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狂戦士編
ep120 狂戦士
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* * *
シヒロが攫われた。
俺がカレンに呼び出されている間に。
「ダンナ!!すまねえ!!」
「言い訳もねえ!!」
トレブルとブーストは跪いて謝った。
「恩義を返すと言っておきながらわたしは......」
エレサは悔しさにうつむいて拳をギリギリと握った。
「そうか......」
俺たちはシヒロの部屋に集まっていた。
俺は小机の上に残されたシヒロの執筆ノートを手に取った。
「......ん?」
すると、ノートの間からひらりと一枚の紙片が落下した。
その紙を拾い上げると...
「これは......敵のメッセージか」
どうやらシヒロを攫ったヤツの書き置きだった。
「ヤツは逃げていく時、宿屋にメッセージを残したと言っていた!そこにあったのか...」
エレサがなお悔しさを滲ませながら言った。
「ダンナ!!」
「なんて書いてあるんだ!?」
トレブルとブーストはすがるように声を上げた。
俺は紙の文字に目をやる。
「ヘッドフィールドで〔狂戦士〕が魔剣使いを待っている......」
俺の読み上げた言葉に、トレブルとブーストが異常な反応を見せる。
「ヘッドフィールドだって!?」
「おいおいヘッドフィールドの狂戦士っつったら......マジでヤベーじゃねえかよ!クソッ!」
エレサは腕を組み深刻な顔を見せる。
「ヘッドフィールドの狂戦士......わたしも聞いたことがある」
彼らの反応を見て、俺はまだ見ぬ敵がただならぬ者であることを悟る。
「ヘッドフィールドの狂戦士......いったい何者なんだ?」
さっそくトレブルたちへ尋ねた。
「ダンナ。そいつは裏の世界じゃ有名人だ。シヴィスやキラースとは格が違う。なんせ戦争じゃあ魔王軍からも人間たち国際連合軍からも同盟を申し込まれた上で中立を保ってたってハナシだ。
〔狂戦士〕ジェイズ・オズボーン。ヤツがどちらに付くかで戦争の行方も変わるって言われてたぐらいだ。
ちなみに〔ヘッドフィールド〕てのは、ヤツが根城にしている街の名前であり、ヤツの組織の名前でもある」
トレブルが妙に冷静に説明した。
彼の様子から、そのジェイズという者がいかにとんでもない存在であるかということがよく伝わった。
「シヒロを攫ったのは女だった。そのジェイズとかいう奴の部下なんだろうが、只者じゃなかった。おそらく真正面からやり合っても勝てたかどうかわからない」
エレサもまた敵の強さを語った。
「なるほどな」
俺はおもむろにベッドへ腰掛けると、思考をめぐらせた。
今後、カレンに付きまとわれるであろうこと。
シヒロの拉致。
短い余命がさらに短くなったこと......。
「でも......」
俺の心はすぐに決まった。
意外なほど焦ってもいない。
結局、今の俺にやるべきことはひとつだ。
己の命がさらに短くなったのならなおさらだ。
「ヘッドフィールドへシヒロを取り返しにいく」
俺は表情ひとつ変えずにさらっと言い放った。
「だ、ダンナ」
「ダンナ...」
「クロー」
三人は俺を囲むように不安げな顔を浮かべた。
「俺はジェイズがどんな奴なのかヘッドフィールドがどんな場所なのかも知らない。でもそんなことはどうだっていい。俺はシヒロを助ける。それは絶対だ。だがお前たちに強制はしない。来るなら来るで構わないし、来ないなら来ないでそれも構わない。その時はもう会うこともないだろう」
なかば突き放すように言った。
決してそういうつもりもなかった。
ただ俺の言葉には他意もなければ何の飾りもなかっただけ。
「わたしは行く。シヒロはわたしの命の恩人でもある。わたしはクローと行きたい」
エレサはなんの迷いもなく同行を希望した。
「お、おれたちも行くぜ!べ、べつにビビってためらってたわけじゃねえし!
「そ、そうだ!嬢ちゃんはおれたちにとっても命の恩人だ!それにおれたちはダンナの部下だぜ!」
トレブルとブーストもいささか必死に同行を表明した。
「そうか。それがお前らの意志なら俺もなにも言わない。それじゃあ準備して明日出発しよう」
「明日?今から出ないのか?」
エレサが疑義を呈した。
「そこまで焦っても仕方ない。敵の目的は俺だろ?一日や二日遅れてシヒロがどうこうなるという話じゃないだろ」
「そうだけど......」
「それにちょっとした考えがある。うまく利用できれば強力な戦力になるぞ」
「強力な戦力?」
三人は顔を見合わせて首をかしげた。
俺は微かにニヤッとした。
シヒロが攫われた。
俺がカレンに呼び出されている間に。
「ダンナ!!すまねえ!!」
「言い訳もねえ!!」
トレブルとブーストは跪いて謝った。
「恩義を返すと言っておきながらわたしは......」
エレサは悔しさにうつむいて拳をギリギリと握った。
「そうか......」
俺たちはシヒロの部屋に集まっていた。
俺は小机の上に残されたシヒロの執筆ノートを手に取った。
「......ん?」
すると、ノートの間からひらりと一枚の紙片が落下した。
その紙を拾い上げると...
