレンも憮然ぶぜんとした。
 そこは今朝、まさに俺とジェイズが飲んだ酒場だった。
 そんな所に四者が集まった。

「まあそうカタくなんな」

 ジェイズはテーブルに足を乗っけてどかっと座っていた。
 その横に立っているアイがため息をついた。

「あたしこそ聞きたいぞ、ボス。なんでここなんだ」

「場所なんかどーでもいいだろ?それにここなら魔剣使いにも説明しやすいしな」

「大事な話をする場所ではないだろ」

「大事なハナシはまた場所を変えてするさ」

「......ったく。ボスの好きにしてくれ」

「それにしても、ひさしぶりだよなぁ~カレン嬢」

 ジェイズがカレンに視線を運んだ。

「ああ。兄様とは会ったみたいだがな」

「なんだ知ってたか」

「なぜ〔フリーダム〕なんぞに入った」

「ここじゃ大事なハナシはしねえ。アイとの会話聞いてたろ?」

「じゃあいつどこでする?」

「まあ焦んな。そんじゃあそろったところで行くか」

 ジェイズはおもむろに立ち上がるとドアへ向かって歩きだした。
 やや苛立ってカレンが呼び止めようとするも、
「どこへ行くんだ?」
 俺が彼女を制して尋ねた。

「キラースのところだ」

 ジェイズに代わってアイが鋭い目で答えた。


 *


「マジでヒマだったぜまったくよ~」

 キラースが俺たちの前を歩いている。
 その前をジェイズが歩いている。
 俺たちはキラースを解放してから、五人連れ立ってどこかへ向かい街路を進んでいた。

「そんでどこ行くんだよ?狂戦士さんよ」

 キラースが質問した。
 それは俺たちも同様に疑問に思っていること。

「そろそろだな」

 ジェイズは質問には答えず、ある地点まで来て立ち止まった。

「ああ?なんもねえぜ?」

 キラースの言葉どおり、そこは廃屋ぐらいしか残っていないただの街外れだった。
 すでに空は暗く、月明かりだけが妙にまぶしく辺りを照らしていた。
 
「キラース。テメーはなんの用があってここに来た?」

 ジェイズはゆっくりと振り向きながら言った。

「用?まあそりゃーあれだ。ヘッドフィールドに何か協力できないかって思ってよ」

 キラースはへらへらしながら答えた。

「テメー。死ぬ覚悟あんのか?」

「ああ?」

 転瞬、ジェイズはスッと手を伸ばすと、指一本でキラースの額をぱちんと弾いた。

「!!」

 一瞬だった。
 キラースはロケットのような勢いで激烈に何十メートルも吹っ飛んだ。
 さらに吹っ飛んだ先でドガァァァンと爆発した。
 
(ただのデコピンであのキラースが...まさに赤子の手をひねるように簡単にブッ飛ばされた?)

 俺は眼前の光景に驚愕きょうがくした。

「汚ねえ足で生意気にヘッドフィールドの土を踏んでじゃねえよクロヤローが」

 ジェイズが嫌悪感たっぷりに吐き棄てた。
 次の瞬間。
 ボガァァァン!とジェイズの手が爆破した。
 
「ほう?意外と頑張るじゃねえか」  

 だがジェイズにはかすり傷ひとつついていない。
 どうやら、やられた瞬間、キラースがジェイズの手に爆破魔法を仕掛けたようだ。
 しかしジェイズにはダメージのかけらも与えられていない。

「オイオイいきなりヒデェじゃねえかよ......」

 キラースが痛そうに頭をおさえながらこちらに戻ってきた。
 さすがに面食らったといった表情をしている。
 ジェイズは見下すように睨みつける。

「オレの手を爆破させるだけじゃなく、吹っ飛ばされてからも爆破して地面への激突のダメージを減らしやがったな?相変わらずムダに器用なヤツだ」

「ジェイズさんよぉ。幹部会で『キラースへの制裁』でも決定したのか?」

「残念ながらテメーへの処置、というかテメーについての言及も何もなかったぜ」

「マジか?ちょっと意外だぜ」

「サボった意味なかったな」

「ならなぜオレに攻撃した?フリーダムでも幹部同士で殺り合うのは御法度だぜ?」

「殺り合う?かる~く小突いただけだぜ?」

「......(フザけんな!当たりどころ悪かったらマジでシャレになんねえぞ!)」

「今後、オレがいない間に勝手にヘッドフィールドに足を踏み入れるんじゃねえ」

 ジェイズはドスの効いた低い声で言った。
 鋭い眼は冷酷に座っている。

「わ、わかったわかったわかったよ!そんなに怒るんじゃねえよ!」

 キラースは勘弁してくれと言わんばかりにあたふたとした。

「テメーの言うとおり幹部同士の殺し合いは禁止されているが、ちょっと小突いた拍子に死んじまったんならしょうがねえもんな」

「わかったわかった!マジでわかったぜ!それよりよ!?オレはお前にハナシがあるんだよ!」

「オレにはねえ。とっとと失せろ」

「ちょっと待ってくれよ!これはヘッドフィールドにとってもイイ話だぜ!?」

「ボスの言うとおりにしろ」

 アイがキラースの肩に手を置いた。
 ジェイズ以上に鋭い眼つきだ。
 キラースは彼女の手を振り払った。

「チッ!なんだよチクショー!ヘッドフィールドまでくんだりでハナシも聞かねえってなんだ!」

「そのまままっすぐ進めば街から出ていける。さっさと行け」

「わかったよチクショーが!行けばいいんだろ行けばよ!フザけんじゃねえ!」

 キラースはののしり言葉を吐きながら街外へと立ち去っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...