「これは......敵のメッセージか」
どうやらシヒロを攫ったヤツの書き置きだった。
「ヤツは逃げていく時、宿屋にメッセージを残したと言っていた!そこにあったのか...」
エレサがなお悔しさを滲ませながら言った。
「ダンナ!!」
「なんて書いてあるんだ!?」
トレブルとブーストはすがるように声を上げた。
俺は紙の文字に目をやる。
「ヘッドフィールドで〔狂戦士〕が魔剣使いを待っている......」
俺の読み上げた言葉に、トレブルとブーストが異常な反応を見せる。
「ヘッドフィールドだって!?」
「おいおいヘッドフィールドの狂戦士っつったら......マジでヤベーじゃねえかよ!クソッ!」
エレサは腕を組み深刻な顔を見せる。
「ヘッドフィールドの狂戦士......わたしも聞いたことがある」
彼らの反応を見て、俺はまだ見ぬ敵がただならぬ者であることを悟る。
「ヘッドフィールドの狂戦士......いったい何者なんだ?」
さっそくトレブルたちへ尋ねた。
「ダンナ。そいつは裏の世界じゃ有名人だ。シヴィスやキラースとは格が違う。なんせ戦争じゃあ魔王軍からも人間たち国際連合軍からも同盟を申し込まれた上で中立を保ってたってハナシだ。
〔狂戦士〕ジェイズ・オズボーン。ヤツがどちらに付くかで戦争の行方も変わるって言われてたぐらいだ。
ちなみに〔ヘッドフィールド〕てのは、ヤツが根城にしている街の名前であり、ヤツの組織の名前でもある」
トレブルが妙に冷静に説明した。
彼の様子から、そのジェイズという者がいかにとんでもない存在であるかということがよく伝わった。
「シヒロを攫ったのは女だった。そのジェイズとかいう奴の部下なんだろうが、只者じゃなかった。おそらく真正面からやり合っても勝てたかどうかわからない」
エレサもまた敵の強さを語った。
「なるほどな」
俺はおもむろにベッドへ腰掛けると、思考をめぐらせた。
今後、カレンに付きまとわれるであろうこと。
シヒロの拉致。
短い余命がさらに短くなったこと......。
「でも......」
俺の心はすぐに決まった。
意外なほど焦ってもいない。
結局、今の俺にやるべきことはひとつだ。
己の命がさらに短くなったのならなおさらだ。
「ヘッドフィールドへシヒロを取り返しにいく」
俺は表情ひとつ変えずにさらっと言い放った。
「だ、ダンナ」
「ダンナ...」
「クロー」
三人は俺を囲むように不安げな顔を浮かべた。
「俺はジェイズがどんな奴なのかヘッドフィールドがどんな場所なのかも知らない。でもそんなことはどうだっていい。俺はシヒロを助ける。それは絶対だ。だがお前たちに強制はしない。来るなら来るで構わないし、来ないなら来ないでそれも構わない。その時はもう会うこともないだろう」
なかば突き放すように言った。
決してそういうつもりもなかった。
ただ俺の言葉には他意もなければ何の飾りもなかっただけ。
「わたしは行く。シヒロはわたしの命の恩人でもある。わたしはクローと行きたい」
エレサはなんの迷いもなく同行を希望した。
「お、おれたちも行くぜ!べ、べつにビビってためらってたわけじゃねえし!
「そ、そうだ!嬢ちゃんはおれたちにとっても命の恩人だ!それにおれたちはダンナの部下だぜ!」
トレブルとブーストもいささか必死に同行を表明した。
「そうか。それがお前らの意志なら俺もなにも言わない。それじゃあ準備して明日出発しよう」
「明日?今から出ないのか?」
エレサが疑義を呈した。
「そこまで焦っても仕方ない。敵の目的は俺だろ?一日や二日遅れてシヒロがどうこうなるという話じゃないだろ」
「そうだけど......」
「それにちょっとした考えがある。うまく利用できれば強力な戦力になるぞ」
「強力な戦力?」
三人は顔を見合わせて首をかしげた。
俺は微かにニヤッとした。
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